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仮釈放中に選挙人名簿に登録されなかったことを不服として選挙管理委員会に異議を申し立てたものの、棄却された元受刑者の男性が、決定の取り消しを求めた裁判で、高松地裁(田中一隆裁判長)は3月31日、受刑者の選挙権を一律に制限する公職選挙法の規定は違憲だと判断し、決定を取り消す判決を言い渡した。

この日の判決後、高松市在住の原告・八木橋健太郎さん(40)は「至極真っ当な判決だと思います」と述べた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●刑務所を出たのに「選挙人名簿」に登録されず

八木橋さんは、約2億円相当の仮想通貨「ビットコイン」をだまし取ったとして詐欺罪で逮捕され、2019年9月に懲役7年の実刑判決が確定した。2025年7月末に加古川刑務所(兵庫県)から仮釈放され、2026年3月に刑期満了を迎えた。

訴状によると、八木橋さんは仮釈放後、高松市内で生活を始めたが、高松市選挙管理員会は2025年12月1日の選挙人名簿の登録日、八木橋さんを名簿に登録しなかった。

八木橋さんは翌12月2日、名簿への登録を求めて市選管に異議を申し出たが、市選管は「拘禁刑以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」は選挙権がないとする公職選挙法11条1項2号を理由に棄却した。

これを受けて、八木橋さんは市選管の決定の取り消しを求めて、高松地裁に提訴していた。

●「将来の犯罪抑止に影響せず」

高松地裁は判決で、国民の選挙権を制限するためには「やむを得ない事由」が必要とする最高裁判例の判断枠組みを採用した。

そのうえで、受刑者の選挙権を制限しても将来の犯罪抑止に影響するとはいえず、また、選挙権を認めることで選挙の正統性や公正性が害されるとする市側の主張にも具体的な根拠がないと指摘。

さらに、「受刑者は、選挙権の行使に必要な情報接種も可能である上、刑事施設での選挙権行使に事務的な支障はない」などとして、「受刑者の選挙権を制限するやむを得ない事由は認められない」と結論づけた。

そして、公選法11条1項2号の規定が、憲法15条1項や3項、43条1項、44条ただし書に違反すると判断。八木橋さんについて選挙人名簿に登録される資格を認め、市選管が異議申出を棄却した決定を取り消した。

●最高裁大法廷の審理にも影響か

八木橋さんは判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、「至極真っ当な判決。マイノリティに対する根拠のないバイアスを排除することにつながるような判決だと思います」と語った。

八木橋さんは今回とは別に、収容中に衆院選などで投票できなかったことについても裁判を起こしており、この訴訟は最高裁大法廷で審理される予定だ。

受刑者の選挙権を制限する公選法について、原告代理人の吉田京子弁護士は「学説でも違憲とする見解が相当数示されていることが今回の判決を動かしたと思う。最高裁大法廷の審理にも良い影響があると期待しています」と話した。

また、加藤雄太郎弁護士は「今回の判決は、国民全員に対しても問題意識を投げかけるものだと思います。これまで何となく『受刑者には選挙権いらないんじゃないの』という偏見に基づいて制限されてきたとしたら、その偏見は合理的ではないから撤廃されるべきだというメッセージを発してくれた」と述べた。