ソニー・オープンで優勝したゴッターアップ(左)と祝福するブリッジマン(ジェイコブ・ブリッジマン公式Instagram[@jacobbridgeman1]より)

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PGAツアーの2026年、滑り出しは好調

 PGAツアーの2026年シーズンは、従来の開幕戦だったザ・セントリーがマウイ島の水不足の影響で中止となり、例年より1週遅れでソニー・オープン・イン・ハワイから開幕した。

【写真】26歳コンビは「美人パートナー」も共通項…ゴッターアップとブリッジマン

 翌週からは戦いの舞台が米本土へ移され、西海岸シリーズ5試合はTV中継の視聴率が前年比で軒並みアップするなど、好調な滑り出しを見せている。

 開幕第2戦のザ・アメリカンエキスプレスでは、米国出身の29歳、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが早くも今季初優勝となる通算20勝目を挙げて、生涯シードを獲得。続くファーマーズ・インシュアランス・オープンでは、45歳の英国人選手、ジャスティン・ローズが通算13勝目を挙げてベテランの貫禄を見せた。

ソニー・オープンで優勝したゴッターアップ(左)と祝福するブリッジマン(ジェイコブ・ブリッジマン公式Instagram[@jacobbridgeman1]より)

 今季最初のシグネチャー・イベント、AT&Tペブルビーチ・プロアマでは、米国出身の29歳、コリン・モリカワが3年ぶりの復活優勝を挙げ、通算7勝目を達成して大いに盛り上がった。

 メジャー覇者であるシェフラー、ローズ、モリカワがシーズン序盤から見事な勝ちっぷりを披露したことで、今季のPGAツアーには、かつての賑わいや輝きが戻ってきた感がある。

 だが、一方で、ちょっぴり珍しい現象も見て取れる。1月と2月の開幕6試合を制した優勝者を眺めてみると、前述のメジャー覇者3名の前後に、日本ではあまり耳慣れない2人の若手選手の名前がある。

新星26歳コンビはジュニア時代からの親友

 1人は、今季開幕戦となったソニー・オープン・イン・ハワイで勝利を挙げ、開幕第4戦のWMフェニックスオープンで日本のエース、松山英樹とのサドンデス・プレーオフを制して通算4勝目を挙げた、クリス・ゴッターアップ。

 もう1人は、開幕第6戦で今季2つ目のシグネチャー・イベントだったジェネシス招待で、世界ランキング2位のローリー・マキロイとの優勝争いに競り勝ち、堂々、初優勝を挙げたジェイコブ・ブリッジマンだ。

 ゴッターアップとブリッジマンは、どちらも米国出身の26歳。ジュニア時代もカレッジゴルフ時代も下部ツアー時代も、すべて一緒だったという親友どうしだ。

 ソニー・オープン・イン・ハワイでゴッターアップが勝利したとき、ブリッジマンはワイアラエCCの18番グリーンに駆け寄り、ゴッターアップにシャンパン・シャワーを浴びせて祝福した。その5週間後、今度はブリッジマンが勝利を挙げ、リビエラの18番グリーンでは、大会ホストのタイガー・ウッズからハグや握手で祝福された。

 開幕6試合を終えた時点で、ブリッジマンは一気にフェデックスカップ・ランキングの1位に浮上。続く2位は、ゴッターアップ。

 同い年で親友どうしの2人が、6試合のうちの半分で勝利を挙げ、ベテラン勢を抑え込んでポイントランキングの1位と2位に付けた。きわめて珍しい現象であり、そんな2人にとても興味をそそられる。

マキロイ、松山を相手に優勝争い

 ゴッターアップは米メリーランド州の出身で、父親がニュージャージー州のゴルフ界で有名なトップアマだった。

 ニュージャージー州のラトガーズ大学を経て、名門オクラホマ大学へ編入し、全米カレッジゴルフ界で活躍した。米国のカレッジゴルファーのためにPGAツアーへのパスウェイ(道)として創設された「PGAツアー・ユニバーシティ」で、2022年ランキング7位になり、同年にプロ転向。2023年はPGAツアーの下部ツアーであるコーンフェリーツアーで戦い、2024年からPGAツアー参戦を開始した。

 そして、ルーキーイヤーの2024年にマートルビーチ・クラシックで初優勝。2025年にはDPワールドツアーとの共催大会であるジェネシス・スコティッシュ・オープンで2勝目を挙げ、今年はソニー・オープン・イン・ハワイとWMフェニックスオープンを制して、通算4勝を挙げた。

