「送料無料」の過酷な実態「荷物がどんどん増えていく」68歳配達員の苦悩:ガイアの夜明け

1月30日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「“送料無料”その裏で」。
私たちが気軽に注文した商品を、運び届けてくれる配達員たち。しかし、現場は深刻な人手不足となる一方、アマゾンや楽天市場などのECサイトは活況となったこともあり、宅配荷物は急増し、年間50億個超え。現場は逼迫している。
「翌日配送」「送料無料」という便利さの裏側で、一体、何が起きているのか。私たちの荷物を届けるために苦闘する「ラストワンマイル」の最前線を取材した。
そんななか、運輸行政を担う国土交通省が立ち上げたのが「トラック・物流Gメン」。ターゲットはモノを運ばせる側、つまり「荷主」企業だ。
ガイアは「トラック・物流Gメン」に独占密着。ドライバーに劣悪な労働環境を強いていないか、厳しい目で監視する官僚たちの闘いを追った。
【動画】「送料無料」の過酷な実態「荷物がどんどん増えていく」68歳配達員の苦悩
「アマゾン」の荷物を届ける配達員…課題と真相に迫る
物価高の日本で、最近定着してきた年末の大型セール「ブラックフライデー」。
ネット通販最大手「アマゾン」では、さまざまな商品が大幅に割引され、会員なら、注文当日の配送でも送料無料に。
しかしその陰で、アマゾンの荷物を運び届ける現場は、時間との戦いに追われていた。

配達員には個人事業主も多く、小野さん(仮名・25歳)はアマゾンと契約する配送会社から委託されている。小野さんは元サッカー部で、健脚を生かして3分に1個のペースで荷物を届ける。
セール中に増えるのが缶やペットボトルの「まとめ買い」。そして、配達員泣かせとなるのが、購入者の不在だ。この日は、時間指定にも関わらず留守だった。小野さんは来たことを伝票で知らせ、再配達することに。

アマゾンや楽天など、ネット通販の普及で急増する宅配荷物。その数は、年間50億個を超え、去年12月には、大手の配送遅れや受け入れ停止が相次ぎ、危機的状況に陥った。
消費者の便利で快適な暮らしを支えるため、配送は夜9時40分まで続くが、それ以降は翌日に持ち越しとなる。
小野さんの報酬は1日1万9000円(税抜き)だが、個人事業主のため、車両・燃料・駐車場などは自己負担。1日の荷物量も最大250個まで増えており、荷物1個当たりの報酬は「80円弱」(小野さん)。
荷物が増えても、報酬は変わらず定額制。このまま続けていけるのか……小野さんは疑問を持ち始めていた。

神奈川・横須賀市。本田さん(仮名・68歳)も小野さんと同じ個人事業主の配達員。アマゾンと契約する配送会社から仕事を請け負っている。
配送に欠かせないのがアマゾンの配達員向けアプリ。業務内容を管理し、配送ルートも確認できる。
本田さんは当初スマホの扱いに苦労したが、どうにか使いこなせるようになった。
この日の荷物は180個ほどでエレベーターがない建物も多く、階段で上ることも。
本田さんは自動車関連の企業に勤めていたが、10年前、運転好きが高じて転職。アマゾンの配達は7年前から始めた。
「どんな小さいものでも、お客さんが必要として頼んでいるものだから丁寧に、安全、正確に届けたいというのは必然的に出てくる。それがプロの配達員」。

配送契約はさまざまだが、本田さんの場合、消費者が注文すると、アマゾンは仕分けなどを行った後、配送会社に委託。本田さんのような個人事業主は、その配送会社と契約して仕事を請け負うため、アマゾンとの契約関係はない。
配達員の職場環境は誰が守るべきなのか…。本田さんには、忘れられない体験があった。
4年前、配達が終わらず急いでいた本田さんは、ポストに投函しようと手を伸ばした時に階段から転落。たまたま下にあったタイヤで頭は守られたが、腰椎を骨折。入院することになり、2カ月間の休業を強いられた。
本田さんは配送会社に「労災で申請する」と申し出たが認められず、自ら労働基準監督署に労災を申請。1年後に認定された。
個人事業主の配達員では、日本で初めての判断と言われている。
本田さんが配達を終えて帰宅するのは、夜10時半。いつもこの時間だ。
本田さんの帰りを待つ妻は、「無事に帰ってくることが一番。年齢も年齢なので、健康面の心配は常にある。ストレスがたまらないようにリフレッシュする時間をつくっていけたら」と話す。

