彼は背伸びをしながら、その実、自分を削り続けている--周りの期待に無意識に応えようとする現代人の写し鏡のようにも見えました。迷いなく軍人としての任務を全うするレーン・エイムの精神の健やかさに比べ、ハサウェイの抱える檻はあまりに深いです。

そして、理想のリーダーであろうとするハサウェイの理性を、土足で踏み荒らしていくのがギギという存在でした。突拍子もない言動や、核心を突く視線の残像すら、彼が必死に繕っている「マフティー」という仮面を、彼女はいとも簡単に剥ぎ取ってしまいます。彼女こそが、彼をテロ組織のリーダーの座から「ただの青年」へと引きずり下ろす--文字通りの”魔女”なのかもしれません。

彼が最後に下す決断は救いなのか、それとも破滅への引き金なのか。三部作の最終章が待ち遠しいです。
これほどの作品が終わってしまうことへの寂しさが、すでに胸にあります。ひとりの青年の魂の揺らぎを、この美しい映像の檻の中に、いつまでも閉じ込めておきたい…‥そんな気持ちさえ抱いてしまうのです。何度も言いますが、病院には行って欲しいですけども。
『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』は、理想と現実の板挟みの中で、”正しさ”と”自分”の両方を抱えたまま決断しようとする青年の心を、息が詰まるほどリアルな映像と会話で追体験させる作品でした。

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