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「ながら運転」による重傷・死亡事故は過去最多を更新

 2024年3月11日、滋賀・野洲市で小学生の男の子がトラックにはねられる事故がありました。男の子は一命をとりとめたものの今も意識は戻っておらず、生涯介護が必要な障がいを負うことに。

【写真を見る】航平くんが事故前に書いた「紙芝居」そこに書かれていたある“言葉”

 事故の原因は、ドライバーの「ながら運転」。「ながら運転」による重傷・死亡事故は2025年、過去最多を更新していますが、罪が重い「危険運転罪」が適用されず、「過失運転罪」とされる現状があるのです。

「罪が軽すぎるのでは…」と訴えるのは、幼い息子を亡くした両親。悲惨な事故を防ぐため、法改正を求める家族を取材しました。

青信号の横断歩道…2tトラックにはねられた8歳男の子

 3月11日、滋賀県野洲市の交差点を訪れた女性。ちょうど2年前、この場所で最愛の息子が事故にあいました。

 (航平くんの母)「ちょうどあそこですよね。駐車場の前にトラックが止まっていて、血だまりがあって。ダメですね…やっぱり…」

 事故にあったのは、女性の次男・航平くん。当時は小学2年生。8歳の誕生日を祝われ、嬉しそうにケーキのローソクを吹き消していました。

 「おめでとう、こうちゃん。頑張って大きくなってください」

 いつもと同じ学校からの帰り道、航平くんは青信号で横断歩道を渡っていたところを突然、2tトラックにはねられました。

「手や切れた耳を見て」10時間以上の緊急手術…ただ祈り待ち続けた兄

 当時、事故現場にいち早く駆けつけた航平くんの兄。最初に目にしたのは、散乱していた靴とランドセルでした。

 (航平くんの兄)「トラックにつぶされたのか、(ランドセルの)金具が曲がってしまっていて、ここが切れていたりとか…」

 9歳離れた可愛い弟。病院に搬送され緊急手術を受ける航平くんを、10時間以上待ち続けました。

 (航平くんの兄)「処置室に入ったときの航平の手や切れた耳とかを見て、ただ祈ることしかできなかったので辛かった」

 頭を強く打ち意識不明の重体だった航平くんですが、5回以上の手術を乗り越え、一命は取り留めました。しかし、今も意識は戻っていません。

「目を開けることはないがまつ毛が動いたり」生涯介護が必要に…家族は往復4時間以上かけて面会

 現在、航平くんは岐阜県内の病院に入院していて、家族は滋賀県から往復4時間以上かけて2週間に1回ほど面会に行っています。

 (航平くんの母)「目を開けることはないが、まつ毛が動いたりとか、きょうは起きてるねって。寝てるときはまつ毛も動かないし、それくらいかな…」

 航平くんは身体もほとんど動かすことができず、生涯にわたって介護が必要です。

 (航平くんの母)「きょうのこうちゃんは…」
 (航平くんの兄)「寝てましたね」
 (航平くんの母)「歯が抜けたんや」
 (航平くんの兄)「あ!歯が抜けて…」
 (航平くんの母)「事故時も永久歯1本しか生えてなくて、遅いからようやく3~4本目ぐらいです」

 (航平くんの兄)「いつもと変わらない航平やったけど、自分の中では日常を奪われてから2年っていう…」

事故原因は『ながら運転』も…危険運転致死傷罪が適用されず「罪が軽すぎるのでは」

 トラックを運転していたのは建設業(当時)の北脇優大受刑者(29)。大津地裁で行われた裁判で、事故当時、右手に携帯電話を持って約20分にわたり通話をしながら走行し、赤信号に気付かないまま交差点に進入していたことが分かりました。

 危険な「ながら運転」が事故の原因だったのです。

 ただ、判決では、北脇受刑者の行為は「不注意」と判断され、禁錮2年4か月に。「ながら運転」は飲酒運転やあおり運転などと違い「危険運転致死傷罪」が適用される行為ではないため、「過失運転傷害罪」とされたのです。

