深刻化するコロナ不況…考え得る「日本最悪の結末」シナリオ

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これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。経済コラムで多くのファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、身近なテーマを読み解きます。第27回は、コロナ不況の深刻化で懸念されるリスクシナリオとして、金融危機を論じます。予測ではないので過度な懸念は不要ですが、頭の片隅に置いておいて損はありませんよ。

「人々の不安感」が金融危機を引き起こす可能性もある

先般のマスク不足は、新型コロナウイルスの流行によって使用量が増えたために起こりました。一方、3月ごろのトイレットペーパー不足は、デマなどによって多くの人が「足りなくなるらしいから、たくさん買っておこう」と考えた結果、発生したものでした。

人々の不安によって起こった「買占め騒ぎ」

株価の暴落についても、きちんとした理由がある場合と、「人々が暴落を予想して売り注文を出したから暴落した」という場合があるのです。

同じように、銀行の取り付け騒ぎも、本当に危ない銀行が取り付けにあうこともありますが、人々が事実に反して「あの銀行が危ないらしいから、預金を引き出そう」と考えてお金を一斉に引き出すことで、本当に危なくなることがあります。

金融は「みんなが大丈夫だと思っているから大丈夫なのだ」という信用で成り立っている側面があるため、人々の信用が崩れると大変なことが起きる可能性があるのです。

比較的最近発生した「金融危機」を振り返り

金融危機といえば、平成バブルが崩壊したあとの90年代後半の金融危機が印象的です。バブル崩壊により、巨額の不良債権が発生したことで銀行の決算が悪化、銀行の金融仲介機能が麻痺する、という事態に陥りました。

「金融は経済の血液」といわれることがあります。胃や心臓のように目立った働きはしていませんが、血液が止まると胃も心臓も止まってしまいます。それと同様に、金融仲介機能が滞ると企業活動に甚大な影響が生じるのです。

2008年9月に起きたリーマン・ショックも「バブル崩壊による不良債権が金融仲介機能を麻痺させた」という構造なので、基本的には同じようなことが、10余年の間隔をおいて日本と米国で発生した、ということになります。

もっとも、金融危機はバブル崩壊以外でも発生します。先進国の資金が途上国から引き揚げられると、途上国通貨を売ってドルに替える動きが活発化するので、途上国通貨が暴落する通貨危機が発生しかねません。1997年7月からタイを中心に始まったアジア通貨危機を覚えている読者も多いでしょう。

政府の放漫財政で財政赤字が拡大して財政が破綻する、ということもありえます。世界の金融市場を動揺させた、2010年のギリシャ債務危機は、まだ記憶に新しいところです。

国債暴落、新興国通貨暴落、国家財政破綻

現在も、コロナ禍が引き起こした深刻な不況によって、金融危機が起きるかもしれないリスクがあります。では、どんな可能性があるのか考えてみましょう。

不況が原因で金融危機になるとすると、主な原因はやはり、銀行の不良債権が増加し、赤字が拡大して自己資本が減ることでしょう。

銀行の赤字が続くと預金者が不安になるので、取り付け騒ぎが発生する可能性があります。「あの銀行が危ない」という噂に踊らされた人々が一斉に預金を引き出すわけです。そこからさらに、庶民の預金だけではなく、大口預金者の預金や銀行間の貸借が引き揚げられたとしたら、大ごとになるかもしれません。

また、銀行の自己資本が減少してくると、自己資本比率規制によって貸し渋りをせざるを得なくなるかもしれません。そうなると政府が公的資金を注入する(銀行の増資を政府が引き受ける)必要が出てきますが、世論の反対も予想されるので、公的資金注入は容易なことではないでしょう。

銀行に貸し渋りをされた借り手は、他行から借りることもむずかしくなります。銀行は見知らぬ借り手に融資をするときには、返済能力をしっかり調べるので、融資の決定までに時間を要するのです。借り手が軽微な問題を抱えている場合には、従来の取引銀行であれば無理やり回収することはないかもしれませんが、新規の取引銀行は融資に応じてくれないでしょう。

銀行が破綻するという話になると、銀行相互の資金貸借が行われなくなる可能性もあります。そうなると、「万が一のときにも他行からは借りられないだろうから、金庫に現金を積み上げておかないと不安だ。貸出は控えよう」と考える銀行が増えるかもしれません。

先進国で貸し渋り等が発生すると、新興国からの資金の引き揚げが起きるかもしれません。そうなると、返済のためにドルを買うことでドル高新興国通貨安となるでしょう。

売りが売りを呼んで新興国通貨が暴落すると、ドル建て債務を抱える新興国企業は返済負担が重くなり、返済できなくなる可能性があります。通貨危機です。

深刻な不況で税収が落ち込み、景気対策の歳出が増えると、財政破綻する国が出てくるかもしれません。イタリアなどは深刻な不況に苦しんでいるはずですから、リスクシナリオとしてはありえるかもしれません。

最悪なのは、景気後退と物価上昇が同時に起こる「スタグフレーションに陥ることです。深刻な需要不足に悩む一方で、生産や物流が滞ると、物不足からインフレが発生する可能性があります。そうなると、インフレ対策と不況対策の両立という大変困難な課題が発生します。

インフレ対策のために金融の引き締めが行われると、国債価格が暴落して国債を大量に保有している金融機関が巨額の損失を抱えることになり、それが金融危機に発展する可能性もあるでしょう。

色々と記してきましたが、本シリーズは予測ではなくリスクシナリオですので、過度な懸念は不要です。リスクの存在を頭の片隅に置いておけば十分だと思います。

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密には正確でない場合がありえます。

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塚崎 公義

経済評論家