W杯までに知っておきたいサッカー用語の第31弾。今回は「ゼロトップ」を解説。(C)Getty Images

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 聞いたことはある、何となく意味も分かる。でも、詳しくは知らない。そんなサッカー用語を解説。第31弾は「ゼロトップ」だ。

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 明確なセンターフォワード(いわゆる9番タイプ)を置かずに、攻撃を構築するためのシステム。通常のシステムでは、最前線にポストプレーやフィニッシュを担うストライカーが配置されるが、ゼロトップではその役割を固定せずに複数の選手が流動的に前線へ入り込むことで得点機会を創出するのが特長だ。

 この起用法が広く知られるようになったのは、ペップ・グアルディオラ監督が率いた2010-11シーズンのバルセロナ、さらにはEURO2012で優勝したスペイン代表の戦いぶりによるところが大きい。当時のスペインはセスク・ファブレガスを「偽9番」として起用することで、中盤の選手が前線と中盤を行き来しながらポゼッションを維持し、相手守備を崩していった。

「ゼロトップ」最大の利点は、守備側に的を絞らせない点にある。前線に固定された選手がいないため、相手のセンターバックは誰をマークすべきか判断がしづらく、守備ブロックにズレが生じやすい。また、中盤の人数を増やせるため、ボール保持率を高めやすく、試合の主導権を握りやすい。
 
 一方で、ゴール前での迫力や高さが不足しがちで、クロスボールへの対応やシンプルな得点パターンが減る弱点もある。特に守備を固める相手に対しては、崩し切るための創造性や個の打開力が求められる。

 最近では、3月に行なわれた国際親善試合の日本代表戦で、イングランド代表のトーマス・トゥヘル監督がエースのハリー・ケインを欠く状況で、フィル・フォーデンとコール・パーマーをダブル“偽9番”として並べ、左右のウイングにアンソニー・ゴードンとモーガン・ロジャーズを配置する変則型の4−2−4の形を取った。しかし、日本の柔軟な対応で不発に終わった。

「ゼロトップ」は戦術的な有効性の高いシステムだが、1つ間違うとチームが機能不全に陥る可能性や、相手に有利な状況を与えてしまうことも。このシステムを活用するにあたり、選手の適性判断はもちろんだが、狙いを明確にして選手たちに共有するのが大事になる。

 また、適性のある選手がいたとしても、相手や試合の流れを見極めて、試合によっては使わない。あるいは選手交代で別のプランを取るなど、柔軟な判断も大事だろう。

文●河治良幸

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