中日ドラゴンズがSNSでトレンド入りした「怠慢走塁」の人間模様は、AIにはない人間ならではのプレミアムな価値に満ちていた件。
人間が即興でやることのプレミアムな価値!
僕は今、恐ろしい時代に立ち会っています。AI時代です。AIという新たな脅威が、僕の前に立ちはだかっているのです。僕は「責任がなくて誰でもできるなるべくラクな軽作業でお金をもらいたい、できればお金だけもらいたい」という信条のもと、何とかそういった仕事にありつき、日々のご飯をいただいております。「猿が進化したら仕事を奪われるかもしれん」と思って道具を使いこなす猿に警戒を払い、賢い犬とか語彙力高いオウムあたりに注意を配り、犬よりは上手に買い物ができる自分(※ポイントカードとクーポン忘れずに出すとか)を確認しては胸を撫で下ろしてきました。
しかし、AIという恐るべき敵はすでに僕のできそうなことは全部できやがるようになってまいりました。調べものも、情報のおまとめも、誰かに向けたアドバイスも。AI連中はそのうえ絵も描けるし、何なら物語だって作れると言います。「うへー、野球の感想くらい書きそう」「炎上しないマイルドな内容で」「そんなもん何が面白いんだ!」と焦りは募るばかり。現時点ではまだ周囲の人々がAIを使いこなせないため給料への直接的な打撃は起きていませんが、早晩「あれ?この人の仕事AIでよくない?」という時代がやってくることは見えてきました。まだまだ生きるつもりの数十年、AIの驚くべき進化の速さを考えると、震えながら「終わり」を待つ時間です。
もしかしたらノンキに仕事などしている場合ではなく、AIの危険性(※AIに支配された世界でAI同士の核戦争が起きますよとか)をクレイジーに訴えて、法規制やら第三者諮問機関やらの設立へと誘導し、そのNPO法人に居座って「このAIはかしこ過ぎるから危険!免許発行不可!」「このAIは人間に媚びるのがうまい!不可!」みたいな格付けでもすることに活路を見出したほうがいいのかもしれません。「AIを管理する人間」になるのだと考えると、ちょっとワクワクしてきます。それこそ真の管理職。
そんなAI時代であるからこそ、僕はとあるひとつのプレーに感動しました。そのプレーが起きたのは、日本プロ野球の1部リーグか2部リーグか3部リーグに所属しているという中日ドラゴンズンと阪神タイガースの試合でのこと。試合展開としては序盤で大量得点を挙げた阪神が4ー1でリードし、中日は年がら年じゅう追いかけている流れでした。希望のないまま迎えた8回裏、最後の意地で中日は二死ながら一・二塁のチャンスを作ります。ここで中日の打者・村松さんはレフト線に長打コースの打球を放ったのですが……
↓まずは何が起きたか見ていきましょう!
/
- DAZN Japan (@DAZN_JPN) May 18, 2023
連携プレーが失点を防ぐ
\
三塁タッチアウトのほうが先で無得点
中日リクエストも判定は覆らず
⚾プロ野球(2023/5/18)
🆚中日×阪神
📱Live on DAZN#hanshin#DAZNプロ野球 pic.twitter.com/3R79fYMsD8
村松さんの打球はレフト線のライン際にちょこーんと落ちました。ボールはファウルゾーンをワンバウンド、ツーバウンド、転々としています。何とか阪神のノイジーさんが打球をつかんだときには、すでに二塁走者は三塁をまわったところ。一塁走者も二塁をまわり三塁到達を狙っていました。1点返してなお二・三塁…という形が見えていました。
しかし、ボールを追う動作がゆったりしている割に、ノイジーさんの捕球から送球への動きは素早く、しかも肩も強く、鋭い返球が三塁に返ってきました。走者を待ち受けるベストポジションへの返球が来たことで、三塁を狙った走者はよもやのタッチアウトに。と、ここまでなら「肩強いっすねー」で終わる話なのですが、ここからひと悶着が起こります。
すでに入ったものだと皮算用していた二塁走者生還での1点に対して、球審が両手を振りながら「得点入ってない!ナシ!ナシ!」というアピールをしているのです。まるで2万人くらいいるんじゃないかと思わせるほどのザワつきを見せる場内。当然リクエストをする立浪監督ですが、改めてVTRを見てみると一塁走者が三塁でタッチアウトになった時点で、二塁走者はまだホームベースを踏んでいません。ギリギリですらなくノロノロでヨユヨユです。つまり、二塁走者が生還するより先に一塁走者タッチアウトでスリーアウトとなっており、その時点で攻撃が終了していたのです。
これには中日応援団も大荒れ。「オイオイオイ!」「バカヤロー!」「銭返せ!」などのこっぴどい……まぁ普段の試合とあんまり変わらないかもしれませんが、大きな怒りの声があがりました。二塁走者であった石川昂弥さんがもうちょっと懸命に走っていれば生還できていた状況だっただけに、SNSでは「怠慢走塁」がトレンド入りする一幕も。この反響も含めて、戦う走塁をしていない選手に対して立浪監督がどんな親心を見せるのか、シーズンオフに注目が集まりそうなプレーでした。
↓ノイジーさんの取ってからの速さVS石川さんの三塁蹴ってからの遅さ!
