98歳で海外旅行も!寝たきりを防ぐには「歩く」ために不可欠な「大腰筋」と「背中」を鍛える。筋肉量は70代では20代の半分に…
何歳になっても元気に活動するために必要なのは、筋肉です。なかでも「歩く」のに不可欠な大腰筋と背中を鍛えて、生涯アクティブに過ごしましょう (イラスト:末続あけみ 取材・文・構成:島田ゆかり)
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寝たきり対策に大切なのは、大腰筋
日本は世界一の長寿国。それ自体は喜ばしいことですが、なかには寝たきり状態の人もいるのが現実です。「年を重ねても、いかに自分の足で歩き続けられるか、そのカギは筋肉にある」と話すのは、超高齢社会の健康課題に取り組む久野譜也先生。
「寝たきりになる原因の多くは認知症ですが、体の衰えや転倒もリスクになります。高齢になって歩けなくなると筋肉が加速度的に減少し、いつしか寝たきりになってしまいます」(久野先生。以下同)
骨折などせずに健康であっても、加齢とともに筋肉は減少するため、年齢が上がるほど対策が必要です。
「筋肉量は20代をピークに徐々に減り始め、40代以降は1年で約1%減少します。70代では20代の頃の半分になってしまうのです。その原因は、筋肉自体の老化と筋肉を使わない生活習慣にあります。逆に言うと、体を動かせば筋肉の減少を食い止められるということです」
実際、先生の研究によると90代でも筋肉が増加することがわかっているそう。
「筋肉は使うことで修復を繰り返し、成長します。私の祖母は日頃からスクワットを続けていたからか、98歳で海外旅行のツアーに参加し、まわりに迷惑をかけないくらいにしっかり歩いて旅を楽しんでいました。大腰筋が機能していたのだと思います」
寝たきり対策に大切なのは、この大腰筋という筋肉なのです。
大腰筋は二足歩行の要
上半身(腰椎)と下半身(太もも)の骨をつなぐ筋肉。
体の奥にあるインナーマッスル(深筋)で、まっすぐの姿勢をキープしたり、直立して歩いたり、股関節を曲げ伸ばしするのに不可欠な存在。
鍛えることで体全体のバランスを取りやすくなり、転倒予防に。
人間が立って歩いて活動するのに、もっとも重要な筋肉と言えます。
ご自身の大腰筋の状態を確認
「大腰筋は、上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉で、歩く際に足を持ち上げる働きがあります。ここが衰えるとすり足になり、つまずいたり転倒したりするリスクが高まるのです。また、歩幅が小さくなり、歩く速度が遅くなるのも大腰筋が衰えてきた証拠。横断歩道を青信号の間に渡りきれないのは、わかりやすいサインです。
歩き方がすり足になってきていたら『待ったなし』の状態。『大腰筋の衰えチェック』を紹介しますので、ご自身の状態を確認してみましょう」
【大腰筋の衰えチェック】
足を肩幅くらいに開き、椅子の前にまっすぐ立つ。両手を胸の前でクロスし、座って立つ動作を1回として、スピーディに10回繰り返す。
座るときは、座面までしっかり腰を落とすこと。
女性の場合、50代で13秒以上、60代で17秒以上、70代は21秒以上かかった場合は大腰筋が衰えているサイン(ひざに痛みがある場合は控えましょう)

大腰筋の衰えチェック
大切なのは運動を継続すること
もうひとつ、背中の筋肉をやわらかくすることも寝たきり防止に重要。
「なかでも、肩甲骨まわりの筋肉をゆるめて鍛えることが大切です。ここが凝り固まっていると、肩こりだけでなく腰痛の引き金にも。腰痛が続くと立ち上がるのに時間がかかるようになりますし、肩や腰に痛みがあると行動が制限され、出かけるのも億劫になります。ひいては歩かない生活につながりかねないのです」
基本中の基本ですが、大切なのは運動を継続することだと先生は力説します。
「運動を始める前に、簡易なものでよいので、体組成計つきの体重計で自身の筋肉量を把握するようにしましょう。週に3回のトレーニングを習慣にすると、2週間で疲れにくくなったり、動くのが楽になったりと、変化に気づくはずです。
このタイミングで筋肉量を測ると、増えていることがわかるでしょう。もし変化がなければ、負荷が軽すぎる可能性があります。目安は、翌日以降に軽い筋肉痛を感じる程度に体を動かすこと。ただし、関節に痛みがある人は、かかりつけ医に相談したうえで、軽い負荷から始めてください。
また、筋肉を増やすには《材料》も必要です。運動をしてから30分以内にたんぱく質を摂ること。難しい場合は、その日のうちに食べることを意識しましょう」
後編では、今日からできる簡単な肩甲骨まわりと大腰筋のトレーニングをご紹介します。
