その後、インターネットによる予約が可能になり、個人のお客様が当社のサイトにアクセスする確率を高めるためのSEO(検索エンジン最適化)対策を行ったり、有線LANの環境も整備していきました。当時からビジネスマンにフォーカスしたホテルづくりをしていました。 

 ─ そういった積み重ねを経て国内最大のホテルネットワークを持つようになったわけですが、社長兼CEOとして打ち出した方針を聞かせてください。 

 元谷 会長は信念の人であり、トップダウンの経営で果敢にリスクテイクもされながら会社を成長させてきました。一方で私は時代の変化に対応できる柔軟性を心がけています。日々、マーケットは変わっていきますから、それに対してどこまで柔軟に合わせられるか。そこで「1ホテル1イノベーション」をスローガンに掲げました。 

 同じサービスを続けていれば、リピーターも定着して満足度も上がったままかというと、そうではありません。常に何かしら変化がないと、お客様の満足度は下がっていきます。そこで、1つホテルがオープンする度に最低1つ以上のイノベーションを加えようと動き出しています。 

 ─ 事例はありますか。 

 元谷 22年に開業した「アパホテル&リゾート〈六本木駅東〉」から導入した「おやすみスイッチ(Good night スイッチ)」があります。これは冷蔵庫と空調、ユニットバスの電源を除いた全ての照明を一括して枕元にある集中コントローラーで消すことができるスイッチです。 

 1つひとつ消さなければならなかったものが、就寝するタイミングで1つのスイッチを押すだけで全ての電気を消すことができるわけですから、煩わしさからの解放になります。1回これを経験してしまうと、その便利さからリピーターになっていただけるということで、他のホテルにも水平展開しています。 

 ─ 実際リピーターは増えているということですか? 

 元谷 はい。では、なぜ他のホテルがそれをしないのか。おそらく開発コストが高いことがあるかと思います。我々は今までもホテル業界での砕氷船の役割を果たしてきました。例えばアパホテルが一時期1泊3万円の料金を提示して批判されたことがありましたが、同時期に同業他社が同程度の価格で販売していたケースもありました。 

 当社は認知度があった上に非常にメディアでの発信力も強かったことが批判された背景にはあると思いますが、それがきっかけとなって(需給状況に応じて価格を臨機応変に変更する)ダイナミックプライシングが業界内に広がりました。当社はもともと導入しており、1日に複数回料金を変更することもあります。 

 それまで一律料金で販売をしていたホテルもダイナミックプライシングを導入することによって、利益の最大化につなげることができるようになったと思いますので、結果として当社が砕氷船の役割を果たしてきたのではと思います。 

 ─ その中で足元の業績はどのような推移ですか。 

 元谷 25年11月期決算では売上高2667億円、経常利益996億円と3期連続過去最高益となりました。会長が50期連続の黒字を実現し、私が4期連続黒字ですから計54期連続黒字を達成したことになります。
 


直営とFC展開の組み合わせ
 

 ─ コロナ禍でも赤字にならなかったということですね。今後の展開について、その方向性を聞かせてください。