「おしっこ」の出方に隠された「前立腺がん」のサイン
前立腺がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどないとされています。そのため、「おかしいな」と感じたときには、すでに病状が進んでいるケースも少なくありません。特に排尿に関する変化は、前立腺がんの前兆として現れやすいサインのひとつです。日常の中で気になる変化があれば、早めに専門の医師に相談することが大切です。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科
前立腺がんの前兆として現れる排尿症状
前立腺がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いとされています。しかし、がんが進行したり、前立腺の肥大が加わったりすることで、排尿に関連したさまざまなサインが現れることがあります。このセクションでは、前立腺がんの前兆として見逃されやすい排尿症状について解説します。
排尿困難・尿が出にくくなる感覚
前立腺は膀胱のすぐ下に位置し、尿道を取り囲む形をしています。前立腺に腫瘍ができたり、前立腺そのものが大きくなったりすると、尿道が圧迫されて尿の流れが妨げられることがあります。その結果、「尿が出始めるまでに時間がかかる」「尿の勢いが弱くなった」「排尿が途中で途切れる」といった変化が生じることがあります。
こうした症状は前立腺肥大症(前立腺が良性に肥大する状態)でも起こるため、がんであるかどうかを自己判断することは難しい面があります。しかし、「以前より明らかに排尿がしにくくなった」と感じる場合には、専門の医師への相談が勧められます。排尿困難は日常生活の質にも直接影響するため、軽く見過ごさないことが大切です。
また、排尿後に膀胱に尿が残っている感覚(残尿感)が続く場合も注意が必要です。残尿感は膀胱炎などほかの疾患でも生じますが、前立腺の問題が背景にある場合もあります。症状が数週間以上続くようであれば、泌尿器科や内科などで診察を受けることを検討してください。
頻尿・夜間の排尿回数が増える
夜中に何度もトイレに起きるようになった、日中もトイレに行く回数が増えたと感じる場合、それが前立腺がんの前兆となっている可能性があります。初期の前立腺がんは自覚症状がほとんどありません。尿が出にくい、頻尿といった症状は、多くの場合、同時に起きている良性の『前立腺肥大症』によるものです。しかし、がんが進行して尿道を圧迫した場合にもこうした症状が現れるため、排尿に違和感がある場合は自己判断せず受診することが大切です。
頻尿は加齢に伴う自然な変化として見なされることも多く、「年だから仕方ない」と放置されがちな症状のひとつです。しかし、夜間に3回以上トイレに起きる場合や、日中も1~2時間に1回以上の排尿が続く場合には、医療機関での評価を検討することが望ましいとされています。
頻尿や夜間頻尿は睡眠の質にも大きく影響するため、生活の質(QOL)の低下につながります。前立腺がんの早期発見においては、こうした日常的な変化に敏感であることが、受診のきっかけとして重要な役割を果たすことがあります。症状を記録しておき、受診時に医師に伝えると、より正確な評価が得られやすくなります。
まとめ
前立腺がんは早期発見によって治療の選択肢が広がり、生活の質を保ちながら治療を進めやすくなる疾患のひとつです。排尿の変化や腰痛など気になる症状がある場合は、ためらわずに泌尿器科や内科などに相談することが大切です。また、50歳以上の男性の方(家族歴がある場合は40~45歳から)は、定期的なPSA検査を検討することが勧められます。治療費については高額療養費制度などを活用しながら、医師・医療スタッフとともに治療方針を考えていくことが、前立腺がんと向き合うための第一歩となります。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん」
日本泌尿器科学会「前立腺癌診療ガイドライン」
日本癌治療学会 がん診療ガイドライン「前立腺がん」
