キスしたり“その先”まで進む若者も… 在日イラン人女性が証言するイスラム体制下の「恋愛」のリアル
アメリカとイスラエルによる奇襲からひと月が経過し、泥沼化するばかりのイラン情勢。ところで、日頃ニュースではよく耳にしても、イランになじみがある日本人はそう多くあるまい。国際社会の命運を握るかの国の謎について、“恋愛”という視点からアプローチする。
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近年は果敢にスカーフを外す女性も
30代の在日イラン人女性のサラさん(仮名)が証言する。
「外出する際は頭髪をスカーフで隠さなければなりません。腕は、上腕が少し出るくらいなら大丈夫。でも脚は絶対にダメです」(サラさん、以下同)
こうした規律に反した場合、社会に溶け込む“密告者”の密告によって逮捕され、罰則を与えられる例が珍しくない。イランでは政治思想だけでなく、恋愛やファッションもまた、取り締まりの対象なのである。シャリーアと呼ばれるイスラム法により、女性が苦汁をなめるケースは枚挙にいとまがない。

ただし、近年は果敢にスカーフを外す女性も増えているという。
「カフェの店内などでスカーフを外しても誰も気にしない。警察に見つかれば逮捕されることもありますが、警察官にも厳しい人、ゆるい人がいるので一概には言えないのが現実です」
鞭打ちの刑で背中が血だらけに
むろん、建前上は“自由恋愛”などもってのほかだ。
「結婚前に彼氏をつくるのはダメ。男の子と話をするぐらいならともかく、屋外で手を握ったら大変です」
交際が発覚すると、
「警察に連れて行かれて、親が呼ばれます。そして“もうしません”と誓いの書にサインをさせられるのです。ただ、20代の半ばくらいになると、カップルで外を歩いていても、警察に何か言われることはありません。結婚している夫婦かもしれませんから」
もっとも、ティーンエイジャーだって唯々諾々と従っているわけではない。
「カフェで男の子と出会って、少し話をして気になったら、どちらかの家で親がいない隙にデートをします。テレビを見たり、キスしたり、もちろん男女の仲になる若者もいます」
しかし、やはり密告の犠牲になる例もある。
「お酒は禁じられていますが、商店の店主に言えば店の奥から出してくれます。ワインとウイスキーが人気です。警察にバレたら鞭(むち)打ち。友人は男の子とデートで飲酒していたところ、警察に踏み込まれた。誰かが密告したのでしょう。二人は鞭打ちの刑で背中が血だらけになってしまいました」
同性との恋愛が発覚して殺された人は数千人
結婚制度も、女性にとって不利なものばかりだ。
「結婚したら夫の許可がないと海外に行けない。女性から離婚することもできません。夫が浮気をした場合は罰金か鞭打ち刑ですが、妻が浮気をすれば死刑なのです。死刑でいうと、これまでに同性同士の恋愛が発覚して殺された人は数千人に及びます」
なにしろ外国映画がテレビ放送される場合、肌の露出が多い場面ではモザイクがかかる国。建前上は徹底して性に厳格なイランだが、
「ここ2〜3年で成人向けのサービス店がイランの各地にたくさんできました。政府がそうした店をサポートしているのです」
というから驚愕(きょうがく)する。
「イランにはシーゲという概念があります。これは、シーア派のみに認められた、期間を定めて契約する婚約形態のこと。政府はシーゲを応用してそうした店を支援して、売上金が政府に入る仕組みをつくりました。店の女の子と客は一時的に結婚している夫婦である、ということにしてそうしたサービスを合法化しているわけです」
シーゲもまた、女性を苦しめる首枷(くびかせ)となっている。
「シーゲで女性が妊娠しても、男性はまったく責任を取りません。子持ちの未婚女性を受け入れる文化がないので、99%の女性は堕胎します。それでも、イメージに反して、イランの女性は情熱的に恋愛する人が多いですよ」
戒律と欲望のいたちごっこは終わりそうもない。
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4月2日発売の「週刊新潮」では、六つの視点からさらに詳しく「日本人の知らないイランの国内事情」について報じている。
「週刊新潮」2026年4月9日号 掲載
