石油供給問題 節約要請すべき局面を誤るな
イラン情勢を受け、石油備蓄の放出を始めてから1か月を迎えたが、石油の供給不安は、深刻な状態が続く。
政府は混乱を防ぐ当面の施策と同時に、今後、どの段階で、節約を要請すべきなのか検討を進める必要がある。
政府は石油の国家備蓄について、5月上旬から追加で約20日分の放出を行う。3月16日から始めた放出に続く第2弾となる。総計の放出量は約70日分に達する。昨年末時点の官民備蓄254日分の約3割にあたる規模となる。
日本経済は緩やかな回復を続けてきたが、イラン情勢を機に不透明感が強まった。当面の供給制約を緩和することで、景気を下支えする狙いは理解できる。
日本は原油輸入の9割以上を中東のホルムズ海峡経由に依存している。政府は海峡の封鎖を受け、調達先の多角化を進めている。
この結果、5月には米国からの調達が前年比で4倍へと拡大する見込みで、年明けまでの原油を確保できるめどもたったという。このため、追加で備蓄を放出する余力があると判断したのだろう。
ただし、イラン情勢の先行きは予測困難な状態が続く。国民生活の混乱を防ぐには、今のうちから、事態がさらに悪化した場合への備えも進めねばならない。
すでに、不安を招く問題が様々な分野で生じている。
石油を原料とするプラスチックや化学繊維など様々な製品の不足が心配され、化学メーカーは原料の調達難で減産を続けている。包装材や食品容器などの値上がりは家計を圧迫しかねない。
医療や農業など国民の命や生活を支える分野への石油製品の供給を優先するのと合わせ、流通の目詰まりの解消を急いでほしい。
ホルムズ海峡の不安定な状況が長期化することを見据え、先々を展望した危機管理の計画を練っておくことが重要だ。国民に対して節約を求める施策の段階的な強化を検討しておくのが望ましい。
石油備蓄の余力が乏しいアジア諸国では公共交通機関やテレワークなどの利用を要請している。
日本が急激に消費抑制策に舵(かじ)を切れば、悪影響は大きい。慎重に石油供給見通しを分析しながら、早めに国民に呼びかけて浸透を図る手法を考えるのが大切だ。
政府は3月からガソリン価格を下げる補助金の制度を始めた。だが、財政負担が重いだけでなく、消費の抑制が進みにくくなる側面がある。節約の重要性が高まる局面を迎えれば縮小するべきだ。
