2年間限定の「食品消費税0%」より「国民一人に4万円給付」の方がまだマトモだというべき理由
ネガティブな記事
4月9日の15時17分に共同通信は「26年度中の消費減税こだわらずと自民幹部」との見出しで、「自民党の小林鷹之政調会長は9日の記者会見で、自民が先の衆院選公約に記した2年間限定の飲食料品消費税率ゼロを巡り、2026年度中の減税実施にこだわらない考えを示した」との報道を行った。
高市総理は衆議院選挙前に食料品にかかる消費税ゼロを目指すという公約をしていたのに、それを勝手に引っ込めたという印象を与え、高市自民党に対して実にネガティブな感情を湧き立たせる記事であったと言えよう。
ところがこの記事を受けて、小林政調会長はX上に、見出しのような発言を行なっていないとのコメントを上げた。
実際はどうなんだろうと思い、記者会見の動画を確認したら、次のような事情であることが確認できた。
朝日新聞の記者が質問の中で「今、2年間の消費税ゼロについて、ヒアリングでは割と否定的な意見が相次いでいる、またレジ改修には物理的に法改正から1年程度要すると判明してきております」「(高市総理は)2026年度内の実現を目指したいと仰っていました。これは事実上困難ではないかと思うのですが、年度内の実現に期待して自民党に票を投じた方もいると思いますが、現状認識、どうお考えかお願いします」のような質問をしてきたことに対して、小林政調会長が「時期については様々な議論を進めていかなければいけません」と答えたものを、自分勝手な立場で解釈したものであることがわかった。
朝日新聞の記者の質問は、超党派の「社会保障国民会議」の実務者会議の中で、税率変更の際のレジのシステム改修を担う事業者に聞き取った結果、準備作業に1年程度を要するとの意見が出たことを受けたものだ。
だが小林政調会長は、こうした事業者の声を前提にするとは言っていない。事業者からそういう声が挙がっていても、時期についての議論を進めて事業者に無理をお願いしたいという意味合いで「時期については様々な議論を進めていかなければいけません」と語っている可能性もある。事業者側に掛かるコストや手間を、政府のリソースを使って解決する道筋をつけると事業者側と話し合っていきたいという意味合いで、「時期については様々な議論を進めていかなければいけません」と語っている可能性もある。
会計年度の途中からの税率変更については、正確な金額が出ないことは仕方ないものと考え、税率変更後の税務会計処理については、ざっくりとしたみなし計算によって対処することを政府が認めるといった形で事業者と話し合いたいという意味で、「時期については様々な議論を進めていかなければいけません」と語っている可能性もある。
こうした様々な可能性を無視した点で、共同通信の報道は明らかにミスリーディングであったと言えるし、オールドメディアの「支持率下げてやる〜」という思惑優先で作り出された記事ではないか、との疑いも持たれかねないものであった。こういう疑いを今や国民から広く持たれていることに、メディア各社はもっと敏感になった方がいいのではないか。
「勘弁してくれ〜」
それはさておき、高市総理が訴えたこの消費税減税の評判はあまりよくない。「社会保障国民会議」では、朝日新聞の記者が語っていたように、受発注や会計など複数のシステムがレジと連携している大手チェーンの側から、消費税率変更の作業にはかなりの手間と時間がかかるという訴えがあったのは事実だ。しかもこのシステムの改修に手間がかかるだけでなく、2年後には元に戻すというのであるから、2年後にも大きな負担がかかることになりかねない。事業者からすれば、国の政策がコロコロ変わることで、その度ごとに余計な負担が生じることには、「勘弁してくれ〜!」と思うのは、当然のことだ。
このことに限らず、2年間限定、食料品限定の消費税減税案は、ものすごく筋が悪い方針だったのではないかと、私は思う。食料品、特に生鮮食料品の場合には、もともと固定的な価格があるわけではなく、価格変動が非常に大きい。消費税減税を行なっても、それで10%価格が下がったかどうかはわからない。かなり長期間になれば、市場原理によって決まる値段に収束していくだろうが、短期的にはその保証があるわけではない。