 航平くんの両親は「罪が軽すぎるのでは…」と訴えます。

 (航平くんの父)「スマートフォンを使用して運転すること自体、車を正しく操作できない状態を自分で作っているにもかかわらず、それを過失運転というのは納得いかない」

 (航平くんの母)「(スマホの)マナーとかだけでは守られないのであれば、やっぱりちゃんと法律で取り締まってもらわないと、私たちみたいな家族がまた増えてしまうだけなのかなって」

航平くんが書いた紙芝居…物語の最後の言葉は『よかったけががなくって』

 航平くんが事故の前に書いた紙芝居を、両親が教科書の隙間から見つけました。

 (航平くんの母)「話を読むと、お兄ちゃんと自分(航平)みたいなのがあって…」

 題名は『森のたからもの』。ネズミの兄妹が森に冒険に出かけて四季折々の景色を楽しみながら仲間を増やしていく物語です。

 物語の最後は、両親が待つ家へと無事に帰ってきたネズミのきょうだいを泣きながら出迎えたお母さんの言葉で締めくくられていました。

 「よかったけががなくって」

 (航平くんの母)「『いってらっしゃい』って言うときに、『こうちゃんケガしないで帰って来てね』って言ってたから、『よかったけががなくって』」

大学生の娘亡くした夫婦『ながら運転』疑うも「スマホ操作履歴は半年で消える」

 航平くんの母親は、彦根市のカフェに向かいました。待ち合わせをしていたのは福島県に住む坂本喜美江さん。交通事故で大学生の娘を亡くしました。

 (航平くんの母)「危険運転にならない、これが悔しい…」

 (瞳さんの母・坂本喜美江さん)「飲酒(運転)は数値でわかるけど、スマホのながら(運転)だけは本人の自白(が必要)っていうのが悔しい」

 坂本さんの娘・瞳さん(当時21)は2020年3月の夜、彦根城近くの横断歩道を渡っていたところ、乗用車にはねられ死亡しました。

 (瞳さんの母・坂本喜美江さん)「痛かったね、苦しかったね、寒かったね…」

 大学進学を機に、彦根市で一人暮らしをしていた瞳さん。坂本さんは事故の後、600km以上離れた福島県の実家に瞳さんの荷物を全て持ち帰りました。

 (瞳さんの母・坂本喜美江さん)「(Q布団もそのまま?)これ(布団)が、匂いが消えないように、干しもせずこのままにしています」

 荷物を処分することはできず、実家の一室に瞳さんが一人暮らしをしていた部屋を再現しました。

 (瞳さんの父・坂本勝さん)「(瞳が)引っ越しした時に、私が部屋から撮った彦根城。このように見えたので…模型作って見られるようにと思って」

 坂本さんは乗用車を運転していた男が「ぼんやり運転していた」などと供述していたことや、片手運転をしていたことなどから「ながら運転」を疑いました。

 捜査する検察に対し、男のスマートフォンの操作履歴を調べるよう申し入れましたが…

 (瞳さんの母・坂本喜美江さん)「スマホの履歴は半年で消えるから無理だっていう返答がきた」

 (瞳さんの父・坂本勝さん)「『私(ながら運転)やってない』と一点張りになったらどうしようもない。何の証拠もないわけで…せめてスマホ履歴を捜査するとかはやってもらいたい」

 その後、男には過失運転致死の罪で禁錮3年(執行猶予5年)の判決が言い渡されました。

『ながら運転』危険運転致死傷罪の適用は「立証のハードル高い」

 「ながら運転」をめぐっては今国会で提出される予定の「自動車運転処罰法」改正案でも「危険運転致死傷罪」が適用される行為とするか議論がなされました。

 しかし、有識者検討会で「ながら運転」をしていたことを立証するのはハードルが高いといった意見があがり、今回は見送られました。

 (2026年3月13日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)