つみたてNISAは、NISA(少額投資非課税制度)から派生した積立方式のNISAです。NISAよりも年間の非課税枠が小さく非課税期間が長いことで、長期的な資産形成に適した制度となっています。また、一定の投資から得た利益が非課税になることも特徴です。それでは、つみたてNISAを使うとどのくらいお得になるのでしょうか。今回は、つみたてNISAとはどのような制度で、どのくらいの節税効果があるのかまとめてみました。

20年後「つみたてNISA」でいくら得? 計算してみた


○つみたてNISAとは

つみたてNISAは、年40万円の非課税投資枠を使って運用ができる税制優遇制度です。通常の投資信託等では運用益に20.315%の税金(所得税15.315%、住民税5%)がかかりますが、つみたてNISAでは、一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益が非課税となるのです。たとえば、10万円の利益が出たとすると、通常なら約2万円が税金で引かれることになりますが、つみたてNISAを使うと、10万円がそのまま利益にできます。つまり、2万円得をするのです。

次に、従来のNISAとつみたてNISAはどのような違いがあるのか、主な点を比較してみましょう。

NISAの特徴>

・非課税期間……最長5年

・非課税投資枠……年120万円

・購入可能期間……2014年〜2023年

・対象商品……上場株式、上場投資信託(ETF)、株式投資信託

・購入方法……積立または一括購入

<つみたてNISAの特徴>

・非課税期間……最長20年

・非課税投資枠……年40万円

・購入可能期間……2018年〜2037年

・対象商品……一定の要件を満たす公募株式投資信託、ETF

・購入方法……積立のみ

つみたてNISAは、NISAと比べて長期投資に適しており、積立方式で購入することで、購入のタイミングが分散され投資リスクを軽減することができます。また、つみたてNISAの年間の非課税上限枠は40万円で、毎月最大3万3,000円の積立投資ができますが、毎月1万円や数千円から購入できる証券会社もあり、中には最低投資金額が100円から設定できるところもあります。少額投資が可能で自動的に積立投資ができるため、初心者や資金が少ない人でも気軽に運用を始めることができるのです。

同じく非課税の恩恵を受けられる税制優遇制度として、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」がありますが、iDeCoが原則として60歳まで引き出し不可であるのに対し、つみたてNISAは引き出し制限がなく、いつでも払い戻しができます。老後資金はiDeCo、ライフイベントに使う費用はつみたてNISAというように使い分けて運用もできますし、ご自身の年齢等を踏まえ、つみたてNISAを老後資金作りに活用することもできます。万が一の時には引き出せるようにしておきたいという人は、つみたてNISAを選ぶか、もしくはiDeCoと併用するのも良いでしょう(NISAとつみたてNISAの併用は不可)。

○つみたてNISAを利用するといくら得するのか

では、つみたてNISAで積立投資をすると、いくら得できるのでしょうか。つみたてNISAを利用し、毎月の積立額や想定する年率を変えた6つのパターンで20年間運用したと仮定した時のシミュレーション結果(※1)を見てみましょう。

<パターン1:毎月の積立額……30,000円、想定する年率……5%>

・累計積立額……7,200,000円

・運用益(増えた金額)……5,023,733円

・非課税になる金額……1,020,571円

・最終金額(累計積立額+運用益)(※2)……12,223,733円

<パターン2:毎月の積立額……30,000円、想定する年率……3%>

・累計積立額……7,200,000円

・運用益(増えた金額)……2,629,817円

・非課税になる金額……534,247円

・最終金額(累計積立額+運用益)……9,829,817円

<パターン3:毎月の積立額……10,000円、想定する年率……5%>

・累計積立額……2,400,000円

・運用益(増えた金額)……1,674,578円

・非課税になる金額……340,191円

・最終金額(累計積立額+運用益)……4,074,578円

<パターン4:毎月の積立額……10,000円、想定する年率……3%>

・累計積立額……2,400,000円

・運用益(増えた金額)……876,606円

・非課税になる金額……178,083円

・最終金額(累計積立額+運用益)……3,276,606円

<パターン5:毎月の積立額……5,000円、想定する年率……5%>

・累計積立額……1,200,000円

・運用益(増えた金額)……837,289円

・非課税になる金額……170,095円

・最終金額(累計積立額+運用益)……2,037,289円

<パターン6:毎月の積立額……5,000円、想定する年率……3%>

・累計積立額……1,200,000円

・運用益(増えた金額)……438,303円

・非課税になる金額……89,041円

・最終金額(累計積立額+運用益)……1,638,303円

ある程度のリスクを取りリターンを期待して年率を5%と想定し、毎月3万円をつみたてNISAで運用すると、20年間ではなんと100万円以上も税金を得する計算になりました。想定する年率を3%とした場合も、非課税のメリットは50万円以上にもなります。積立額をぐっと落とし、毎月5,000円にしても、年率5%では17万円以上、年率3%では約9万円の税金を抑えられることになります。あくまでシミュレーションであり、確実にこれと同じ結果が得られる保証はありませんが、つみたてNISAの節税効果を実感できたのではないでしょうか。

※1.カブドットコム証券のシミュレーションを用いて計算

※2.1ヶ月に1回想定した年率で積立期間まで再投資した複利で計算した金額

○つみたてNISAで賢く節税しよう

実際に試算してみると、つみたてNISAを利用することで節税できる金額は、予想以上に大きいと感じるものです。たとえ毎月投資に使える金額が小さくても、コツコツと積立を続けていくだけでこれだけ得できるのですから、ぜひつみたてNISAを活用してみたいですよね。もちろん、試算と同じ結果になるとは限りませんが、せっかくの税制優遇制度です。資産形成に賢く活用していきましょう。



○武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中