2020年に登場した次世代ゲーム機のPlayStation 5(PS5)は、ソニーが公式に「供給不足は2022年になっても続く可能性がある」と語るほど世界的に品薄状態が続く人気ゲーム機。25周年を迎えたポケモンカードゲームも、近年人気が急増中で、1枚のカードがオークションの中で3400万円という高額で落札されたこともあります。そんな人気の高いゲーム機やカードゲームの転売で、170万ドル(約1億9000万円)もの収益を上げた16歳の少年の存在をウォール・ストリート・ジャーナルが報じています。

Sixteen Years Old, $1.7 Million in Revenue: Max Hits It Big as a Pandemic Reseller - WSJ

https://www.wsj.com/articles/sixteen-years-old-1-7-million-in-revenue-max-hits-it-big-as-a-pandemic-reseller-11623248291

16歳のマックス・ヘイデンさんは、2020年に起きた新型コロナウイルスのパンデミックに伴うゲーム機の供給不足を好機と見て、数十台のPS5やXbox Series Xといった最新のゲーム機を購入し、定価の倍以上となる1100ドル(約12万円)程度で販売しました。これと同時に、パティオヒーターやポケモンカードゲームといった人気の高い商品を取り扱うことで、ヘイデンさんは最終的に170万ドルもの収益を上げ、最終的に11万ドル(約1200万円)もの利益を上げたそうです。

ヘイデンさんは若年層をターゲットにした転売屋のノウハウを共有するオンライングループに参加しており、お金を払って転売屋としてのノウハウを入手したそうです。ほとんどの場合、転売は合法ですが、一般的に見ると消費者から好意的に受け入れられる行為ではありません。そのため、転売屋には一般の消費者からクレームの声や嫌がらせのメールが殺到することもあるそうです。

ヘイデンさんの父親も転売行為でお金を稼ぐ自身の息子に眉をひそめていたそうですが、生活必需品や衛生用品といったパンデミックの期間に需要が急増したものを転売しているわけではなかったため、最終的に息子の転売行為は「許容できる」と結論付けたそうです。



ヘイデンさんは注文の処理・在庫の管理・2人の従業員の監督といった作業を担い、週に40時間もの作業時間を費やしています。これと同時に、他の転売屋とコミュニケーションを取ったり、ビジネスニュースや政治経済ニュースをチェックしたりすることで、トレンドを確認し続けているそうです。

新型コロナウイルスのパンデミックにより外出禁止令が出た際には、ジムやサロンが営業停止となったため、ダンベルやバリカンといったものを買いだめして多くの利益を上げ、これをゲーム機転売のための資金としたと語っています。

PS5などのゲーム機の予約販売は数量がかなり絞られていたため、ヘイデンさんはDiscord上の転売屋コミュニティに参加し、どのウェブサイト上に在庫が補充されるかなどの情報を入手していたそうです。なお、コミュニティに参加するには月額20〜100ドル(約2200〜1万1000円)程度の会費を支払う必要があったとのこと。

また、このグループはウェブサイト上で商品をいち早く仕入れるためのボットも提供していたため、ヘイデンさんは商品を購入するためにPCの前に座り続ける必要すらなかったそうです。ヘイデンさんが参加していたような転売屋コミュニティや、商品をいち早く購入するためのボットの存在は、これまでにも報じられています。

転売ヤーグループが3500台のPS5を確保していることが明らかに - GIGAZINE



ヘイデンさんのようにPS5などの次世代ゲーム機の転売には注目が集まっており、「eBayでアメリカ向けに販売されたPS5」の台数は、2020年内だけで3万2000台を超えており、その総売上は約3500万ドル(約39億円)にも上ります。

転売屋は85億円超をPS5や次世代グラフィックボードの転売で売り上げた可能性 - GIGAZINE



この報道に対して、ゲームメディアのKotakuは「ウォール・ストリート・ジャーナルがPS5やポケモンカードを転売する子どもを称賛しています」「資本主義新聞が資本主義が大好きな10代の若者を見つけました」と報じています。

Teen Makes Bank Reselling PS5s, Xbox Series X and Pokemon Cards

https://kotaku.com/wall-street-journal-praises-kid-reselling-ps5s-and-poke-1847216023



ウォール・ストリート・ジャーナルが少年に肯定的な報道をした一方で、Kotakuは「21世紀のアメリカという資本主義の地獄絵図がこの少年を形成しました」と語り、ヘイデンさんを生み出したのは現在の資本主義社会であると言及。さらに、「転売を市場が許可しているため、転売屋をとめることはできません。ソニーにとってPS5を一般消費者と転売屋のどちらに販売するかは関係ありません」とKotakuは語り、転売を良しとする現状を批判。続けて、「転売は解決不可能な問題のように思われていますが、これは何世代にもわたる政治家や消費者の『市場にすべてを任せればいい』という諦めの結果です」と記しています。

さらに、Kotakuは「子どもの父親が言った通り、転売は違法行為ではありません。しかし、転売に対面する我々にとって、転売が合法だからといってこれらの行為が正しい行為というわけではありません」と記し、転売行為に対する批判的な姿勢を明確に示しています。