配達の現場で働き続けてきた本田さんは、今、さらに大きな問題を感じていた。
「荷物が勝手にどんどん増えていく。(報酬は)上がらない」。
元々の報酬は「個建て」という荷物の数に応じて支払われる「出来高制」だったが、6年前、アマゾンが配送会社との契約を変更し、「車建て」と呼ばれる車1台当たりの「定額制」になったという。それに伴い、配達員の報酬も「車建て」(定額制)に変更された。
本田さんは配送会社から「荷物は増えない」と説明されたが、現実には倍増。1日の報酬は1000円しか上がっていない。

この実態を何とかしたいと思い、本田さんが頼っているのが「東京ユニオン」(東京・四谷)。
非正規や派遣、フリーターなど、誰でも一人から加入できる労働組合だ。
本田さんは配達員仲間と団結し、配送会社とアマゾンに待遇改善を求めている。
2022年、個人事業主の配達員10名で労働組合を結成。2024年には、16名の配達員で契約する配送会社を提訴しており、現在も係争中だ。
個人事業主でも、実態は配送会社の指示に従う「労働者」だとして残業代の支払いを求めているが、会社側は雇用関係がないことなどを理由に、原告側の主張を認めていない。

ガイアは、その配送会社「ゴーパル」を直撃。ゴーパルは、アマゾンの複数の拠点を運営し、配送まで一括して任されている数少ない会社の一つだ。
配達員だった中村啓人さん(32歳)は、1年前、社長に就任。中村さんは「宅配業界の改善につながるなら」と、アマゾンの配送を巡る実情を明かしてくれた。
ガイアはさらに、アマゾンジャパンにも取材を申し込み、回答が。
「トラック・物流Gメン」に独占密着!

2024年に働き方改革の対象となったトラック業界。しかし、いまだ改善が進まず、大きな問題になっている。そのトラックの現場を監視するため、国土交通省が立ち上げたのが「トラック・物流Gメン」だ。

働き方改革で運転時間が短くなり、ドライバーの拘束時間は40分減ったが、実は積み下ろしの順番を待つ「荷待ち」や、積み下ろしをする「荷役」の時間は1分しか減っていない。
物流Gメンはそれらを是正するために、荷主企業を監視・指導する専門部隊。対象行為に目を光らせ、最も重い処分「勧告」では、社名を公表。企業には改善報告が義務付けられる。

2025年7月、Gメンが所属する国土交通省の研修センターに全国から約30名の新人Gメンが集められた。まず学ぶのは、荷主企業への接し方。指導するのは、国土交通省・中国運輸局の田中幸久さん(52歳)。物流Gメンを発足時から引っ張るキーマンだ。
「(荷主から)『もういい、来るなと言ったよな』と言われることがある。それでも負けない。制度に魂を入れられるのは我々だと思っている」。

広島市中央卸売市場。広島に軸足を置く田中さんは、早朝からドライバーに話を聞いて回るのが日課だ。血の通った活動には現場通いが欠かせない。田中さんは高校卒業後、18歳で国土交通省に入省。運輸畑一筋の叩き上げでやってきた。
「霞ヶ関にいたときは 現場との間があった。(当時)僕は地方運輸局の人間ではなかったので。世の中のためにはなりたいけど、自分がやっていることが世の中のためになっているのか、現場に来させてもらったことで反応が分かる。現場のリアルに接し、見た上で判断した方が関わった人たちが納得できる」。

10月、物流Gメンの集中監視月間が始まった。田中さんのもとには、ドライバーたちの切迫した声が届いていた。
「“風の通らない荷台で数時間作業を実施し、熱中症の危険を感じる”“値上げどころか値下げを要求されている。もう限界です、助けてください”とか」(田中さん)。
悪質な荷主企業に改善を要請するため、Gメンたちは告発したドライバーに聞き取りを行う。その上で、荷主に是正指導するのだ。

10月28日、東京・霞ヶ関。全国から物流Gメンと公正取引委員会の精鋭が集結。
田中さんが本省に掛け合い、都内の合同・荷主パトロールが実現した。
Gメンたちは、告発情報があった荷主を中心に回るが、中には大手有名企業も。
動き出した物流Gメン、いよいよ悪質な荷主企業をあぶり出す――。
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