ド軍が「佐々木麟太郎」に白羽の矢? 大型補強で26年ドラフトに“ペナルティ”を負う「帝国」の本心とは
帝国の組織力
現地時間1月21日、ロサンゼルス・ドジャースが米FA市場のトップクラスにランキングされていた強打堅守の外野手、カイル・タッカー(29)と正式に契約を結んだ。そのまま入団会見も行われたのだが、彼が語ったのは“帝国の組織力”だった。
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「ドジャースはトップから現場に至るまで、全てが一流だと感じている。フロントスタッフたちが、ファンやこの街のために、素晴らしいものを提供しようとして作り上げたのがこのチームだ。そして、チャンピオンシップを争うために集められたこの戦力こそが、すべてを物語っていると思う。その一員になりたいと願うことは、私にとって特別なことでもあった。このようなチャンスは滅多にない」

タッカーの獲得でドジャースの弱点は全て補われたと言っていいだろう。25年シーズン、レフトのレギュラーを予定していたマイケル・コンフォールト(32)が極度の打撃不振となり、得点力不足に悩まされた時期もあった。
「得点力のアップは必須ですが、タッカーは堅守の外野手でもあります。ムーキー・ベッツが不慣れなショートにコンバートされ、正三塁手のマックス・マンシーは36歳を迎えるベテランで守備範囲も広くありません。コンフォールトも守備が巧くなかったため、守備陣の左半分はワーストクラスでした。タッカーは走塁の指標も高いので、走攻守の全てにおいて大きなプラスになりました」(現地記者)
他球団からはやっかみや、諦めにも似た声も出ていた。しかし、タッカーも認めていた高い組織力を持つドジャースにしては交渉成立まで時間が掛かりすぎたようだ。ニューヨーク・メッツなど他球団が獲得を狙っていたせいもあるが、遅延の理由はそれだけではなかった。ドジャースはワールドシリーズ3連覇を目指す今季と将来を天秤に掛け、タッカー獲得を躊躇った時期もあったのだ。
「タッカー獲得の交渉が佳境を迎えていた昨年末から年明けに掛けて、ドジャースが後退したことを示唆する情報も飛び交っていました。強打の若手捕手であるダルトン・ラッシング(24)に外野の練習をさせるという情報もあれば、ワールドシリーズを争ったブルージェイズが『10年総額3億5000万ドル(約553億円)』を提示したとか。タッカーとドジャースの契約は4年(総額2億4000万ドル/約380億円)なので、彼が長期契約に固執して譲らないといった情報も。今となっては間違いだったわけですが」(前出・同)
アンドリュー・フリードマン編成本部長が、ドジャースの専門メディア「Dodgers Nation」などに語った内容によれば、タッカー争奪戦のライバルだったメッツがデビン・ウィリアムズ(31)と3年契約を交わした後、状況が好転し始めたという。ウィリアムズは救援投手だが、高額年俸でなければ獲得はできない。ここでタッカー獲得の資金が尽き、ブルージェイズとの一騎打ちになったというわけだ。とはいえ、メッツのウィリアムズ獲得は12月4日(現地時間)である。そこから1ヶ月以上を費やしてしまった。
ドラフト上位指名権を喪失しても…
「ドジャースはタッカー獲得の前に、クローザーのエドウィン・ディアス(31)との契約に成功しています。ディアスは旧在籍チームのメッツから、同じくタッカーもカブスからQO(クオリファイング・オファー)を提示されています。そのため、ドジャースはディアスを獲得した時点で、26年7月の米ドラフトの上位指名権を一つ喪失しており、タッカーも獲得すれば、また一つ、上位指名権を失うことになります。そうなったとしても大丈夫なのかどうか、考えていたようです」(米国人ライター)
QOとはFA移籍で選手を喪失した球団への補償や、獲得した側へのペナルティに関連する制度だ。メジャーリーグでは複数年契約の最終年を迎えた選手に対し、シーズン中から残留交渉を始めるのが一般的だ。シーズン中に交渉が完全に決裂した場合はその選手をトレード放出して複数の若手選手と交換してしまう。だが、シーズン終了まで交渉が長引いた際は球団がいったん、「年俸上位125選手の平均」を提示する。
25年オフ、今永昇太がこのQOを受け入れたことで話題になったが、ほとんどの選手がそれを断わる。球団も残留交渉は継続できるが、他球団への流出を覚悟しており、移籍後の補償をアテにしてQOを出すケースが多いという。移籍後の補償、それは対象選手を獲得した球団のドラフト指名権を一つ譲渡させることだ。
「ドジャースはぜいたく税とも呼ばれる『Competitive Balance Tax(以下=CBT)』でも1位になっており、納めた額はさらにもうひと段階上に設けられた規定値ラインも超えています。課税のパーセンテージも増え、この点でもドラフト上位指名権を失っています」(前出・同)
こうした大型補強とそれによって膨らんだチーム総年俸によって、ドジャースは26年ドラフトの2位、3位、5位、6位の指名権を喪失した。「覚悟」を決めてタッカー獲得に臨んだわけだが、学生選手権で活躍した有望なアマチュア選手を獲得できなかったツケは近年中に返ってくるとみられるが、その一方で、予想外の声も。
「スタンフォード大学の佐々木麟太郎を指名する可能性も出てきました」(前出・同)
現地時間1月20日、大学野球も定期掲載している野球メディア「Baseball America」が今季の大学のプレシーズンマッチの見所や注目選手を紹介していた。残念ながら、佐々木はおろか、スタンフォード大学のことは触れていなかった。しかし、彼が大谷翔平(31)の後輩で、中学時代に大谷の父親から指導を受けた経緯は大谷フィーバーの一環で紹介済みだという。
麟太郎がドジャースに?
「昨今、米スカウトの間で佐々木の名前が聞かれなくなりました。昨年もオープンスタンスや右足を高く上げるスイングを実戦で試していたので悩んでいるのかもしれません」(前出・同)
佐々木に対する米スカウトの評価だが、ア・リーグ中地区のスカウトによれば「下位であれば、指名の可能性はある」という。しかし、メジャーリーグはシビアな世界である。トッププロスペクト・ランキングにも名を連ねる上位指名の選手は大切に育てられるが、あとの選手は「這い上がって来い」だ。ドジャースにすれば、正一塁手で今季37歳になるフレディ・フリーマンの後継者が欲しい。7巡目以降の指名で佐々木が残っている可能性は高く、その段階で彼をもっとも評価している球団はドジャースだろう。
また、ドジャースも大谷と佐々木の関係は十分に承知している。トッププロスペクトの選手として扱ってくれるはずだ。佐々木は昨年10月、福岡ソフトバンクから1位指名を受けており、日本時間の1月28日午後、オンラインでの会見に臨んでいる。ソフトバンクからの指名に感謝していたが、注目は「会見終了後」だった。
佐々木のマネジメントを任されているナイスガイ・パートナーズの木下博之社長が画面に現れ、「最後にぜひ、皆様に知っていただきたい情報が」と切り出した。米国の学生アスリートたちには肖像権などのビジネスが認められている。その形式で10社以上の日本企業がすでに出資を始めているそうだ。金額などの規模は不明だが、メジャーリーグに挑戦する学生に感銘したのだという。佐々木に出資した企業がそのままドジャースと提携という流れになるのか……大型補強で上位指名権を喪失したドジャースが「帝国の組織力」でドラフト会議でもビッグニュースを発信させそうだ。
7月に激震が走るかもしれない。
デイリー新潮編集部
