またか!もう4回目だよ…3年後に住宅ローン「月10万4,277円→月12万1,733円」に返済額アップの月収58万円・43歳会社員父。《銀行の通知》で知らされた、陰で膨らむ「600万円の追加負担」に戦慄【FPが警告】
長引く物価高に教育費や生活費の増加が重なり、家計のやりくりに頭を悩ませるご家庭が増えています。そんな中、追い打ちをかけるように届くのが「住宅ローン金利上昇」の知らせです。多くの方が利用している変動金利ですが、「5年ルール」によって直近の返済額が据え置かれているため、事態の深刻さに気づきにくいという恐さがあります。本記事では、Aさんの事例から、住宅ローンの5年ルールの落とし穴について、FPの川淵ゆかり氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
住宅ローン、教育費の支払いに物価高が直撃
43歳のAさんは、月収58万円。中小企業の課長クラスです。3年前に購入した戸建て住宅に、パート勤めの40歳の妻と、今年の春から中学校と小学校にそれぞれ進学する二人の息子と暮らしています。
3歳違いの子どもたちが同時に進学のタイミングを迎えることで家計の教育費は大きく増えました。さらに、育ち盛りの男の子二人ということもあって食費も右肩上がり。そこに近年の物価高が重なり、家計への負担はじわじわと大きくなっています。Aさんの勤め先は中小企業ということもあり、物価が上がっても給料はなかなか増えません。将来への不安は募るばかりです。
そんななか、近ごろ、夫婦の会話に頻繁に登場するのが、ニュースで連日取り上げられる「ホルムズ海峡の緊張による原油価格の不安定化」の話題。「また物価が上がるのかしら? 夏のボーナスは大丈夫?」と妻が心配しても、Aさんははっきりと答えることができないでいました。
1年ぶりの銀行通知に驚く夫婦
子どもたちが新しい学校に胸を膨らませるなか、Aさんの家に銀行から通知が届きます。それは、住宅ローンの返済額の内訳(元金・利息)が変わるという内容……。
1年ぶりの通知に、Aさん夫婦は思わず顔を見合わせます。「え、なんでいまごろ?」「またか! もう4回目だよ」。
届いたのは、利用している変動金利型住宅ローンの金利上昇を知らせる通知でした。Aさんが住宅ローンを組んだのは2023年春。その翌年、2024年3月にマイナス金利が解除され、そこから政策金利はじわじわと上がりつづけ、合計4回も上昇しているのです。
多くの銀行では変動金利の見直しを半年に1度と定めています。Aさんが利用している銀行の場合、4月と10月が金利見直しの月となっていました。今回の通知は、2025年12月の日銀政策決定会合で決まった金利上昇分というわけです。
[図表]日本の政策金利推移(マイナス金利解除後) 出所:筆者作成
「5年ルール」の恐ろしい罠
変動金利型住宅ローンには「5年ルール」があり、世の中の金利が上がっても、5年間は同じ返済額のまま据え置かれるという仕組みになっています。そのため、金利が上がってもすぐに返済額が増えるわけではありません。
しかし、マイナス金利解除が2024年3月であるため、2029年春以降は返済額が上昇します。ここで、Aさんのケースをもとに、これまでの金利上昇と2029年の返済額をシミュレーションしてみましょう(※シミュレーションはAさんのケースであり、実際の返済額は借入条件・金利タイプ・銀行ごとに異なります)。
<Aさんの住宅ローン条件>
借入金:4,000万円
当初金利:0.525%
返済期間:35年ローン(元利均等・ボーナス返済なし)
毎月返済額:10万4,277円(5年ルールにより当面は固定)
◎金利上昇の推移(返済額は変わらず、内訳のみが変化)
2024年4月 0.725% 内訳(元金:8万741円 利息:2万3,536円)
2024年10月 0.875% 内訳(元金:7万6,225円 利息:2万8,052円)
2025年4月 1.125% 内訳(元金:6万8,640円 利息:3万5,637円)
2026年4月 1.375% 内訳(元金:6万1,669円 利息:4万2,608円)
毎月の口座から引き落とされる金額は10万4,277円のまま変わりません。しかし、内訳をみると恐ろしい事実が浮かび上がってきます。金利が上がるたびに「利息部分」が増え、その分「元金部分」の減りが遅くなっているのです。つまり、本来減っていくはずだった元金の返済が、どんどん先送りされている状態と言えます。
2029年春、ついに返済額がアップする
では、5年ルールが終わり、新しい返済額が適用される2029年4月以降はどうなるのでしょうか。
現在の返済額:10万4,277円
2029年4月以降の返済額:12万1,733円(+1万7,456円)
総支払利息と、老後のローン残高への影響
さらに深刻なのは、トータル支払い額への影響です。
◎総支払利息の増加
金利上昇がなかった場合:379万6,198円
4回の金利上昇後:987万900円
→ +607万4,702円
◎65歳時点のローン残高
当初予定:1,208万8,764円
金利上昇後:1,353万4,653円
→ +144万5,889円
Aさんの場合は40歳でローンを組み、完済は75歳となっています。老後まで返済が続く場合、65歳時点で1,300万円以上の残高が残ることは大きな負担です。老後までローンが残る家庭は、定年退職時にローンがいくら残るか、さらに金利上昇でいくら増えるのかもチェックしておきましょう。
「繰上げ返済すれば返済額は上がらない」は本当か?
Aさん夫妻は「いまのうちに100万円を繰上げ返済しておけば返済額は上がらないのでは?」と考えました。一見正しい解決策に思えますが、実はここにも「5年ルール」ゆえの落とし穴が潜んでいます。元金返済の先送りが生じているため、ローン残高の減り方が想定よりも遅くなっているのです。
◎2029年4月時点のローン残高
金利上昇なし:3,365万4,015円
金利上昇あり:3,491万9,666円
→ +126万5,651円
つまり、120万円以上の返済が先送りされるため、2026年4月に100万円繰上げ返済しても、2029年4月の返済額は11万8,100円に上昇してしまいます。
なお、返済額を現在と同じに保つには約500万円の繰上げ返済が必要です。それだけ、金利上昇の影響が大きいということです。
2026年4月、家計を襲う「Wパンチ」の可能性
変動金利の指標となる政策金利は、日銀政策決定会合で決まります。次の2026年4月27・28日の会合で金利上昇が決まれば、Aさんには半年後の10月に銀行から5回目の通知が届くでしょう。仮に、10月にも0.25%上昇した場合、2029年4月の返済額は12万6,730円まで上昇する計算です。
5年ルールの猶予期間をどう使うか
かつて、賃金が右肩上がりだった時代には、この「5年ルール」は借り手の生活を守る強い味方でした。しかし、給料が上がりにくく物価高が家計を直撃している現代の家計事情とは合わなくなりつつある制度ともいえます。
とはいえ、返済額がアップする2029年春までの残り3年の猶予期間は、住宅ローン計画を見直す貴重な時間です。
・老後まで返済が続く家庭
・返済額が上がると家計が厳しくなる家庭
・繰上げ返済のタイミングを迷っている家庭
こうした家庭は、早めにシミュレーションし、家計への影響を最小限に抑える対策を検討しておくことが重要となります。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表
