風俗ロケで怒鳴られ、SM店長から引き抜きも…「不適切どころじゃなかった」伝説の深夜テレビ、狂乱現場
岡元あつこインタビュー
テレビ朝日系の深夜番組「トゥナイト2」でリポーターとして活躍した岡元あつこ(52)。1980年代から90年代にかけて深夜テレビとグラビアが日本の風俗文化を牽引していた時代、その最前線にいた。現在は演技派俳優として舞台を中心に活躍するが、当時の記憶は、今も色褪せない。(全3回の第2回)【福嶋剛/ライター】
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【写真】限界セクシー…「トゥナイト2」時代の岡元あつこ。「美少女」だった小学、中学、高校、大学の頃も
1996年から3年間、岡元がリポーターを務めた「トゥナイト2」(テレビ朝日系、1994年〜2002年放送)は、風俗からサブカルまで「何でもあり」を体現した深夜の生番組だった。

コンプライアンスという言葉が存在しなかった時代、視聴率10%が合格ライン、12%を超えれば「飯に連れてってやる」と言われた。今や、ゴールデン帯でもそこまでの数字はなかなか出ない。
ロケは台本がないことがほとんどだった。ロケ当日ネタがなければ渋谷センター街を歩き回り、若者から拾った話題をその日のうちに取材・編集して深夜に放送する。メイクをする暇もなく、そのままスタジオに立つことも珍しくなかった。
「放送作家さんがナレーション原稿を作ってくれるんですけど、ロケは全くそういうのがなくて行き当たりばったりでした」
その姿勢は海外ロケでも変わらなかった。米の映画製作会社「ドリームワークス」の取材では、日本のメディアで入れたのは「トゥナイト2」だけ。1泊3日の強行スケジュールで、ディレクターに「お前、大学生なんだから英語できるだろ」と言われ、岡元は通訳なしでロケに臨んだ。
「ディレクターには『大学生がみんな英語できると思ったら大間違いです』って返したんですけど(笑)。でも、せっかくLAに行くんだからと言って、他にも3本分ぐらいロケをやってきました。まあ、トゥナイトだから許されることでしたね」
「トゥナイト2」のリポーターには、それぞれ得意ジャンルがあった。岡元が担当したのは渋谷の若者カルチャー、時事ネタ、ファッション、そして格闘技だった。総合格闘技「PRIDE」には第1回から取材に通い、新日本プロレスなどの道場にも足を運んだ。
「橋本真也さんの道場でちゃんこを作ってもらったり、高田延彦さん、佐竹雅昭さんとか、本当にいろんな方を取材させてもらいました。ちょうど格闘技ブームが始まった頃でしたね」
杉作J太郎とロケ
ロケでは、漫画家の杉作J太郎と組むことも多く、「一緒にやると視聴率が良かった」と振り返る。
「杉作さんは本当に面白い人で、お家にもロケに行きましたけど足の踏み場もないくらい汚くて(笑)。今は地元の松山でラジオをやられているそうです」
年末恒例の「トゥナイトスペシャル」では、風俗店や水商売を毎年取材した。ソープランドのマットに座ってインタビューをするのが「普通」の現場で、思わず顔に出てしまったことがある。
「マットに座っていると、『あ、このマットってそういうマットだ』って思わず顔に出てしまったんです。そしたらディレクターが、『ここは風俗嬢たちの聖地なんだよ! そんな神聖な場所で嫌な顔すんじゃねえ!』とものすごい剣幕で怒られました(笑)」
SMクラブの取材を終えると、オーナーが近づいてきてスカウトされたこともあった。
「店長には『番組スタッフには内緒にするからさ』って言われたんです(笑)。もちろんお断りしました」
番組の“顔”とも言える山本晋也監督とは、「トゥナイト」の後もNHKのラジオ番組で共演することになる。
「『トゥナイト』では監督とロケでご一緒する機会はありませんでした。その代わり、NHKのラジオ番組で9年間、ご一緒させていただきました。いつもとっても優しくて博学で、おしゃべり好きだから放送が始まる直前までずーっと楽しい話をしてくれました」
番組の歴史に刻まれた忘れがたい一夜もある。名物リポーターの乱一世が、CM直前の失言により番組を降板した日だ。その日は、スタッフ全員が特別に気合いを入れていたという。
「あの日は、トゥナイトにとって大切な日でした。世の中的に露出の規制が厳しくなってきて、一度トラブルがあり、番組では2か月くらい風俗ネタを扱えない時があったんです。そしてあの日は、風俗ネタの解禁一発目の日で、全員『今日は数字を取るぞ!』と気合いが入りまくっていました。そんなところに乱さんが思わず言っちゃったんです」
今も仲良し
乱のひと言は「これからCMに入るのでトイレに行きたい人は行ってもいいですよ!」。スポンサーへの冒涜とみなされ、大問題となった。
「私は番組に入ったばかりだったので、何がなんだか分からなくて……。CMに入った瞬間、スタジオ上の方から偉い人がこわばった顔をしながらドタバタと駆け下りてきて、『深刻な話なのかな?』って。結果的に大変な日になりました」
その後、乱は2年半後の2000年に復帰。CM前に「特集の前に大切なお知らせです。心して見るように」と語り、健在ぶりをアピールした。
「やっぱり私たちの大切な乱一世さんが帰ってきたということでスタジオは拍手喝采でした」
当時のスタッフや共演者とは今も仲が良く、総合司会・石川次郎の息子が経営する飲食店に集まることも。高尾晶子、原田里香、せがわきりら当時のリポーターとにぎやかなひと時を楽しんでいる。
「一昨年、みんなでお酒を飲みながらテレビを見ていたら、ちょうどドラマの『不適切にもほどがある!』が放送されていたんです。『それどころじゃなくて、当時はもっと不適切だったね』とスタッフみんなで盛り上がりました」
「トゥナイト2」を超える番組はない、と岡元は今も断言する。
「とにかくスタッフには『自分だけがうまくいけばいい』って思う人間は一人もいなくて、『チーム一丸となって一旗あげてやる』という空気でした。面倒なものをあえて取り上げることで好奇心を満たしてくれるような、そんなおせっかいな番組。コンプライアンス重視の時代になった今、こういう番組はもう二度と作れないんでしょうね」
テレビが最もテレビらしかった時代の熱量を、岡元は今も鮮明に覚えている。
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第3回【何度も断ってきた「脱ぎませんか」の誘いと、高級車1台分のギャラ「迷ったらやらない、それだけ」】では、岡元がグラビア活動について語っている。
岡元あつこ(おかもと・あつこ)
1973年、東京都出身。俳優・タレント。15歳より小劇場で俳優活動を開始。1996年よりテレビ朝日系深夜番組「トゥナイト2」の女子大生リポーターとして3年間出演。現在は舞台を中心に映画・テレビで幅広く活躍。映画「宮古島物語 ふたたヴィラ かんかかりゃの願い」が4月に都内で上映予定。舞台「可もなく不可もない戦争」(東京マハロ20周年記念公演)ほか出演予定。
福嶋 剛
ライター。1971年生まれ。TV局映像編集、ロケーションコーディネーター、音楽サイトの編集長、ニュースサイトの記者などを経験。ベテランアーティストや元アイドルのインタビューをはじめ、イベントの進行役などエンタメを中心に活動中。
