「サイゼリヤ」一強時代に風穴を開けるか…ゼンショーが仕掛けるイタリアンファミレス「オリーブの丘」が急増中
店舗数が急増中の「オリーブの丘」
東日本大震災の後くらいでしょうか、新潟方面への出張で小田急線・京王線が交差する永山駅付近を通るたびに、「イタリア食堂」「オリーブの丘」という看板が目を引きました。当時、この店を通過する時間は朝イチか深夜だったため、訪問して食事をする機会には恵まれなかったのですが、大変気になっていました。
その後、妻から「オリーブの丘」という店が人気なので行ってみたいということで、自宅からほど近い「川崎片平店」を訪れてみました。すると、夕食のピークタイムをずらしたにもかかわらず駐車場はほぼ満車で、店内に入るとウェイティング客で溢れており、受付機でエントリーすること約一時間、ようやく席に案内されるという盛況ぶりでした。
イタリアンファミリーレストランといえば「サイゼリヤ」が定番ですが、近年新たな注目を集めているのが、この「イタリア食堂 オリーブの丘」です。2025年3月時点で関東を中心に58店舗を展開しており、2026年4月にも新規オープンを予定するなど、東京・神奈川・千葉・埼玉を中心に積極的な出店・改装を続け、店舗数を着実に伸ばしています。
ランチの価格帯は1000円前後
メニューは前菜からデザートまで幅広く揃い、サイゼリヤよりやや高めながら品質と価格のバランスが良いのが特徴です。
平日限定ランチ(10〜17時まで)は、スープ・サラダ付きの「海の幸とチェリートマトのペスカトーレ」が979円、スープ・ライス付きの「デミたまハンバーグセット」が759円と、おおよそ1000円前後に収まります。パスタは+80円でミニピッツァ・マルゲリータへの変更、+110円でドリンクバーの追加も可能です。
前菜では、「サーモンのブルスケッタ」や「イタリア産オリーブとパールモッツアレラのカプレーゼ」が319円、えびとブロッコリーのアヒージョ(バケット3個付き)539円など、本格的な一品が手頃な値段で揃います。
パスタのボロネーゼ・アラビアータは各539円。肉料理は「やわらか牛肉のビーフシチュー」や「ハーブ香る豚のボルケッタ 〜ペッパー&バルサミコソース〜」が869円ながらボリューム満点です。
ピッツァは注文後に生地を伸ばして焼く手作りスタイルで、定番の「マルゲリータ」が649円。デザートは店内手作りの「プリン」319円、「しぼりたてモンブラン」605円など。ハウスワインもグラス209円、デキャンタ759円と気軽に楽しめる値段です。(すべて税込の値段)
オリーブの丘の歴史
「オリーブの丘」が辿ってきた歴史について見てみましょう。冒頭で触れた永山駅付近の店舗を「食べログ」で調べると、「オリーブの丘 多摩ニュータウン店」であることがわかり、開業日は2011年7月6日とあります。この頃から店舗展開が始まったようです。
「オリーブの丘」はゼンショーグループです。ゼンショーは2007年に株式会社サンデーサンを約68億円で買収し、傘下に収めることで「ココス」などと合わせて事業規模を拡大してきました。
このサンデーサン社には「サンデーサン」「ジョリーパスタ」「フラカッソ(Fracasso)」などの業態がありましたが、サンデーサンの店舗は順次「ココス」や「ジョリーパスタ」へ業態転換され、ブランド名としては消滅しています。フラカッソ(Fracasso)はイタリアンレストランチェーンで、関東地方などを中心に店舗を展開していましたが、現在はすべて閉店または「オリーブの丘」など他の業態へ転換され、店舗はありません。
この業態転換の過程で、パスタ専門店の「ジョリーパスタ」より"大衆的でカジュアルなイタリア食堂"というポジショニングで、「オリーブの丘」の店舗展開が始まったように記憶しています。先にも述べましたが、2011年頃のことです。
なお、イタリアンチェーンという観点では、コロワイドが1994年に神奈川県藤沢市で新業態となる「イタメシヤ ラ パウザ」を開業しており、こちらと比べると「オリーブの丘」は15年ほど遅れての参入となっています。もっとも、「ラ パウザ」はファミレスというより居酒屋をベースとした業態であることが影響してか、大きく店舗数を伸ばすには至らず、現在は14店舗にとどまっています。
安くて質の高いメニューを提供できる理由
続いては、「オリーブの丘」がなぜ安価で質の高いメニューを提供できるのかを見てみましょう。
まず第一に、ゼンショーグループのスケールメリットが挙げられます。牛丼の「すき家」や「なか卯」、回転寿司の「はま寿司」、ファミレスの「ココス」、ハンバーグの「Big Boy」、メキシコ料理の「エルトリート」、うどん・しゃぶしゃぶの「久兵衛屋」、和食ファミレスの「華屋与兵衛」、「熟成焼肉いちばん」、とんかつの「かつ庵」、ラーメンの「伝丸」、ファストフードの「ロッテリア」あるいは「ゼッテリア」、スーパーマーケットの「ユナイテッドベジーズ」「マルヤ」「マルエイ」「VERY FOODS owariya」ななど、その業態は外食から小売まで多岐にわたり、規模による仕入れのメリットは極めて大きいといえます。
一方、ライバルのサイゼリヤは徹底した経営効率化と「値上げをしない」戦略で国内外の支持を集め、25年8月期には売上高・営業利益ともに過去最高を更新。国内1060店舗を擁してファミレス市場トップの座を守り続けています。ただ、インフレ下でのコスト増により、メニュー改定のたびに品質低下を指摘する声もあがり始めています。
ゼンショーの圧倒的な調達力を背景に持つ「オリーブの丘」は、こうした状況においてサイゼリヤに対抗できる数少ない存在といえるのではないでしょうか。
次に、ゼンショーグループ内でメニューのリソースを共有していることが挙げられます。たとえば、秋冬デザートメニューの「しぼりたて オリーブの丘モンブラン」(605円)は、「ココス」や「はま寿司」でも同様に提供されていました。同一メニューを複数業態で展開することで、食材調達や開発コストを効率よく抑える仕組みです。
第三に、グループ内で培われたオペレーションノウハウの活用が挙げられます。「オリーブの丘」では、受付機による来店登録から席への案内、商品の注文までがほぼ無人化されています。料理の完成はタブレットで通知され、配膳ロボットまたはテーブル横のレーンから届く流れは、どことなく「はま寿司」でのカウンター提供の仕組みと共通するものがあります。グループ内で磨かれたオペレーションを横展開することで、他社にはない効率的な運営を実現し、人件費の抑制につなげているのです。
(撮影/現代ビジネス編集部)
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【つづきを読む】『都心にほぼ出店しないのになぜ人気?イタリアンファミレスの新星「オリーブの丘」はサイゼリヤの牙城を崩せるか』
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