ベテランの専門医も現場で実践…発達障害の子をぐんぐん伸ばす「ほめ方」3つのポイント
落ち着けない、こだわりを抑えられない、気持ちを切り替えられない……発達障害を抱える子には「できない」ことが多く、保護者の悩み・教師の負担となっている。“いずれはきちんと自立してほしい”そう考えると少しでも「できること」を増やしておきたいところだが、どうすればいいのか。発達障害の臨床に長年携わる医師2人が総力を挙げてつくった著書『発達障害を抱える子どもの「できる!」を増やす作戦事典』から、とっておきの知恵をご紹介する。
【前編を読む】発達障害の子の自立に必要なのはこれだ! 小児科専門医が教える“身に付けさせてあげたい「4つの力」”
まずは言動を適切に評価するところから
小児科医として外来診療を担当していると、診察室で子どものご家族から、日々
「家庭や幼稚園・保育園、学校での子どもの行動」
「対人関係での困りごと」
「知的発達や学習面についての心配」
といった、発達特性に関する相談がたくさん寄せられます。
わが子の抱えている困難が、年齢とともにいずれは社会に順応できる特性であるのか、専門職の支援が必要な特性であるのか、たくさんのご家族が案じていらっしゃいます。
発達検査などを経て、障害特性を抱えていることが明らかになると、家族の不安はさらに大きくなりますが、そのような不安を解消するための手がかりのひとつとなればと思い、新たに執筆した本のなかから今回も記事をお贈りします。
発達障害を抱えた子どもの自尊感情を損なわず上手に対応するためには、まず子どもの言動をしっかりと観察し、的確に分析できるようになる必要があります。
世界的によく用いられている療育プログラムの基本的な考え方から、「観察」「分析」そして「上手な対応」それぞれの基本を学びましょう。
観察・分析で役立つ「ABC分析」
ABC 分析は、人の行動をA (Antecedent:先行条件)、B(Behavior:行動)、C(Consequence:結果)の3つの要素にわけて観察・分析する方法です。宿題の場面を例に、A・B・C それぞれの関わりを説明した図を以下に掲げました。
この図から、
●ほめてはげませば子どもの望ましい行動が増える
●皮肉、いやみ、𠮟るなど嫌なことを言われると望ましい行動は減る
ということがわかっていただけるのではないかと思います。ここから、子どもに望ましい行動を身につけてもらううえで「ほめる」という対応がいかに大切か理解できるのではないでしょうか。
子どもをほめるときには、以下の3つがポイントになります。例とともに挙げます。
【ほめ方のポイント】
★ 望ましいことをしていたら、その場で即ほめる
「玄関のお掃除ありがとう」
★子どものしている望ましい行動を具体的に言葉にする
「明日の持ち物、用意してるんだね」
★子どもが続けていることは継続的に評価する
「今日も自分からお手伝いしてくれたね」
「ペアレント・トレーニング」に学ぶ上手な対応
ペアレント・トレーニング(以下ペアトレ)は、ADHD を抱える子どもを対象に始められた療育プログラムですが、ASD に対しても応用されている、汎用性のある手法です。
ほめるタイミングや指示の出し方、生活環境の調整など、親が具体的な療育スキルを獲得し実践することで、子どもの行動を変化させることを目指しています(中田洋二郎『発達障害のペアレント・トレーニング簡易版 プログラムの進め方と運営のコツ』中央法規出版)。
ペアトレでは子どもの行動を下のように3つのタイプに分類しますが、この捉え方を大人がまず身につけることが、プログラムの柱を成す取り組み課題のひとつとなっています。
なお、ここでいう「行動」が、目で見たり耳で聞いたりできる具体的な行動を指している点には注意が必要です。たとえば「この子は友達にやさしくできている」「この子は乱暴だ」というのは大まかな印象であり、行動には含まれません。
見える/聞こえる/数えられる具体的な個々の動きこそが行動であり、タイプに応じて次のような対応をします。
【行動別 望ましい対応】
●好ましい行動に対して→肯定的な注目を与える
●好ましくない行動に対して→おもに3つの対応がある
●許しがたい行動に対して→警告・制限を与える
次回はこの3つについて解説します。