 ゴッターアップの武器は、PGAツアーで5位にランクされる絶大なる飛距離だが、大物選手との優勝争いでも物怖じしないメンタル面の強さは、さらなる武器と言っていい。

 昨年のジェネシス・スコティッシュ・オープンの際は、ゴッターアップは「世界ランキング158位の無名選手」だったが、世界ランキング2位のローリー・マキロイらを2打差で抑え込み、堂々、勝利を挙げた。

 通算4勝目となった今年のWMフェニックスオープンでは、マスターズ覇者の松山とのサドンデス・プレーオフで見事なバーディーを奪い、松山も「脱帽です」と敗北を認めたほどだった。

ジェネシス招待で初出場・初優勝

 さて、もう1人のブリッジマンは、米国のゴルフのメッカと言われるサウス・カロライナ州の出身で、同州のクレムソン大学へ進学。ゴッターアップ同様、カレッジゴルフで活躍し、PGAツアー・ユニバーシティの2022年ランキングで2位となり、2023年のコーンフェリーツアー出場資格を得た。

 そして、ゴッターアップ同様、2024年からPGAツアー参戦を開始。未勝利ながら着々とランクアップを図り、昨年はシーズン最終戦のツアー選手権に初出場した。シグネチャー・イベント出場資格を得た今年は、タイガー・ウッズが大会ホストを務める憧れのジェネシス招待に初出場し、いきなり初優勝を挙げた。

 ブリッジマンの強みは、これと言った弱点が無く、トータルで安定したゴルフをするところだが、とりわけパットの上手さには定評がある。PGAツアーにおけるパッティングのランキングでは常に5位前後に付けている。

 そして、これまたゴッターアップとよく似ているが、ブリッジマンにもメンタル面の強さが見て取れる。

「僕は常にリーダーボードを見て、自分の立ち位置を確かめながらプレーする。最終日の終盤、70ホール目でも、そうする。大詰めで自分の位置を知ることが、自分にとって脅威になるなんてことは、決してない」

 そうは言っても、優勝賞金400万ドルがかかっていたジェネシス招待の最終日は、終盤で2位との差が1打まで縮まり、「16番からはタフな戦いになった」と振り返った。

 だが、そこで崩れることはなく、最終組でともに回ったマキロイに臆することもなく、1打差で逃げ切った戦いぶりは、本当に見事だった。

無名に近かった2選手の快走

 今季開幕6試合を終えた時点で、ゴッターアップは今季2勝、初優勝を挙げたばかりのブリッジマンは今季1勝。フェデックスカップ・ランキングでは、ブリッジマンが1位、ゴッターアップが2位にランクされた。

 ブリッジマンは出場した全試合でトップ20以内に入り、ポイント配分が高いシグネチャー・イベントのAT&Tペブルビーチ・プロアマで8位タイ、ジェネシス招待で優勝。ポイントを効率的に稼ぎ、やはり今季すでに勝利を挙げたシェフラーらベテラン勢を抑えて、トップに浮上した。

 ゴッターアップは、ソニー・オープン・イン・ハワイとWMフェニックスオープンで勝利した一方で、シグネチャー・イベント2試合では、AT&Tペブルビーチ・プロアマで37位タイと振るわず、ジェネシス招待は予選落ちとなり、ランキングではブリッジマンに追い抜かれてしまった。

 いずれにしても、PGAツアー3シーズン目を迎えたばかりで、つい最近まで無名に近かったこの2人がこれほど快走していることは、大きな注目に値する。

マスターズに向けて調子を上げるベテラン勢

 とはいえ、世界ランキング1位のシェフラーや2位のマキロイらが、シーズン最初のメジャー大会であるマスターズに向かって調子を上げてくることは想像に難くない。

 マキロイは、すでにオーガスタ・ナショナルで練習ラウンドを行い、「メンバー同伴ではなく、好きなときにラウンドできることは、素晴らしい」と、マスターズ・チャンピオンとしての特権のありがたみを味わい、2勝目を目指して意気を上げている。

 先週のコグニザント・クラシックでは、世界ランキングのトップ25以内が1人も出場せず、ゴッターアップやブリッジマンも、しばしの休息を取った。

 今週、フロリダ州オーランドのベイヒル・クラブ&ロッヂで開催される今季3つ目のシグネチャー・イベント、アーノルド・パーマー招待では、ベテラン勢が勝利するのか、それとも2人の注目選手がさらなる活躍を見せるのか。

 この春、PGAツアーの興奮は、どんどん高まりつつある。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部