【人手不足】運転手高齢化進むバス業界…路線維持へ新たな運転手確保・運行効率化の取り組みを取材(静岡)
多くの業界で人手不足が問題となっていますが、バス業界では運転手の確保が課題となっています。さまざまな工夫で市民の足を維持していこうと試みる、バス業界の現場を取材しました。
朝のJR東静岡駅。
バスターミナルに入ってきたのは一風変わった長~いバス、その名も“連節バス”です。4月から、しずてつジャストラインがJR東静岡駅と静岡英和学院大学JR静岡駅と静岡大学を結ぶ2つの路線で運行を始めました。“連節バス”の導入は県内では初めてです。
「連節バスの車内ですが、通常よりも座席が多く、広々とした空間が広がっています」
全長は約18メートル。通常の路線バスに比べ1.5倍の輸送力があります。その乗り心地は?
(連節バスの利用者)
「最初、角を曲がれるのかなと思ったのと、こんなに大勢乗れるのかなと思ったが、意外と乗れて快適だった」
(連節バスの利用者)
「朝早いと乗れない時間帯が多かったが、でかくなったらだいぶ乗れてちゃんと時間通りに行けるようになった」
「連節バス」を導入した背景には、バス業界が抱える運転手の問題があると担当者は話します。
(しずてつジャストライン 運行企画部輸送計画室 森田 淳 課長)
「運転手不足という中で、朝と夕方にバスが必要な時間が多いという中で/大学に通う方が便利に通学ができるようになるというところと、その分、他の路線についても便数が維持できるといったところにつながっていくと思います」
バス業界では運転手の高齢化が進み、路線を維持していくためには新たな運転手の確保や運行の効率化が必要となっています。
しずてつジャストラインは487台のバスの運行を約550人の運転手でやりくりしています。大学に向かう利用者が多い区間では、バスの本数を増やすことは困難ですが、一台あたりの輸送力を増やすことで、利用者のニーズに応えたのです。
一方で気になるのがその運転技術。連節バスは、普通のバスと同じ大型2種免許で運転できるといいますが…。
(バス運転手歴21年目 西尾 元行さん)
「やっぱり難しいの一言。普段短いのしか運転しないので、後ろの動きがなかなかつかみにくいので、練習が大変だった」
運転手は、バスの内外に取り付けられた多くのカメラを確認しながら、慎重に運転していきます。
(バス運転手歴21年目 西尾 元行さん)
「乗っていて楽しい。/自分の思った通りに動いてくれる。後ろがある分自分の腕が試せる。そういう面白さっていうのはあっていいかなと思う」
一方、市民が支える新たな形で運行が始まった場所も。静岡市の中心部から車で約50分“オクシズ”と呼ばれる中山間地域です。4月から、一部区間で路線バスが廃止や減便される代わりに始まったのが…。
(利用者)
「お願いします」
利用者が、前日までに移動したい時間と区間を予約するとバスが運行する、“公共ライドシェア”です。静岡市葵区の梅ヶ島地区と大河内地区では自治会が主体となり、約20人が市民ドライバーに登録し、地域の足を支えています。
(オオウメ交通 ドライバー 荻野 五男さん)
「こんにちは~」
大河内小中学校の子どもたちを乗せ運転するのは荻野五男さんです。
(オオウメ交通 ドライバー 荻野 五男さん)
「きょうは学校楽しかった?」
(利用者)
「うん」
(運転手 荻野 五男さん)
「うん、何より」
荻野さんはバス運転手の経験があり、市民の助けになればとドライバーに登録しました。
(運転手 荻野 五男さん)
「まだ4月に入ったばかりだけど、楽しいですよね」
バスを利用する住民は…。
(利用者)
「週4で使っていますね。今は車が運転できないということもあって。これからも利用していきたいと思っていますね」
一方、新たな運転手を確保しようという取り組みも。4月22日、静岡市清水区にあるバスの研修センターで行われていたのは…。
(バス指導員)
「外周左折します。左折は内輪差があるので、少し自分が前に出てからハンドル切って」
バスの運転体験会。ハンドルを握るのは…2027年3月で任期を終える自衛官です。
これは県バス協会が、自衛官にバス運転手の新たな担い手になってもらおうと、国交省や防衛省と連携して初めて開催したもので、この日は20代の10人が参加しました。
(バス指導員)
「クラッチゆっくりつないで、動き出したらゆっくりアクセル踏んで」
参加した自衛官は全員、バスの運転は未経験。初めての運転に苦戦しながらも見事なハンドルさばきを見せました。
(参加した自衛官)
「地域に密着しているというか。人のためになるというか、貢献できるいい仕事だなと思った」
(参加した自衛官)
「これまで自分が関わったことのない業種なので興味があったし、実際に今回体験させてもらって、知見が深まったというか、今後の糧になった」
(参加した自衛官)
「興味深いことも結構いっぱいあったので参考になった。ドライバーとか運転するのが好きなので、結構ありだなと思った」
自衛官には自衛隊車両の運転経験を持つ隊員が多く、“即戦力”としてバス業界から期待が寄せられています。
(県バス協会 中山 國光 専務理事)
「やはり車を運転する、車両を運転するということに慣れている方が多いと聞いているので、将来、運転手は選択肢としては非常に有効なのかなと思っています。1人でも多くこの業界に入っていただけることを期待してます」
そのあと行われた就職説明会には、県内8つのバス事業者が参加しました。
こうした取り組みでは、さっそく効果が生まれています。
2025年12月、御殿場市の駒門駐屯地で50代半ばで定年を迎える自衛官を対象に同様の説明会を行ったところ、4人がバス運転手として再就職をしました。退職自衛官の就職を支援する自衛隊の担当者も、前向きに取り組んでいます。
(自衛隊静岡地方協力本部 富士地域援護センター 坂 武平 援護係長)
「任期制自衛官は高校を卒業して自衛隊に入って、他の企業はあまり知らない者が多いので、この場を通じて運輸の業界のことを知ってもらうというのも1つあります。企業様の人に実際に隊員と会って自衛官の特性を知っていただくいい機会になるかなと思っております」
人手不足に悩むバス業界ですが、少しずつ新たな取り組みや地域での連携が生まれています。
(スタジオ解説)
(徳増 ないる アナウンサー)
バスの運転手不足は全国的にも深刻です。このように2021年には11万6千人いた運転手なんですが、日本バス協会の試算では、2030年には9万3千人に減るという試算なんです。3万6千人ほど足りなくなってしまう見込みです。そしてこうした中、今もご紹介しましたように様々な取り組みがあります。このように採用活動のほかに、中山間地などで予約制で運行する公共ライドシェアや、車両と車両をつなぎ合わせた連節バスという取り組みがあるんですが、若狭さん、どのようにご覧になりますか?
(コメンテーター 若狭 勝 弁護士)
非常にいろいろな努力が、こういう風に工夫されて、運転手不足を補うということは非常にいいことだと思います。ただ、昔のように…要するに内輪差によって巻き込んで左折するときに死亡事故が結構、起きていたんですね。今、カメラが相当配置されているから、まだいいとしても、やはり連節バスで長くなればなるほど、人間としてやる以上はどこかにミスとか過失が起こり得ると思うので、将来的にはこういう時にはAIの自動運転とか、なんとかを…政府をあげて、きちんとやっていく必要が、推進していく必要があると思います。
(徳増 ないる アナウンサー)
安全運行が何より本当に大事ですものね。