スーパーで食料品を買うと消費税0%、外食のお店で食べると消費税10%ということになると、家で食べるのと外食するのとの価格差が、非常に大きくなる。仮に仕入れる生鮮食料品の価格があまり落ちないということになると、飲食店はその分を値上げでカバーしないとやっていけないことになる。システムの改修費も嵩んでくると、外食産業にとってみれば、弱り目に祟り目である。テイクアウトに加えてイートインも用意しているお店の場合、テイクアウトだと消費税0%、イートインだと消費税10%という2重価格も、今よりもずっと大きくなるわけで、お店側からすれば、非常にやりにくいことになる。
また2年限定となれば、2年後には大幅な物価上昇が生じることになり、その時のショックも大きいことになる。
さらにいうと、一口に食料品と言っても、富裕層は庶民よりずっと値段の高いものを買っていることが多い。食料品の消費税率を全てゼロにした場合に、その効果は富裕層に大きく、貧困層には薄いということも起きてくる。
こういったことから、私はもともと、この2年間限定、食料品限定の消費税減税はやるべきではないと考えてきた。ただ、この4兆8000億円にも及ぶ大型の減税をやる方向性を打ち出したことも後押しして、自民党は選挙に大勝したのだから、これと同等の国民負担軽減策をやらなければ、高市総理はヤルヤル詐欺を行なったと言われても、仕方ないだろう。2026年は断念し、2027年に先送りするようなことは、断じて許されない。
一人当たり4万円
ではどうするのがいいかだが、消費税減税は行わないで、国民に対して一律給付を行うのがいいのではないかと、私は考えている。減税額の4兆8000億円を日本の人口1億2000万人で割ると、一人当たり4万円になる。だから、4万円を配ってしまえばいいんじゃないかというわけだ。これであれば、「ヤルヤル詐欺」だとは思われないだろう。
この時に、マイナンバーカードを取得し、個人の銀行口座をマイナンバーに紐付けていないと、4万円の給付は受けられないようにする。例外は認めない。これで一気に、マイナンバーと銀行口座との紐付けが簡単に進むようになる。
そもそも、今政府は、給付付き税額控除を実現させることを前提に、野党も巻き込んだ「社会保障国民会議」の場において、消費税減税と給付付き税額控除をどうやっていくのかの議論を進めている。給付付き税額控除というのは、ざっくり言えば、収入・資産がなく、生活が困難な人たちに対して、税金を取るのではなくて、逆に政府がお金をあげることで、生活できるようにしていきましょうという制度だ。
生活保護を受ける時には、生活保護を受けたいという申請を行わないと、支援を受け取ることはできない。給付付き税額控除の場合には、政府が必要だと思った時に、そんな申請を受け付けるまでもなく、生活が困難な人たちに勝手にお金が流れるようにする仕組みを作るという話だ。そうなると、給付付き税額控除を行う際には、あらかじめマイナンバーと個人の銀行口座との紐付けができていないと、実質的に不可能ということになる。だから、給付付き税額控除を実現することを考えた場合には、この紐付けは必須だ。だったら、一人4万円の一律給付を実現し、一気にこの紐付けを実現した方がいいではないか。
一人当たり4万円の一律給付であれば、めちゃめちゃお金持ちで、ものすごく高価な食料品ばかりを購入していて、食料品に対して年間50万円くらい消費税を払っている人でも、受け取る金額は4万円、カツカツの暮らしで食料品すらケチりまくって、現行制度では食料品の消費税として年間2万円くらいしか支払っていない人でも、受け取る金額は4万円ということになる。だからこの定額給付は、庶民の懐にとってやさしいということになる。
余計なシステム改修の費用がかからないとか、外食産業にショックを与えなくて済むとか、二重価格の問題が今より深刻にならないとか、低所得者層には消費税減税よりも手厚い支援になるとか、2年後の値上げショックが起こらないとか、給付付き税額控除の導入をスムーズにさせるとか、給付付き税額控除がスムーズに始められるようになるとか、そういった様々な点を考えた場合に、この案が優れていることに気づくのではないか。
高市自民党には、一人4万円の一律給付を行う方向で、政策を考えてもらいたいものだ。
【後編を読む】消費税20%に「一律20万円給付」現役世代の過重な世代間負担緩和のためひとつの大胆策を提唱する
