早実・清宮幸太郎内野手(写真はU-18野球W杯時のもの)【写真:富樫重太】

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減少した打ち損じ、怪物・清宮に「進化の秋」

 この夏の話題をさらった早実の怪物ルーキー・清宮幸太郎が「進化の秋」を送っている。

 東京都大会ブロック予選、初戦の東農大一戦の2打席連発を含め2試合3本塁打を放った。甲子園以来となる全国の舞台となった和歌山国体は初戦で鳥羽(京都)に敗れものの、二塁打を含む4打数2安打。さすが、というべき存在感を示した。

 この秋、16歳が見せている凄さの一つが「打ち損じ」の少なさだろう。

 都大会ブロック予選で対戦した相手は、ともにコールドで圧倒したように力の差がある相手だった。しかし、その中でも夏から引き続き3番に座っている清宮は、6打数5安打9打点。本塁打にした3発を含め、甘い球を逃さずに仕留めている。

 ポテンヒットのみの3打数1安打に終わった初戦の都立校・東大和南戦をはじめ、6試合でノーアーチだった夏の西東京大会と比較しても、いかにミスショットが減ってきているかが見てとれる。

 あまりの大活躍に、野球関係者の間では「清宮だけ都大会では金属バットの使用を禁止してはどうか」という冗談が飛び交うほどの状態となった。

清宮に訪れた2つの「かけがえのない経験」

 なぜ、ここまでの進化を遂げたのか。その背景に「ひと夏の経験」が大きく作用しているようだ。

 甲子園で1年生としては史上初の2戦連発を放つなど5試合を戦い、準決勝では今秋ドラフト候補に挙がる仙台育英(宮城)の右腕・佐藤世那と対戦。甲子園という高校野球の聖地で全国トップレベルの野球を体感した。

 さらに、清宮にとって大きかったのがU―18ワールドカップの経験だ。

 18歳以下の世界一を目指す高校日本代表に唯一、1年生として選出され、出場した8試合で4番に座った。しかし、9打席連続無安打を喫するなど27打数6安打、打率.222で0本塁打2打点。結果こそ振るわなかったが、2つの「かけがえのない経験」をした。

 一つは木製バットへの対応だ。金属バットより芯が小さく、苦しんでいたが、コンパクトに確実にボールをとらえようとする意識が芽生えていた。

心に生じた「余裕」、目標の高校80発に届くか

 さらに、もう一つは世界レベルのボールを体感したことだ。

 例えば、決勝で戦った米国の先発左腕・プラッドは清宮と同じ16歳ながら、140キロ台の直球に加え、消えるようにして落ちるチェンジアップで組み立て、7回途中で9三振を奪い、清宮を含め、日本打線を圧倒。その球筋は、日本の高校野球では到底お目にかかれないものだった。

 チームはV逸し、一部では4番として責任を問う声もあったが、清宮は苦い経験を決して無駄にすることはなかった。その証拠に、都大会でこのようにコメントしている。

「一番大きかったのはこの夏、たくさんのいいピッチャーの方々と対戦できたこと。その中でチェンジアップに苦労したり、インコースを直球で攻められて打ち取られたりした。甲子園、世界大会を経て、追い込まれても臆することなく、打席での余裕というか、その辺の成長はすごく感じた」

 甲子園を戦って、さらに世界レベルを体感した。普通の高校1年生では到底、経験することのできない夏を過ごしたことで、技術面でのレベルアップ、メンタル面での余裕を生み出しているようだった。

 とはいえ、清宮にはあと4回もの甲子園出場のチャンスが残されている。高校での目標本塁打数について「80本くらいは打ちたい」と語っていた怪物。来春センバツを目指し、今月から始まる都大会本戦でも、進化した清宮の勢いを止めることは、容易ではないだろう。