ヤクルトに現れたサブマリン 57年ぶりの開幕5戦5勝、山中はなぜ勝てる?
優勝争うチームに29歳遅咲きの救世主
この男が投げれば、なぜか勝つ。ヤクルト・山中浩史は今季初登板でプロ初勝利を挙げた6月12日の西武戦(西武プリンス)から、何と5戦全勝。球団では、開幕からの5戦5勝は、国鉄時代だった1958年の金田正一以来、57年ぶりだ。
「こんな僕が、そんな方と肩を並べていいのかなと思いますが、そこは気にせず、チームの勝利に貢献することだけを考えた結果です」
29歳の遅咲きのサブマリン右腕が、優勝を争うチームの救世主となっている。
Honda熊本から2012年のドラフト6位でソフトバンクに入団。27歳のオールドルーキーはアンダースローを武器に、いきなり開幕ローテーションをつかんだが、勝利を挙げられないまま降格。2年目の昨年7月に川島慶三、日高亮との交換トレードで、新垣渚と共にヤクルトに加入した。
球速は120キロ台中盤、「いかに球を遅く見せるか」
昨季は中継ぎをやっていたが、今季は1年目以来となる先発に挑戦。そこでテーマとして設定したのが、「いかに球を遅く見せるか」だ。
現代は150キロ台の直球をバンバン投げ込む速球全盛の時代。しかし、山中自身の球速は120キロ台中盤。スライダーやシンカーを織り交ぜながら緩急もつけるが、もう一つ変えているのは投球動作に入ってからリリースまでの時間だ。「ボールを投げる間を大事にしています」と言うように、フォームを少し遅らせて投げたり、リリースの位置を微妙に変化させたり、打者によって工夫して投げている。
そのために大事にしているのが「おしり」のトレーニング。フォームで強弱をつけるためには、下半身でしっかり粘ることが必要になる。シーズン中も、チューブを太ももにつけてステップを踏んだり、スクワットなどで強化している。「力の入れ具合が違います。元々、ももで合わせないと、ジーンズは選べなかったですが、さらに大きくなりました」と手応えを感じている。
山中が勝てる理由はもう一つある。それはテンポの良さ、リズムだ。本人が「そこは意識しています」と言うように、ポンポン投げ込んでいくため、野手は守備の時間が短くなり、打撃により集中することができる。
真中監督「テンポは影響する」
それを実証するデータがある。山中が投げたときの援護率は7・64。チーム内の他の投手(石川4・63、小川4・32、成瀬3・54、新垣2・60)と比べても、その差は歴然だ。
雄平は「テンポがいいから、こっちは攻撃の時間が長くなる。相手は守備の時間が増えるし、攻撃の準備をする時間が足らなくなると思います」とその効果を明かす。真中監督も「テンポは影響すると思います。無駄な四球も少ないし、本当によく投げてくれている」と信頼を置いている。
当初はローテの谷間を埋める存在だったが、後半戦に入り、先発ローテの一角に昇格。チームは7日からの中日3連戦(ナゴヤD)で、3試合とも先発が4回で降板。先発陣の強化が課題になっている。
「先発陣が弱いと言われているのは分かっています。目の前の打者1人ずつ打ち取って、少しでも長いイニングを投げていきたい」
ヤクルトに現れたサブマリンが、チームを優勝へと浮上させる。

