8月末、消費増税を1か月前に控えて、経産省主導のキャッシュレス決済ポイント還元事業をPRした世耕弘成経産相。ポイント還元が受けられるお店にはこのようなポスターが

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 消費税増税まで残すところ2週間。心の準備はできているだろうか? 何しろ今回は軽減税率が導入されるという点で、過去2回の税率変更と大きく異なる。生活に欠かせない食べ物や飲み物は税率が8%に据え置かれるが、その他は10%に引き上げられる。だが、コンビニのイートインスペースで飲食する場合は10%になるなど、税率の見極めが少々複雑なのだ。

 加えて、10月1日から、キャッシュレス決済なら最大5%をポイント還元してくれる施策もスタートする。つまり、中小小売店で飲み物を購入したら8%の軽減税率適用で、なおかつ5%分のポイント還元が受けられるのだ。

◆増税で家計の負担は年2兆円増

 実は、こうした入り組んだ施策が、景気を一層冷え込ませる可能性をはらんでいるという。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が解説する。

「”年金2000万円不足問題”が6月に噴出してから、駆け込み買いが止まってしまいました。7月の参院選を挟んで増税延期の可能性も少なからずあったほか、軽減税率やポイント還元で増税後の生活費負担は大きく変わらないと錯覚している人も多いのでしょう。そのため、駆け込み需要を取り込めずに、増税に伴う消費の減少だけが小売店や飲食店を直撃する可能性がある。

 それも、キャッシュレス決済のポイント還元事業は来年6月までの9か月限定のため、来年7月以降に再度、消費の落ち込みが発生することも予想されます。還元事業の対象外である大型量販店などは大幅な値引きなどで顧客の獲得に取り組むと言っているので、通常なら消費税増税で物価が上がるはずなのに、価格競争が激化してデフレが進む可能性もある。

 家計にとってはありがたい話かもしれませんが、今回の増税に伴う家計の負担増は4.4兆円。幼児教育の無償化や軽減税率などの支援策を加味しても、毎年2兆円以上の負担増になると試算しています。昨年11月から日本経済は景気後退局面入りの兆しが見えていましたが、今回の増税でGDP成長率は0.7%押し下げられ、完全に景気が冷え込む可能性があります」

◆増税しても税収は増えない?

 増税の悪影響はこれまでにもたびたび指摘されてきたことだが、そもそも税収増にも寄与しないと指摘する専門家もいる。昨年まで安倍首相のブレーンとして内閣官房参与を務めた京都大学教授の藤井聡氏が話す。

「デフレから脱却できていない今の状況で増税すれば、大幅に消費が冷え込むだけでなく、貧困と格差を拡大させ、国の財政も悪化させるでしょう。’14年の5%から8%への増税で消費支出は9.2%も減少しましたが、その落ち込み具合はリーマン・ショックや東日本大震災の影響をも上回るものでした。

 一方で’14年以前は年2兆円以上も増えていた税収が、’14年に増税効果で7兆円増となりましたが、それ以降は年0.8兆円の増加にとどまっています。つまり、中長期的には増税によってかえって税収を減らしてしまったのです」

◆企業業績が落ち込めば給与もカット

 続けて、「今からでも増税を延期すべき」と話す藤井氏。というのも、この10月は最悪のタイミングなのだ。

「働き方改革で労働時間の短縮を図っているため、賃金は減少傾向にあります。9月6日に発表された7月の実質賃金はボーナス減少の影響もあって前年同月比0.9%減でした。残業規制で今後、国民の所得が8.5兆円も減少すると試算しているシンクタンクもあるのです。さらに、来年の東京五輪を控えて建設需要はすでにピークアウト。ここに米中貿易戦争や欧州の景気減速も重なってきており、日本は増税を加えた“四重の危機”に瀕している。

 このような経済状況は、消費税が3%から5%に引き上げられ、アジア通貨危機が起こり、山一證券破綻で金融不安が生じた’97年と似ています。’97年の増税後に年間の自殺者が2万2000人から3万3000人に急増したことを考えると、来年以降の日本がどれだけ悲惨な状況になるのか……。今回の増税で日本が“転落途上国”になるのは間違いないでしょう」