〈5兆4,000億円〉もの海外マネー流入…アベノミクス超えの高市政権「日本株買い」のカラクリ【チーフ・ストラテジストが解説】
海外投資家による2025年の買越額が5兆4,000億円に達し、ダウ平均よりも先に「5万円」の大台に乗せた日経平均。この歴史的な「日本株買い」の背景には、日本経済の成長を掲げる高市政権の誕生があると著者は語ります。本記事では、広木隆氏の著書『株はずっと上がるもの 誰も書けなかった株式投資の真実』(日経BP)から一部編集・抜粋し、投資に主眼を置く高市政権の「経済成長戦略」を解説します。
日経平均「5万円」突破…海外投資家が日本株を買う本当の理由
日本株市場に海外投資家が回帰しています。2025年の海外投資家の買越額は5兆4,000億円、近年で日本買いが活発だった23年(3兆1,000億円)を大きく上回り、アベノミクス相場実質1年目で日経平均が50%超も上昇した13年(15兆1,000億円)以来の規模です。
海外投資家の買い越しが増加している要因は日本株の運用成績自体が好調であるという点を指摘できます。
ドル建て日経平均の2025年の上昇率は24%とS&P500の14%高をアウトパフォームしました。もっとシンプルに「5万」という大台に乗せたのは、日経平均のほうがダウ平均より先でした。日本株の好調なパフォーマンス自体が海外マネーをひきつけているとも言えます。
しかし、パフォーマンスがいいから日本株が買われるというのは、ある種の自己循環論法的なところがあります。トレンドフォロー戦略をとるヘッジファンドなどは、まさに相場の勢いの強さが買いの最大の要因となりますが、海外勢の買いの要因はそれだけではありません。
もちろん根底には日本企業の「改善」ストーリーがあるわけですが、それに加えて高市政権の誕生が大きな要因でした。
乏しい成長戦略…海外投資家が失望した「アベノミクス」
実際に、海外勢が反応したのは高市首相がアベノミクスの継承を標榜することに加えて、人工知能(AI)や防衛など戦略分野に積極投資する成長戦略を掲げたことに対してです。
高市さんは安倍・元総理の後継者と自他ともに認めるところ。したがって高市さんの経済に対する基本姿勢は安倍政権の再来とされ「アベノミクス2・0」などという言葉も喧伝されています。確かに積極的な財政政策と金融緩和寄りのスタンスという点はアベノミクスと共通しますが、3本目の成長戦略については大きな違いがあります。
第二次安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスは、積極的な財政政策、大胆な金融緩和、そして成長戦略という3本の矢で知られます。しかし、実際にもっとも効果をあげたのは安倍・元首相によって任命された黒田東彦・元日銀総裁が主導した大胆な金融緩和―「黒田バズーカ」だったのです。
それに引き換え、成長戦略は見るものが乏しかった。そもそも成長戦略とはいうものの、英語では「Structural Reform(構造改革)」と表記され外国人投資家はそう認識していました。実際、目指したのは岩盤規制の撤廃・緩和でしたが、これが思うように進みませんでした。
次第にアベノミクスはしりすぼみとなり、失望した外国人投資家は日本株の売りに転じ、アベノミクスの序盤で買い越した株式のすべてを吐き出して去っていってしまったのです。
角栄以来となるリーダー誕生が、株価を押し上げる
一方、高市さんが掲げる成長戦略は投資に主眼が置かれています。
総裁選に立ったときから「成長投資」という言葉を使い、国会での初の所信表明演説でも投資を強化し日本経済を成長させることを強く訴えていました。「成長戦略」ではありません。「成長するために」「戦略分野」に「戦略的」に投資すると言うのです。
これは単なる言葉遊びではありません。「成長戦略」とは、「成長」が「戦略」という名詞にかかる言葉。「戦略」に重点が置かれ、戦略や計画を立てることが目的になってそこで終わってしまう。それに対して「成長投資」や「戦略投資」は「投資する」という動名詞であり能動的な言葉です。実行するという意気込みが感じられませんか。
高市さんは所信表明演説で「強い経済をつくる」と真っ先に述べ、その言葉を繰り返しました。日本列島を強く豊かにしていくと、そして何を実行するにしても、「強い経済」をつくることが必要だと強調したのです。
これだけ日本経済を成長させることを強く訴えた首相が近年いたでしょうか。
石破さんは何一つ言わなかったに等しい。
岸田さんは「インベスト・イン・キシダ」とロンドンで一回だけ発言しましたが、安倍さんがニューヨークで「バイ・マイ・アベノミクス」と言ったのを真似しただけです。
その安倍さんにしても日本再興戦略などで強い日本を取り戻す、とは言ったものの、前段の通り、日本経済を成長させようというトーンは薄かった。その前の民主党政権は語るにも値しません。
日本経済の成長にフォーカスを当てる日本のリーダーの登場という意味では、高市さんは田中角栄氏以来の首相ではないでしょうか。これが尋常ならざる株価高騰の背景だと思います。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト
