W杯イヤーの2014年、その言動に最も注目が集まる男。それが本田圭佑だ。

 ブラジルW杯出場を決めた翌日、日本代表の記者会見での本田圭佑の発言が話題を呼んだ。今後の課題を聞かれて「シンプルに言えば個だと思います」と切り出した本田は、川島、今野、長友、香川らチームメイトの名前を次々とあげ、"課題"を具体的に述べ立てた。淡々とした口調ではあったが、"お祝いムード"に包まれていた会見場の空気は一気に張り詰めた。

 その後の日本代表はコンフェデレーションズ杯で3戦全敗。親善試合でもウルグアイやセルビアといった強豪に敗戦を続け、本田の危機感が正当だったことが証明された。11月の欧州遠征ではオランダに引き分け、ベルギーに勝利と、ようやく結果を出した日本だが、本田は手綱を緩めない。「良い部分も出たが課題も出た。何が良くて何が悪かったかは冷静に分析したい」「(W杯まで)所属クラブに戻って個人のレベルを上げていくことが必要だと思います」......。それは一選手というより監督のコメントのようでもあった。

 それらの様子を見て、ある選手を思い出した人も多かったのではないか。かつての日本代表、中田英寿のことである。

「おれには『胸を借りる』なんて考えはぜんぜんないよ。サッカーはルールに従い、11人で戦う。条件は皆同じだ。だからこそ、ピッチでは何が起こるかわからない。初出場の日本だって優勝する可能性はゼロじゃないんだよ」(98年フランスW杯を前に)

「決勝リーグに進んだことは大きなステップだと思うよ。でも、トルコ戦は、不完全燃焼のまま終わってしまった。90分を戦った後、倒れて動けないとか、足がつって歩けないとか、そこまでやっていたかと言えば、答えはノー。最後の一滴までエネルギーを使い果たして戦えたとは、到底思えなかったんだ」(02年日韓W杯の後)

「このチームには熱意というものがない。いつも親善試合と一緒じゃないか! こんなゲームがもう一度でもあったら、ワールドカップなんて絶対にない」(04年、W杯予選シンガポール戦に苦戦して)

「僕にとって予選通過はあくまで通過点。このチームでは、本大会で戦って勝ち抜ける力はまだないと思います。この1年で個人個人が伸びてみんながレベルアップして、勝ち抜けるチームになることが必要。(そうすれば)3度目のワールドカップで初めて前へ行ける」(05年、ドイツW杯出場を決めて)

 日本が初めてW杯に出場した98年以降、ある時は強気に、またある時は危機感をあらわにしながら、チームに緊張感を与えてきたのが中田英寿だった。

 中田は98年W杯が終わるとセリエAペルージャに移籍。現在に至る日本人選手の海外クラブ移籍の流れを作ったとも言える存在だった。自国開催のため予選のなかった当時の日本代表は強豪国と対戦を重ねたが、チームの中心となっていたのが中田だった。一時期のトルシエジャパンは、実質的に中田ジャパンと言ってもいいようなチームだった。

「中田の選手としてのピークは2001年。ローマで優勝を経験し、まだ数少なかった海外組の中でも別格で、代表の中でもカリスマ性があった。一時の日本代表は何でもかんでも中田にボールを集めるようになっていました」と言うのはサッカーライターの杉山茂樹氏だが、そこには彼のプレイスタイルが関係するという。

「頼りがいがある。ひと言でいえば"倒れない"。肉体的な強さ、幹の太さのようなものがあり、キープ力があってドリブルやキックに重みがある。簡単にいえば強いシュートが打てる。日本には上手い選手は多いが、こういうタイプの選手が非常に少ないんです。相手が強くなればなるほど、そういう選手への依存度は高くなる。そいう意味では、現在の代表で本田が果たしている役割も似ています」

 もちろん相違点もある。例えば海外でプレイする選手がこれだけ増えた現在、当時の中田が持っていた、格上のクラブに所属することからくるカリスマ性のようなものは、もう本田にはないはすだ。だが、「代表チーム内での依存度は当時の中田より現在の本田のほうが高いのではないか」と、杉山氏は語る。

「理由のひとつは中田が右利きなのに対して、本田は左利きだから。本田は残り9人と違う角度でプレイすることができるんです。中田の場合は"非力な中田"に代えることもできたが、本田には代わりがいないということです。

 しかも本田の特徴は、いかにも左利き、という左利きではないこと。ボールを常に身体の中心に置いてプレイしているから、漠然と見ていたら右利きか左利きかよくわかりません。だから最初の一歩でどちらに行くかがわからず、ボールをとられにくいし、右サイドで縦に抜いていくというようなこともできる。これが攻撃の推進力につながるんです。ロッベンやラウルがそうなのですが、こういうタイプの日本人レフティは非常に少ない。二重の意味で、今の日本代表には本田の代わりがいないのです」

 そういえば、帰国したときの成田空港での注目のされ方や、独特のファッションへのこだわり、群れないイメージなど、ふたりにはピッチ外でも似たムードがある。南アフリカW杯の直前、テレビの番組で初めて対談した際には「思った通りの人だった」「似てるな」と、お互いの印象を語っていた。かつてふたりにインタビューをしたことのある杉山氏は、それぞれから受けた印象をこう語った。

「共通点はおしゃれなこと。自分をよく見せようという意識が強いとも言える。『ストレートにモノを言う』と言われますが、基本的にはお喋りが好きなんだと思います。ただ、中田に影があるように見えたのは、そういう自分の立ち位置に多少ストレスを感じていたからではないでしょうか。本田にストレスがあるようには見えません。明るいのは大阪の庶民性みたいなものがあるからかもしれませんね」

 ミラン入りで再びその周辺が騒がしくなりつつある本田圭佑。これからの半年、その言動からやはり目が離せそうもない。

スポルティーバ編集部●構成 text by Sportiva