心のオオタニサン:「憧れるのをやめましょう」
心のオオタニサン:「ファーストに石川昂弥がいたり」
心のオオタニサン:「センターを見れば岡林勇希がいるし」
心のオオタニサン:「外野に大島洋平がいたり」
心のオオタニサン:「野球をすごくよく見ていたら」
心のオオタニサン:「聞いたこともある選手がいるとは思う」
心のオオタニサン:「でも憧れるまでではないので」
心のオオタニサン:「憧れてしまっては超えられないので」
心のオオタニサン:「僕らは今日超えるために」
心のオオタニサン:「プロ野球をやるために来たので」
心のオオタニサン:「今日に限らず彼らへの憧れを捨てて」
心のオオタニサン:「勝つことだけ考えていきましょう」
本当にWBCで見たのと同じスポーツなのかわからなくなってきた!
ほかのもの見ながら3年後のWBCを待ったほうがいいのかもしれない!
それにしても見れば見るほど惚れ惚れするような人間模様。チンタラ走った石川さんはもちろんですが、よくよく見れば全然アウトのタイミングで迷いなく突っ込んでくる一塁走者・細川さんの勇ましさや、『ラブ・ストーリーは突然に』のジャケ写みたいなポーズで呆然とする三塁コーチ、ノンキにハイタッチで待ち受ける次打者予定の溝脇さんなどオールスターズといった状態。そうした中日勢をバックに、三塁アウトのタイミングとホーム生還のどちらが先かを腰を屈めてじっと見極める球審の仕事人ぶりたるや。
その球審の横で阪神投手の浜地さんも同じアピールをしているところが重なって「さすが1部リーグのプロはちゃんとわかっているんだなぁ」というところを見せたうえで、画面にはおさまっていないものの同じ角度のやや後方から見ていたはずの中日・立浪監督が「リクエスト!」でベンチを出てくるんだなぁと思ったら、画面におさまらない無限の広がりが生まれますよね。立浪監督の動きを「クスクス無理矢理リクエスト」と受け止めるか、「ヒェッ懲罰晒し上げリクエスト」と受け止めるかによって、笑いにもホラーにも変わる奥行きも実にいい。
この美しさ、この感動は、やはり人間がやってこそだなと思うのです。ほとんどの観衆が「1点入ったな」と思いながら見ているあの場面で、予断を持たず、すべてのプレーをしっかりと見極める球審の腰を屈めるあのカッコよさ。ファンよりも圧倒的にたくさんの野球を見てきた人が、この形でもまったく未来を決めつけることなく、最後の最後までしっかりとプレーを見極めているんだと思ったら、「怠慢」と正反対の位置にある神々しい何かを見るような気持ちになりました。これはAIには出せない人間ならではのカッコよさです。
AI審判を導入する未来の野球では、このプレーに対して淡々と「走者アウト」「生還ならず」が表示され、観衆は「ハイ」と受け止めるのだろうと思います。サボらないことも、ヨソ見しないことも当たり前のAI審判に対しては、あぁそうなんですねハイハイと無感動に思うだけだろうと。しかし、同じことを人間がやれば、すべてのプレーに予断なく臨んでいる審判員の集中力や生き様が、素晴らしい感動を生んでくれるのです。そして「懲罰晒し上げリクエスト」の可能性だって、人間だからこそワンチャンあるかもしれないぞと想像できるわけじゃないですか。有能AI監督ならそもそもこの場面でリクエストなどしないと思いますし。
人間だからこそ生まれるミスや誤審は確かにマイナス要因ではあるものの、人間だからこそのプラスもまたあるのだと改めて気づかされるようなプレーだったと思います。AIに脅かされる仕事はたくさんありますし、野球の審判なんてのはその最前線の一丁目ですが、人間が自ら手を動かしてやることや、人間がその場で即興で行なうことには、大きな大きな付加価値があるのです。ただただいいプレーを見たいだけであれば、バッティングマシーンとピッチングマシーンの時速200キロ対決を見たっていいはずですが、そういうものが望まれないのは、やはり「人間」を見ていたいからなのでしょう。生身の感情がこもったエンターテインメントが見たいからなのでしょう。
そういう意味ではミスや失敗にもまた「人間」だからこその付加価値があるのだろうと思います。AIのするミスは直すべき「不具合」や「故障」でしかありませんが、人間のするミスには愛すべき「愛嬌」や「おかしみ」があります。今回の中日ドラゴンズンの怠慢走塁劇場は、油断しちゃうよなーという人間らしい走者の愛嬌と、油断しないんだなーという人間らしい審判員の勤勉さと、両方が同時に表れている名場面でした。なので、中日ドラゴンズンファンの方も「銭返せ!」ではなく「イイもん見たわ!大した銭泥棒だな!」と前向きに思っていただくとよいのではないかと思います。
この美しく愛嬌のある人間模様、AI時代に負けずこれからも楽しんでいきたいもの。
パワプロで同じことが起きたら「走者が途中で遅くなるバグ」って速攻でキレてコナミに電話するところですが、人間がやるとクスッ笑えるのがいいですね!
↓AI野球記者が生まれた未来、同じ記事は書けたとしても、同じ写真は選ばないだろうと思える人間ならではの仕事!
【阪神】破竹7連勝 岡田監督は竜の?怠慢走塁?に「一生懸命走らなアカンいうことや」(東スポWEB)- Yahoo!ニュース https://t.co/Gtu19DsCSe
- のもとけ (@gnomotoke) May 18, 2023
岡田監督も「一生懸命走らなアカンいうことやろな。安心して走ってるからあんなな、点が入らんようになるんやから」とニヤリ。 pic.twitter.com/m5Oc8Dm9Xi
AIには「悪意」はないですからね!
まだまだ人間は戦える!
AI野球監督とかできたら、納得感のある有効な采配ばかりで寂しいですからね!
外部サイト
さまざまなジャンルのスポーツを"お茶の間"目線で語る人気のコラム


