(※写真はイメージです/PIXTA)

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物価高の波がついに「住まいの維持費」という聖域にも押し寄せています。人件費や資材価格の高騰により、マンションの管理費や修繕積立金の値上げラッシュが現実味を帯びてきました。もはや「数千円の負担増」では済まされない事態に、住民たちはどう向き合っているのでしょうか。最新の調査結果からは、積立金不足が引き金となり、将来的な「マンション売却」すら視野に入れる所有者たちのシビアな現実が浮き彫りになりました。

許容できる値上げは「月3,000円」が限界ライン

スーパーに並ぶ食料品や日用品の値上げには慣れつつあるものの、毎月口座から引き落とされる「居住コスト」の増加は、家計にとってより深刻で長期的なダメージを与えます。

VSG不動産株式会社がマンションを購入し、現在も居住中と回答した男女を対象に行った『マンションの管理費と修繕積立金の値上げに関する意識調査(調査実施:2025年7月)』によると、物価高騰の影響ですでに管理費や修繕積立金の値上げ、あるいはその議論を経験した人は全体の7割を超えていることが分かりました。

かつては「計画通り」に進むのが当たり前だった修繕計画ですが、昨今の建設コスト高騰により、その前提が根底から崩れ始めています。 調査結果を見ると、現在支払っている管理費と修繕積立金の合計額は「2万円〜4万円未満」が全体の6割強を占めています。住宅ローンを完済していたとしても、この固定費は一生ついて回るものです。

ここに「資材高騰分」が上乗せされるとなれば、年金暮らしの高齢世帯や教育費のかさむ子育て世帯にとって、決して無視できないインパクトとなることは想像に難くありません。

では、住民たちは具体的にどの程度の負担増なら受け入れられるのでしょうか。

同調査によると、値上げの許容範囲について、管理費・修繕積立金ともに「月額3,000円未満」と回答した人が6割前後を占めました。一方で、「5,000円以上」の値上げを許容できる層は少数派にとどまっています。

大規模修繕工事の見積もりが数年前の想定から1.5倍〜2倍に膨れ上がっている昨今の情勢を鑑みると、戸当たり数千円の値上げでは賄いきれないケースが多発していると考えられます。

住民の心理的な「防衛ライン」は月3,000円。しかし、現実はそれを超える負担を求めてくる――このギャップこそが、現在のマンション管理組合の理事会が紛糾する最大の要因といえるでしょう。単なる節約では追いつかず、サービスの質を落とすか、痛みを伴う大幅値上げに踏み切るか、二者択一を迫られているのです。

負担増が許容範囲を超えたら、マンション売却も仕方がない…

今回の調査結果において、注目すべきは「売却意向」に関するデータです。

「許容範囲を超えて大幅に値上がりした場合、将来的にマンションの売却を検討するか」という問いに対し、「売却を真剣に検討する」「状況によっては考える」「やむを得ない場合は考える」を合わせると、なんと約半数が売却の可能性を示唆しているのです。

もし維持費の高騰を嫌気して売りに出す住戸が増えれば、需給バランスが崩れて資産価値が下落する恐れがあります。さらに、買い手がつかずに空室が増えれば、残された住民で管理費を負担せねばならず、さらなる値上げという「負のスパイラル」に陥りかねません。

特に築年数が経過したマンションほど修繕費はかさむ一方で、住民の高齢化により負担能力は低下する傾向にあります。調査でも回答者の約7割が築10年〜30年の「修繕本格化期」の物件に居住しており、この問題は決して他人事ではないのです。

さらに調査結果を詳しく読み解くと、住民が抱いている不安の本質が見えてきます。 「値上げの必要性は理解している」という層は約8割に達しています。つまり、住民はただ単に「お金を払いたくない」と言っているわけではないのです。問題は、そのプロセスにあります。

納得するために必要な情報として、「長期修繕計画と将来的な費用見通し(53.2%)」や「修繕工事の具体的な内訳(46.7%)」が上位に挙がっています。これは裏を返せば、多くの住民が「なぜその金額になるのか」「将来あといくら上がるのか」が不透明なまま、決定事項だけを突きつけられていると感じている証左ではないでしょうか。

ここから、マンション管理において最も恐れるべきは「資金不足」そのものよりも、住民間の「相互不信」であるという事実が浮かび上がります。

「管理会社が高い見積もりを出しているだけではないか」

「理事会が勝手に決めているのではないか」

こうした疑念が渦巻くなかでの値上げ提案は、必ず感情的な反発を招きます。逆に言えば、たとえ厳しい値上げ幅であっても、客観的な相場データとの比較や、複数パターンのシミュレーション提示など、決定プロセスを「ガラス張り」にすることで、納得感は大きく変わってくるでしょう。

調査では、値上げへの対抗策として「まだ何もしていない」という層が4割を超えていました。しかし、物価上昇のトレンドが変わらない以上、傍観している余裕はありません。

管理費や修繕積立金の値上げは、家計にとっては痛手ですが、見方を変えれば「資産を守るための再投資」でもあります。適切な修繕が行われず、スラム化したマンションこそ、売るに売れない最大の負動産となり得るのです。

[参考資料]

ベンチャーサポートコンサルティング株式会社『マンション管理費・修繕積立金の値上げ、「すでに影響あり」6割弱。マンション住民の本音が明らかに』