90年代オルタナティブロックをベースにした楽曲『花束とすーさいど』――2人組ボカロPユニット・キツネリが歌い手conoへ書き下ろし

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 今回は、グミ山さんとN-Roachさんによる2人組ボカロPユニット・キツネリが、女性シンガー・conoさんに書き下ろした「花束とすーさいど」を紹介する。

文/小町 碧音(こまち みお)

 90年代のオルタナティブロックをベースにポップな風味も少々滲む淡いサウンドは、時間だけではなく、空間までも指先でゆっくりと触れていった。
 そう思わせたのは、言わずもがなだが、まろやかで透明な音像に寄り添うconoさんの息遣いの伝わるアンニュイなボーカリゼーションが影響している部分も大きい。
 それでいて、歪むギターフレーズが頭角を現す落ちサビでは、開花させるエッジィな色の混ざるボーカル。万華鏡のように変幻しながら輝くのが、conoさんの歌だと、ハッとさせられる。

 とりわけ、最初に目を引くのは、なんといっても、天国/地獄、救い/残酷といった相反した意味合いが込められている「花束とすーさいど」という曲名だろう。
 先が長くない少女を描いたミュージックビデオにも、彼女がピンクのバラの花束を抱えるシーンと、彼女の体表を伝って赤黒い雫が落ちていくシーンの両軸で、その極端な世界観がしっかりと映し出されている。
 例えば、光と影の境界線に美しさが生まれるのに似て、本楽曲にもまた、奇妙なほど美しい世界観の響きがにじみ出ているのは確かだ。

 しかし、一方で本質はまた別のところにあるとも思えた。1番サビの<悲しいままいたい気分のいのちは 君には似合わないね>というフレーズが、恐怖から離れてこそ幸せでいられることを歌っているのに対し、終盤の<さよならが悲しい いのちを 愛しく思えるように>というフレーズでは、恐怖心さえ抱きしめて、怖いと思っていた世界へ自分から踏み出す勇気を手にして終わる流れが生まれている。

 シンメトリーな表現がお互いに離れていくのではなく、むしろ近づいていく。そういうところに“本当の美しさ”があるということだろうか。

 有限な命と、無慈悲に過ぎ去っていく時間と空間の儚さ。最終章のはずなのに、ここから第二章が始まる。
 そういう光の差し込む前向きな光景が目前に広がった。
 最初に曲名から抱いた恐怖感とは真逆で、心が高鳴る曲だと受け取るようになっていったのは、とても不思議な音楽体験だった。

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