西日本選手権で6位に入った大庭雅【写真:中戸川知世】

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フィギュアスケート西日本選手権

 フィギュアスケートの西日本選手権が2日、滋賀・木下カンセーアイスアリーナで行われ、女子の大庭雅(東海東京FH)がフリーで97.58点をマーク。合計147.51点で6位に入り、全日本選手権(12月、東京・国立代々木競技場)の出場を決めた。30歳になっても挑戦を続け、自身14度目となる国内最高峰の舞台に向かう。

 フィニッシュのポーズを取った時、覚悟していた。「正直、全日本は難しいだろうな…」。ジャンプにミスが出て、フリー97.58点は目標の100点に届かず。それでも、氷上の女神は大庭を見放さなかった。

「出し切れなかった。もうちょっとできたなって思います」などと話した数分後。後続の選手がスコアを伸ばせず、全日本進出となる8位以内が決まった。「私、入りました」。1日のショートプログラム10位から逆転。その声は、少し震えていた。

 4月から仕事の比重が大きくなり、氷に乗る時間は激減した。「トリプル(3回転ジャンプ)を跳べなくなると思っていた」。練習不足を補うため、8時間のデスクワークをこなした後にジムで陸上トレーニングを行うなど、懸命の調整を続けてきた。

「4月の自分では考えられなかった。『大庭雅、頑張ってる』って思って。自分で言うのもなんだけど、誇りに思っています」

8月に30歳、異例中の異例「年を取ったって感じはなくて」

 8月8日、30歳の誕生日を迎えた。10代からの活躍が目立つ女子フィギュア界において、この年齢で勝負のリンクに立ち続けるのは異例中の異例と言っていい。「年を取ったって感じはなくて。後輩ちゃんや周りから見たら年かもしれないけど」。柔らかく笑った大庭は、こう続けた。

「ここまでやってきた頑張りを、後輩ちゃんに見せたいと思って練習してます」。限られた氷上練習で、年下のスケーターに背中で語り、刺激を与えてきた。

 全日本切符を争う予選は、「毎年嫌な、大嫌いな試合」と言う。スケーターは極度の重圧にさらされ、リンクは独特の緊張感に包まれる。大庭の背中を押すのは、何度も修羅場をくぐり抜けてきた経験だ。

「毎年統計を取っているし、長年続けていて、ボーダーラインも把握している。みなさん緊張もあるし、波のある選手も多かった。自分の演技をしたらいけるかなと試合前は思っていた」

 ライバルと自身を冷静に分析し、14度目の出場を決めた。30歳で迎える全日本は、特別な意味を持つ。

「自分が知っている限り(女子で)最年長出場になる。それを目標にやってきた。いろんな先生に『更新できるのは、あなただけ』と言われていた」

 気高く不屈の30歳は、国内最高峰のリンクに刻む。得点や順位を超えた、「大庭雅」の物語を。

(THE ANSWER編集部・杉本 亮輔 / Ryosuke Sugimoto)