介護施設に「スキマバイト」として潜入して痛感…現場の「強烈な人手不足」と「セキュリティ対策の杜撰さ」
現在、介護現場は出口の見えない慢性的な人手不足で疲弊している。厚生労働省の推計によれば、不足している介護職員数は約25万人に上る。この絶望的な状況を背景に、ある「救世主」が急速に勢力を広げている。
それが、スキマ時間で働きたい個人と介護施設をマッチングするサービスだ。数年前から複数の事業者が立ち上げていて、介護の素人が、すぐに特養などで働けるという。そこで実態を探るべく、介護系マッチングサービスを使い、介護現場へと潜入した。
【前編を読む】介護施設で「スキマバイト」が急速に拡大…実際にバイトとして潜入した記者が覚えた「大きな戸惑い」
不徹底なセキュリティ管理
不在の部屋であっても、入居者あるいは面会者の私物だと思われる財布やバッグなどが、置きっぱなしになっているケースもあった。当然、室内に防犯カメラは設置されていない。プライバシー面だけでなく、セキュリティ面での対応も追いついていないのは明らかだった。この杜撰さは、記者が訪問した複数の施設に共通する。
すべての部屋を回りきることなく、シーツを替えている間に2時間のバイトが終了。手渡しで現金2000円の報酬を受け取って帰途についた。
次にマッチングしたのは千葉県北東部にある特養だ。
勤務時間は18時から20時。到着早々、職員から「最近は人がいなくて本当に大変なんです。来てくださって助かりました」「今日は貴方がいるので、私たちの負担が減ります。本当にありがとう」と何度も感謝されたのが忘れられない。
それからはキッチンで黙々と皿洗いをしていたのだが、共用スペースと近いからか入居者からは物珍しい目で見られる。夕方過ぎになって、見ず知らずの人間が施設に入ってきたのだから当然だろう。
認知症の入居者がやってきて……
すると、認知症と思わしき入居者がポロポロと涙を流しながら、こう訴えてきた。
「これから私はどこへ行けばいいですか?」
おそらく自分の部屋がわからなくなったのだろう。異変を察知した職員が近寄ってきて居室へと連れて行った。ところが、その後に何度も記者の近くにやってきて同じ質問を繰り返してくる。近くに職員がいなかったため、やむをえず部屋まで案内した。
ここで暴れられたら、どう対応すればいいのかわからない。そんな事態にはならなかったが、「スキマバイト」という立場では、入居者を誘導するだけでも緊張感が走る。
同時に、スキルと経験のある人材が配置されることの重要性を感じた。
在宅介護エキスパート協会代表の渋澤和世氏はこう語る。
「私が知る限りの特養だと、どこも外部への安全対策は手探りな状態です。ただ、マッチングサービスに頼らざるを得ないほど、現場では人手が足りていません。じきに、どの施設でも不可欠なサービスになるとは思っています」
身元確認は身分証の写真だけ。あなたやあなたの家族が入る施設でも、そんなバイトが働いているかもしれない。
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「週刊現代」2026年6月8日号より
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