《京大の筋肉》Dr.森谷も太鼓判「カラダときめく筋肉からのラブレター」マイオカインのスゴすぎる能力
「端的に言えば、筋肉は『動く薬局』のようなものです。血行をよくしたり、活性酸素の発生を防いだりする多種類のクスリを出す最大の内分泌器官なのです。
たとえば筋肉で生成される乳酸は脳に取り込まれ、アルツハイマー型認知症の原因とされる脳のゴミ、アミロイドβを分解することがわかっている。実際、アメリカの生理学会では、乳酸は中枢神経系疾患の治療的価値を持つExercise Medicine(運動薬)だと言われています」
そう熱く語るのは、76歳の現在も体脂肪率ひと桁を維持し、「京大の筋肉」との異名をとる医学者で、京都大学名誉教授の森谷敏夫氏だ。
筋細胞から600種類以上もの「マイオカイン」が
疲労の原因物質とされていた乳酸は、進歩する研究により、脳の神経細胞や心臓の筋肉の大切なエネルギー源であることがわかっている。
そんな乳酸は、筋細胞で生成される生理活性物質ということで、マイオカインの一種とされる。マイオカインとは、ギリシャ語の筋肉に由来する「マイオ」と、分泌物質に由来する「カイン」を合わせた造語だ。
'00年頃までは、生理活性物質が分泌されるのは脳や副腎、生殖器など一部の臓器だけと考えられていた。だが現在は、筋細胞からも600種類以上が出ているのではないかと研究が進められている。
物質としての働きが明確にわかっているのは、そのうち50種類ほど。代表的なマイオカインについて、森谷氏が解説する。
「'03年にコペンハーゲン大研究チームが発見したマイオカイン第1号がインターロイキン‐6です。これには脂肪分解を促進したり、慢性炎症を予防する作用があります。'12年にハーバード大研究チームが発見したイリシンは、エネルギー消費を増やす作用を持ち、脂質代謝をよくします」
筋肉の絶対量が増えれば、さらに出やすく
マイオカインには他にもこんな種類がある。森谷氏が続ける。
「またカテプシンBは海馬の神経の脱落を防いで記憶力や認知機能を高め、SPARCはがん細胞の増殖を抑え、大腸がんのリスクを大幅に低下させることがわかっています。さらに、心筋から出る心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、利尿作用を示し血圧を下げてくれる。
このようなマイオカインは身体をときめかせる“筋肉からのラブレター”なんです」
老化細胞から出る有害な物質を抑えたり、全身の慢性炎症を鎮めることで細胞の老化を抑えるマイオカインは、筋肉の絶対量が増えると、より出やすくなっていく。
逆に、運動不足がたたって脂肪を燃焼させる力の弱くなった「質の悪い筋肉」からは、悪玉のマイオカインが出てしまうという。
たとえば悪玉マイオカインの一種であるマイオスタチンは、筋肉から出た後に他の筋肉に降りかかって萎縮させたり、骨を弱くするのだ。
だが、話はそこでは終わらない。近年、身体を動かすことによって、筋肉だけではなく、全身のさまざまな臓器からも生理活性物質が湧き出ていることがわかってきたのだ。つづく【後編記事】『医学界が大注目…カラダをキレイにするなら「マンジャロよりエクサカイン」?魔法の体内物質は“筋肉と内臓”からドバドバ出る』で解説する。
「週刊現代」2026年6月8日号より
【つづきを読む】医学界が大注目…カラダをキレイにするなら「マンジャロよりエクサカイン」?魔法の体内物質は”筋肉と内臓”からドバドバ出る
