能登半島地震で倒壊したビル(2024年/石川県輪島市。時事通信フォト)

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 巨大地震の発生が危惧されている日本列島で、前触れともとれる不気味な揺れが頻発している。日本の地中でいま何が起きているのか──。

【表で丸わかり】今年に入って、21回も大きな地震が発生!震度4以上を記録した地震の主な震源地

今年に入ってから、大きな地震が日本各地で頻発 

 ゴールデンウイーク真っただ中の5月2日に奈良県で発生したマグニチュード(以下、M)5.7の地震は、同県と和歌山県、三重県で最大震度4を記録した。幸いにも目立った被害やけが人は確認されなかったが、この揺れを大地震の"予兆"と指摘する声もある。実は今年に入り大きな地震が日本各地で頻発している。

 気象庁によれば、屋内外問わずほとんどの人が揺れに驚くとされる「震度4」以上の地震が1月から5月6日までに21回発生。これは昨年同期間の約2倍の発生数で、4月は震度5弱以上の地震が5回も起きた。「大きな地震が日本列島の各地で頻発しているのは、危険なシグナルと考えていいでしょう」と話すのは、東京大学名誉教授で海洋地震学の第一人者である笠原順三氏だ。

 なかでも笠原氏が危惧しているのは、三陸沖から北海道を震源とする地震だという。4月20日、三陸沖を震源とするM7.7、最大震度5強の地震が発生。ちょうど1週間後の27日には、北海道十勝地方南部を震源とするM6.2、最大震度5強の地震が起きた。

「この2つの地震は太平洋プレートの動きによって発生したものと考えられ、短期間での連続した大きな揺れはプレートの動きが活発化していることを示しています。三陸沖から北海道までのこの海域では、大きな揺れから1年以内に、さらに大きな地震が起きた記録が残っています。

 つまり、1年以内にこの海域でM8クラスの地震が起きても不思議ではない。そうなれば高さ約10mの津波が襲来することが想定されるので、三陸沖や十勝沖、釧路沖、根室沖あたりの沿岸部は警戒を強める必要があります」(笠原氏)

 千葉県や茨城県を震源とする震度4以上の地震も発生しており、首都圏を襲う大地震も懸念される。東海大学と静岡県立大学で客員教授を務め、日本地震予知学会の会長でもある長尾年恭氏は、この関東地方での地震について「不気味なサイクル」の存在を明かす。

「千葉県の房総半島沖では1912年、1950年、1987年にM6以上の大きな地震が発生しており、37〜38年の間隔で繰り返されています。前回の地震から39年が経過しているいま、危険が高まっている可能性があります」

 しかも地震の規模はM6.2、M6.3、M6.7と、サイクルを重ねるごとに大きくなっているため、次はM7クラスになるとの見方もある。

「房総半島沖でM7クラスの地震が発生すれば、プレートが刺激されて首都直下地震が誘発されることも考えられます。人口密度が高く、ライフライン設備の老朽化も指摘される首都圏が強い揺れに見舞われれば、甚大な被害は免れません」(長尾氏)

「南海トラフ地震」に結びつく地震も増加

 1月13日には石川県の能登半島、3月15日と21日には熊本県の天草・芦北地方でも震度4以上の地震が発生した。笠原氏は「2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震の影響が現在も続いているのではないか」とみている。30年以内に「60〜90%以上」の確率で発生し、29万8000人の死者数が想定されている「南海トラフ地震」に結びつく地震も増えているという。

「1月6日に発生した島根県東部を震源とする地震は、南海トラフ地震を引き起こすとされるフィリピン海プレートの動きで発生したと考えられます。また長野県北部では、4月18日に活断層(地震を引き起こす可能性のある地殻の割れ目)の『糸魚川-静岡構造線』沿いを震源とするM5クラスの地震が立て続けに2度発生しました。

 活断層沿いの地震ではありますが、これも南海トラフ地震と関連するプレートの運動によって発生したのではないかとみています。その地震の震源付近では最近、マントルという岩石の層から水素を生成する『蛇紋岩』という物質が上昇する動きが生じています。現時点で因果関係ははっきりしませんが、プレートの動きに何かしらの異変が起きているものと考えられます」(笠原氏)

 冒頭の5月2日の地震も、危険な兆候だという。

「南海トラフ地震を引き起こすフィリピン海プレートが、ユーラシアプレートの下に潜り込み、その先で岩盤の内部が割れたことで発生したと考えられる地震です。震源が同一のプレートにあり、南海トラフ地震につながる危険性も指摘されています」(長尾氏)

 政府は今年3月、南海トラフ地震臨時情報(※南海トラフ地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと評価された場合に発表される情報)の後に巨大地震が起こる確率を「十数回に1回程度」から「10回に1回程度」に引き上げた。これは巨大地震が連続する確率が上がったことを意味している。 

「これまで、本震の後に起こる余震の規模はさほど大きくないとされてきました。しかし近年の研究で、実際はそのようなケースは少なく、むしろ大地震の発生が引き金となって、地震活動が同時期に広範囲で活発化するという傾向がわかってきました。政府は巨大地震の"続発性"にも重きを置くようになってきたのです」(笠原氏)

 前回の南海トラフ地震は東南海地震(1944年)の2年後に南海地震(1946年)が起こっており、時間差の二段階での発生だった。しかし迫りくる巨大地震は、前例を覆すかもしれない。

「2016年4月に三重県南東沖でM6.5の地震が発生したのですが、このときは東南海と南海の震源域にまたがって同時に余震活動が起きました。つまり、2つの震源域を分ける"境界"がなくなっている可能性も考えられます。次に発生する南海トラフ地震は、1つの震源で一度に広範囲にわたり発生するかもしれない。そうなれば、規模も被害も大きくなるでしょう」(笠原氏)

 世界有数の地震大国である日本で暮らす以上、北から南まで安心できる場所はほぼない。明日にも起こりうる巨大地震に備えて、警戒を怠ってはいけない。

※女性セブン2026年5月21・28日号