ゆくゆくは高級老人ホームへ…「早期退職」を画策する55歳独身サラリーマン、年金受給まで〈現金4,000万円〉で逃げ切って目論む「余裕の老後」
現在55歳で独身のIさんは、1年以内の早期退職を虎視眈々と狙っています。手持ちの預貯金と退職金の4,000万円で当面の生活費を確保しつつ、新NISAと特定口座を活用して投資信託で4,000万円を運用。年金受給が始まる65歳から運用益と年金で「年間手取り400万円」を実現、ゆくゆくは高級老人ホームで老後生活を送ろうと企む50代男性の事例を紹介します。
あと1年で会社に見切りをつけて「早期退職」を画策
「ダラダラと定年まで会社にしがみつくつもりはありません。投資が目標額に達したら、さっさと辞めて自分の人生を謳歌したいです」
中堅メーカーに勤務するIさん(55歳・独身)は、現在、本気で早期退職に向けての準備を進めています。Iさんが密かに描くリタイア計画は、具体的かつ綿密に計算された戦略的なものです。
「数年前から給与を投資に回していて、新NISAの非課税枠1,800万円はあと1年で上限まで埋まりきる予定です。それとは別の特定口座での運用分も合わせると、投資信託の元本はトータルで4,000万円になります」
会社の早期退職制度を利用して実行した場合、割増退職金や社内預金の返還などを合わせると約2,500万円の現金が手に入る見込みです。それに加えて、Iさんは現在すでに約1,500万円の預貯金を保有しています。
「退職してから年金がもらえる65歳までの約9年間は、この手元の現金4,000万円を取り崩せば余裕で生活できます。その間、投資信託に回した4,000万円は一切手をつけず、運用し続ける算段です」
運用益と年金で逃げ切る老後戦略
手元の現金4,000万円で日々の生活費を賄いつつ、投資信託へ回した4,000万円は市場で寝かせておく。これがIさんなりのインフレ(物価上昇)対策だといいます。
「現金を持ったままだとインフレで目減りするので、半分は運用に回しています。順調にいけば65歳時点で評価額が6,000万円になるので、そこからが本当のセカンドライフですね」
6,000万円に育った資産を手堅く運用しながら少しずつ取り崩し、年金と併せて「年間手取り400万円」のキャッシュフローを生み出すのが理想のゴールだといいます。月に手取りで30万円以上あれば、独り身ならかなり余裕のある生活が送れます。
さらにIさんは、将来一人暮らしが難しくなった場合の備えも検討しています。
「独身なのでいずれは施設の世話になるつもりですが、手堅く運用を続けていれば80代になっても数千万円は手元に残るはずです。そのお金を入居一時金に充てて、毎月の支払いは年金と残りの資産で回していく予定です」
インフレリスクから将来の介護費用まで網羅したIさんの目論見は、現実的で緻密なシミュレーションに基づいていたのです。
退職金を元手に「FIRE」を狙う中高年の実態
近年、Iさんのようにまとまった退職金や預貯金を元手に、定年を待たずに早期リタイア(FIRE)を目指す中高年が増加していることは、データから読み取ることができます。
金融広報中央委員会が発表している「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によれば、単身世帯における金融資産保有額の平均額は919万円にとどまりますが、一部の層はIさんのように数千万円単位の金融資産を保有し、投資信託などのリスク資産へ積極的に配分して資産増を狙っています。
こうした50代からの早期退職を強力に後押ししているのが、企業が提示する「割増退職金」の存在です。東京商工リサーチのデータによると、上場企業による「早期・希望退職募集」の人数は、2025年には1万7,875人に達しました。注目すべきは、募集を実施した企業の約7割が業績の安定した「黒字企業」であるという事実です。こうした企業では、退職を促すインセンティブとして多額の割増退職金が用意されています。
また、Iさんが見据える「高級老人ホームへの入居」も、こうした緻密な資産形成があってこそ実現可能な選択肢です。LIFULLが実施した調査によると、東京都におけるハイクラスな「高級老人ホーム」の費用相場は、入居一時金が約2,450万円、月額利用料が約33万7,000円となっています。
Iさんの場合、仮に65歳時点の資産6,000万円を年利3%で手堅く運用しながら、年金と合わせて「年間手取り400万円」になるよう不足分を取り崩したとします。このペースであれば、80歳時点でも手元には約4,000万円の元本が維持できる計算になります。ここから入居一時金として2,450万円を支払っても、まだ1,500万円の資産が手元に残ります。この残高を運用しながら取り崩し、そこに受給額を増やした年金を合わせれば、月額33万7,000円の利用料を払い続けることも十分に可能でしょう。
当面の生活費を「安全資産」で確保し、老後資金を「リスク資産」で増やすという手法は、黒字リストラと投資ブームの恩恵を最大限に活用した、現代の新たなリタイアモデルの1つといえるでしょう。
[参考資料]
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
東京商工リサーチ「2025年 上場企業『早期・希望退職募集』状況」
LIFULL介護「1都3県の有料老人ホームの費用相場を調査。高級老人ホーム・低価格老人ホームが多い地域ランキングも発表(2024年)」
