清水さんが住むマンション

写真拡大

 本州以南ほど気温が上がらないことから猛暑の夏場でも過ごしやすく、雄大な自然などスケールの大きさが多くの人を魅了する北海道
 ゆえに移住先としても人気が高いですが、デメリットは冬場の雪と寒さ。もちろん、それも承知の上かもしれないが、「思っていた以上にキツい!」と感じる人は多いようだ。

 神奈川県出身の清水直孝さん(仮名・41歳)は、21年に北海道へ移住。バツイチ独身と身軽であったことに加え、仕事もフリーランスのシステムエンジニアで在宅業務なので仕事は場所を選ばない。そのため、以前から移住を考えており、真っ先に浮かんだのが北海道だった。

◆高齢住民の駐車場の除雪作業を善意で手伝ってあげたら……

「大学2年の夏休みに一人旅で訪れて以降、10回以上訪れていると思います。いちばん寒い1〜2月にも何度も来ました。個人的に寒いのはそこまで苦ではなく、むしろ苦手なのは暑さ。それにのんびりした環境で暮らしたかったんです」

 移住先に選んだのは、札幌から車で1時間半ほどの某市。その市街地にあるマンションが現在の住まいだ。観光地として有名な場所ではないが役所や病院、大型スーパーにホームセンターが近くにあり、コンビニも徒歩圏内だったため、生活には困らないだろうと判断したそうだ。

「飲食店も大きな通り沿いに点在していましたし、田舎町にしては住みやすそうだなって。自然が豊か田でも生活に不便な場所は望んでいなかったため、自分にとってはちょうどいいと感じたんです」

 引っ越したのは夏場で最初のうちに田舎暮らしを満喫していたが、早くも試練が訪れる。冬場の除雪が思った以上に重労働だったのだ。

◆知らない人の除雪まで頼まれるように

 駐車場は屋外だから除雪しなければ車を出すことができず、「ドカ雪」と呼ばれる一晩で数十センチもの大雪に見舞われることもある。自分の車だけならいいが、高齢の住民の中には彼に駐車スペースの除雪を頼む者もいるという。

「ある時、駐車場の隣のスペースに車を停めているおばあさんも雪かきをしていて、大変そうだったから手伝ってあげたんです。そしたら頻繁に頼まれるようになったんです。しかも、その方に話を聞いたのか『ウチの分もやってもらえないか?』と全然面識のない方まで頼みに来たんです」

 さすがに断ったそうだが「不親切だ!」と文句を言われ、マンション内で悪評を流されてしまう清水さん。もともと近所付き合いはほとんどなかったが、一部の高齢者から敵視されてしまう。

「挨拶程度はしていたのですが、ある時期から無視されるようになりました。それに最初に除雪を手伝ってあげたおばあさんもお礼を言われたのは1回目の時だけ。それ以降はやってもらって当然みたいな態度でした。自分で除雪できないなら免許を返納して車を処分すればいいんですよ」

◆管理組合からは「逆に諭されてしまった」

 住民で組織される管理組合は、老人会のような状態で「なんとかしてほしい」とクレームを入れてもなしのつぶて。それどころか役員を務める別の年配男性からは、「そのくらいしてあげても……」と逆に諭されてしまったそうだ。

「アウェイもいいところですよ。私も毎回断っていたから今は頼みに来ることもなくなりましたけど」

 実は、清水さん自身も現在は冬場の運転を控え、極力公共交通機関を利用している。移住して最初の冬に自損事故を起こしてしまい、圧雪アイスバーンでの運転に苦手意識を持っているからだ。

「でも、JRは大雪による運休も珍しくなく、比較的雪に強いバスでさえもストップする時もあります。動いていても遅延が多く、最寄りのバス停には風雪のしのげる待合所もないため、これだけはなんとかしてほしいですね」