打ち上げ花火のような美しさ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した星団「ウェスタールンド2」
こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した星団「Westerlund 2(ウェスタールンド2)」。りゅうこつ座の方向、地球から約2万光年先にあります。

Westerlund 2は、「Gum 29」と呼ばれる星形成領域(ガスと塵の集まりである分子雲から星が新たに生まれている場所)の中心部に位置しています。宇宙のスケールでは非常に若い、誕生から約200万年しか経っていないこの星団には、およそ3000個の星々が密集しています。
ハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ25周年を記念して公開されたこの画像は、「ACS(掃天観測用高性能カメラ)」と「WFC3(広視野カメラ3)」で取得した可視光線と近赤外線のデータを組み合わせて作成されました。
色鮮やかなガスと無数の星々が入り混じるこの画像を、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)は夜空に打ち上げられた巨大な花火にたとえています。
大質量星が彫り刻むダイナミックな風景
ESAによると、星団の中心部には太陽の最大100倍もの質量を持つ、天の川銀河でも有数の巨大で高温の星々が存在しています。これらの大質量星から放射される強烈な紫外線や強力な星風(星から吹き出すプラズマの風)は、周囲のガスや塵を猛烈な勢いで吹き飛ばしています。
“星のゆりかご”とも呼ばれる星形成領域の内部は厚い塵にさえぎられがちですが、塵に邪魔されにくい赤外線でも観測できるハッブル宇宙望遠鏡は、その様子を鮮明に捉えています。
画像内に見られる柱のような構造は、この強烈な風による侵食に耐え抜いた、ガスと塵の高密度な塊です。また、押し流されたガスが周囲の壁にぶつかることで新たな星の誕生が促されており、生まれたばかりの星々の姿が数多くの赤い点として確認できます。
惑星が育つには過酷な中心部
美しく輝くウェスタールンド2ですが、そこは惑星の誕生にとって非常に過酷な環境でもあります。2020年に発表されたハッブル宇宙望遠鏡による3年間の観測結果によれば、星団の中心近くに位置する星々の周りには、将来的に惑星の材料となる大きな塵の雲が存在しない(すなわち惑星を形成できる状態ではない)ことが判明しました。
その理由として、巨大星からの強烈な放射が、近くにある星々の円盤から塵を蒸発させて吹き飛ばしたり、成分を変化させたりしているからだと考えられています。一方で、中心部から離れた外縁部の星々には惑星を形成できるだけの円盤が残っており、巨大星との「距離」が惑星系の生き残りに大きく影響していることがわかっています。
ウェッブ宇宙望遠鏡による最新の視点
Westerlund 2への探求は現在も続いています。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測では、木星の質量の約10倍程度しかない小さな天体を含む、褐色矮星(恒星と惑星の中間的な性質を持つ天体)の集団が、この星団で初めて詳細に捉えられました。
さらに、様々な進化段階にある円盤を持つ星も数百個発見されており、最先端の観測装置によって次々と新たなデータがもたらされることで、過酷な環境下で星や惑星がどのように形成されていくのか、その謎が少しずつ解き明かされつつあります。
冒頭の画像はNASAやESAから2015年4月23日付で公開されました。
本記事は2020年6月1日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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