慶應大学の福沢諭吉像

写真拡大

 留学費用は超高額だが、難易度は国内の系列校に比べれば低く、卒業すれば慶應義塾大学にほぼ100パーセント進学が約束されている「慶應義塾ニューヨーク学院」。3年前、清水の舞台を飛び降りる思いで息子を同校に進学させたサラリーマンのAさん(50代)は、想定外の円安に悩まされることになった。だが、他の親たちのほとんどは円相場の動きなど意に介さないセレブリティばかりだった。(前後編の後編)

 ***

【写真】あの有名歌手の息子も! 慶應義塾ニューヨーク学院卒で知られる「有名アナウンサーたち」

 前編【「慶應大にほぼ入学保証」のアメリカ高校留学に3年間で3000万円 息子のために貯金の半分を投じたサラリーマンが見た「円安地獄」】からの続き

有名企業の一族や社長、医者、外資系社員、ファンドマネージャーだらけ

 慶應義塾ニューヨーク学院が開校したのは、バブル真っ盛りの1990年。当時は現地に多くの日本人駐在人が在住しており、その子息向けに設立された。だが、最近は事情が変わってきたという。

慶應大学の福沢諭吉像

「この30年間は『失われた30年』と呼ばれているように日本の景気は下り坂で、ニューヨークに駐在員を置く余裕のある企業は減っていると聞いています。中学3年と高校を含めた4学年で350人くらいが同校に通っていますが、9割方は寮生活。つまり、うちを含め、ほとんどの親は日本から子供を通わせているのです」(Aさん、以下同)

 入学した3年前の入学金は5000ドルで授業料と寮費は年間5万8,000ドル(現在は6万2800ドル)。3年間にかかった総額は入学金、授業料、寮費だけで約18万ドルを超え、現在のレート(3月2日156円)で約2800万円にも達する。年2回の里帰りなどの諸経費を含めれば3000万円を超えたというのだ。このような大金を子供のために費やす親たちはどんな人たちなのか。

「有名企業の一族や社長、医者、勤め人も外資系やファンドマネージャーといった『勝ち組』だらけの顔ぶれです。年収2000万円超えは当たり前です」

人脈作りとしては有意義

 Aさん自身も商社に勤務し年収は1000万円を超え。平均的な勤め人の中では恵まれた方だが、

「親の中では下層の方でした。東京では保護者同士の付き合いも盛んで飲み会があるのですが、毎回1万円以上もする店ばかり。中高の同窓会などと比べるとちょっと高めだと思ってしまいました」

 このようなセレブの子息だからと言って、金に物を言わせて煌びやかな留学生活を満喫できるわけではないという。

「キャンパスはニューヨークから車で1時間以上かかり、鹿やウサギなどがよく出没する自然豊かな環境にあります。生徒がマンハッタンに行くのには毎回許可が必要で、日常は缶詰生活です。ただ、食事がタコスやブリトーなどのメキシコ料理ばかりで口には合わず、ウーバーイーツを頼みまくる生徒がいると聞きました。いま向こうではファストフードのハンバーガー一つでも1000円から2000円はしますので、やはりセレブ子息はすごいです。一時帰国で旅客機のビジネスクラスを利用する子供も珍しくないようです」

 だがセレブに囲まれた環境だからこそ、息子にとって「財産になった」と語る。

「1学年が約90人と少数で寮生活を送るので、濃い人間関係が築ける。今後社会に出たときの人脈作りとしては有意義だったと思うのです」

「スタバ」はやめてドリップコーヒーで倹約

 想定外の急激な円安に泣かされたAさんだったが、「息子の成績はまずまずなので、慶應大学に内部進学できる見込み」という。実はもう一つ忘れてはならない重要なポイントは9月入学・6月卒業である点。慶應大は一部の学部を除けば9月入学はないため、ほとんどの生徒が卒業から翌年の4月まで1年近く「浪人」生活を送らざるを得なくなる。

 超高額の学費に加えて1年進学が遅れるデメリット。はたして「3000万円の価値」はあったのだろうか。

「昼食後のコーヒーもスターバックスなどで買うのはやめて、激安スーパーでまとめ買いしたドリップコーヒーで我慢するなど倹約生活にいそしんできました。ただ、流暢な英語を身につけ、仲良くなった学友たちと慶應での大学生活を楽しみにしている息子を見ると、頑張って良かったと思っています。やはり教育は投資。私も親から支援を受けられたこそ希望の会社に就職でき、満足行く社会生活を送れている。親が子供にしてやれるのは大学までですが、これからの人生で貴重な留学経験を活かしてくれたら嬉しいです」

 現在、高市政権は私立高校の無償化の実現に向けて動いているが、もちろんこのような海外留学は無償化の対象にはならない。

 子供のためにどこまで教育費を出すかは人それぞれだが、この超円安時代に我が子を海外留学させるサラリーマンも実在するのである。

 前編【「慶應大にほぼ入学保証」のアメリカ高校留学に3年間で3000万円 息子のために貯金の半分を投じたサラリーマンが見た「円安地獄」】

デイリー新潮編集部