死神シンガー・杉本ラララ「来ないと地獄に墜ちるわよ」邪悪な口調も、あふれ出る優しさの源は心病んだ過去
【ききみみ 音楽ハンター/杉本ラララ・第4回(最終回)】杉本ラララは、長年の地道な活動からは想像もつかないスピードで出世を遂げている。ブレークの過程は過去4回の連載に掲載した通りだ。SNSで火が付いてから環境は一変。昨年6月まで数十人の観客を前に歌っていた真面目で心優しきシンガー・ソングライターが、今年10月18日にはキャパ800人超の大阪・BIGCAT、12月9日には自身最大となる約2000人収容の東京・Shibuya LOVEZでワンマンライブを開催する。
5月13日、メジャーレーベルのソニーから全4曲収録のEP「死ぬとき笑えるように」を発売。死神を名乗りながら「山青し」では前向きに生きることへの決意や覚悟、「サイダー」ではさわやかな愛を歌い上げる。杉本いわく「死神界では異端の存在だ。“アイツは何やってんだ!生きることを推奨するんじゃない!命を奪う方だろ”って冥界のネットで叩かれている」そうだ。
過去曲でも弱った人々に寄り添う歌詞が印象に残る。「私は人間時代、けっこう生きづらさを感じながら暮らしてきた。メンタルも強くなかった。そんな過去の自分に向けて無意識に書いてるところはあるんじゃないかな。こういうこと言われたらうれしかっただろうなあ、とか」と語った。
楽曲「ゴライコー」歌唱前のMCで「病んでる俺たち最高だ!」と叫ぶショート動画はSNSで大きな反響を呼んだ。「自分自身が鬱(うつ)とかで苦しんだ時に掛けてもらった言葉が、とても心に残っていて。それを曲にしようと作ったのがゴライコーだ」と誕生秘話を明かし、「だから“病んでる俺たち最高だ!”ってMCも、まさに本人が病んでたからね」。自ら苦しんだ経験が生んだ言葉の説得力だった。
「やんごとなき」など古風な日本語も目立つ。今作では3曲目のタイトル「sakura films」以外、歌詞にアルファベットが1文字も出て来ない。「それは単純に英語が苦手だからだ。ほんとはめちゃくちゃ使いたい」と意外な回答。「今は一生懸命デュオリンゴ(言語学習アプリ)で毎日30分、勉強を頑張っている。いつか世界に発信できる英語の曲を書いて、英語のMCで爆笑をかっさらいたいな」とぶち上げた。
飛ぶ鳥を落とす勢いだが、昔から言い続けている野望はまだ叶えられていない。日本武道館での単独公演だ。「日本音楽界のランドマーク的な存在だし、あこがれのさだまさし氏やビートルズも立った場所」を見すえる。「バンド時代から軽い気持ちで言ってるうちに、自分の中で熱くなってきちゃって。もう言霊だな…そこに向かわないといけない気がどんどんしてくる。気づけば、ファンも“行こう、行こう”って。もう連れて行くしかないだろう」。今ではファンの思いも背負っている。
ブレーク後はライブ会場の規模も急激に大きくなり、チケットの売れ行きも絶好調。武道館公演実現も近いのではないか。「おぼろげだけど見えてきたかな。でも調子には乗ってないぞ。見切りでやって、客席ガラガラじゃ意味がない」とあくまで冷静だ。「私にはトークの代表作はたくさんあるが、曲での代表作がまだない」と自虐発言で笑わせた。「武道館に立つ人間たちには代表曲がある。初見の人が“ラララと言えばあの曲だね”っていう曲が世に打ち出せたら、行けるだろう。もうちょっとだけ待っててくれ」。
武道館に立った菅田将暉から「すごい」と推される存在になった。きっと遠くない未来に夢を叶えるだろう。武道館には魔物が棲むとも言われるが、「魔物vs死神か。それも見ものだな。楽しみにしていろ」と期待させた。
インタビューの最後、まだ杉本ラララを知らない人もいるであろう当コラム読者にメッセージを求めた。「そんなヤツがいるのか!教育が足りないな」とお叱りを受けたが、「生きていくことはやっぱり大変だ。ましてや年齢を重ねていくと体も言うこと聞かなくなってくる。そんな中でどう人生を楽しく生きていくか。そいつらの人生に私がひと役買えたらいいなと思っている」と優しきお言葉!
最後は人の良さを隠すように?邪悪な口調で「ライブを見に来なさい、そしてSNSもいっぱい投稿しているから見に来てくれ。来ないと“地獄に墜ちるわよ”!」。死神キャラにはもってこい?の今話題のフレーズで締めくくった。(終) (萩原 可奈)
