低迷する広島カープの本拠地・マツダズームスタジアム

写真拡大

 低迷するチームの兆候は、一軍の順位表だけに表れるわけではない。

 二軍で出場機会を得ている選手は誰か。期待された若手は順調に伸びているか。そこに目を向けると、チームの未来を左右する危険信号が見えてくることがある。今年のプロ野球では、セ・リーグでヤクルト、パ・リーグで西武と、昨季下位に沈んだ球団の巻き返しが目立つ。その一方で、中日、広島、ロッテは昨年と同じように苦しい戦いが続いている。【西尾典文/野球ライター】

【写真】低迷脱出なるか…本拠地で練習に励む広島カープナイン

低迷が続く中日、広島、ロッテ

 問題は、現在の順位だけではない。二軍の起用や若手の伸び悩みにも、長期低迷につながりかねない不安要素が見え隠れしている。

低迷する広島カープの本拠地・マツダズームスタジアム

 中日は4月15日の広島戦から22日の巨人戦まで6連敗。その後のヤクルト3連戦では3連勝したものの、5月に入ってからも21イニング連続無得点を記録するなど、なかなかチーム状態が上向いてこない。就任2年目を迎える井上一樹監督の采配に対する疑問の声も聞かれる。

 セ・リーグで中日と最下位を争っている広島も、開幕から苦しい戦いが続いている。中日との開幕3連戦こそ3連勝を飾ったが、その後は負けが込み低迷。特に課題は打撃陣だ。チーム打率.212、チーム得点数113はいずれもセ・リーグ最下位となっている。

 就任4年目を迎える新井貴浩監督も、このまま3年連続Bクラスに沈めば、オフには当然、去就問題に発展する可能性が高い。

 パ・リーグでは、昨シーズン最下位のロッテが今年も苦しんでいる。セ・リーグの2球団ほど上位と離されているわけではない。4月終了時点では借金2と何とか踏みとどまっていた。ところが、5月は4カード連続で負け越し。先発投手陣はなかなか試合を作れず、リリーフの八木彬(4勝)がチームの勝ち頭という状況も、苦しい台所事情を象徴している。

ベテラン選手が二軍に出場

 この3球団については、現在のチーム成績だけでなく、長期低迷につながりかねない不安要素が他にもあるという。ある球団の編成担当者はこう話す。

「二軍の試合を見ることが多いのですが、過去を振り返ってみても、うまくいっていないチームはベテラン選手が二軍の試合に多く出場しているケースが目立ちます。一軍では苦しくなってきたから二軍にいるわけですが、そんなベテランを追い越せる若手がいないことが原因ではないでしょうか。最近は三軍を持っている球団もあるので、少し変わってきている部分はあります。ただ、ベテランが調整のために多く二軍戦に出場しているのは、やはりチームとして健全な状態ではありませんよね」

 中日は、野手については比較的若い選手が多く出場している。一方、投手では、大ベテランの涌井秀章がここまで二軍で最も多くのイニングを投げており、昨年オフにFA権を取得して残留した松葉貴大も3番目に多い投球回を記録している。一軍も大野雄大、柳裕也のベテランが中心となっている状況で、若手の底上げが進んでいない。

 広島も野手ではレギュラークラスだった末包昇大、堂林翔太が多く出場。投手では10年目のアドゥワ誠が多くのイニングを重ねている。

 ロッテも投手では石川柊太と唐川侑己、野手では安田尚憲、中村奨吾、愛斗らが二軍の成績上位者に入っているのが現状だ。

低迷脱出の鍵は二軍、若手

 一方、ロッテと最下位を争っている楽天は様相が異なる。投手では高卒3年目の大内誠弥、坂井陽翔やルーキーの伊藤樹、野手ではルーキーの繁永晟、阪上翔也、金子京介らが多くの出場機会を得ている。将来に向けてしっかり“投資”ができている。

 ベテランの二軍出場が目立つだけではない。もう一つ、危ないポイントもあるという。前出の編成担当者はこう続ける。

「低迷しているチームは、ルーキーの時に面白いと思った選手の良さがなくなることが多いように見えます。怪我も原因の一つだとは思いますが、フィジカル面も技術面も伸びていくどころか、逆に悪くなるケースがある。他球団でもそういう選手を見ると寂しくなりますね。理由は一つではないでしょうし、プロ野球は競争の世界なので仕方ない部分はあります。それでも、別の球団に行っていればどうだったかなと思うことはよくあります」

 中日では、将来の4番として期待された石川昂弥がいまだに一軍定着を果たせていない。昨年は高卒ルーキーながら二軍で9本塁打を放った森駿太も、今年はここまで打率1割台前半、1本塁打と苦しんでいる。

 広島では斉藤優汰、林晃汰、田村俊介。ロッテでは安田以外にも菊地吏玖、山口航輝、山本大斗ら、足踏みが続いている選手が多い印象だ。

 低迷の理由を、一軍の勝敗だけで判断するのは難しい。

 二軍でベテランの出場が目立ち、期待された若手が伸び悩む。そうした状況が続けば、目先の順位だけでなく、数年先のチーム作りにも影を落とす。

 中日、広島、ロッテはここから浮上できるのか。一軍の戦いだけを見ていては、チームの本当の課題は見えにくい。二軍で誰がチャンスを得て、誰が成長のきっかけをつかむのか。そこに、低迷脱出への手がかりが隠れている。

※成績は5月19日試合終了時点

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部