新型3代目『マツダCX-5』に異変あり 新しい動的質感の方向性は「らしくない」? 多くを背負って選んだ答えとは【渡辺敏史が検証】
マツダ車の4台に1台はCX-5という状況
2000年代の半ばからマツダが取り組み始めた、クルマづくりの革新。それはラインナップの全てを『一括企画』することや、そのために全モデルに設計思想の横櫛を通し開発時の約束事を統一する『コモンアーキテクチャー』の採用、そうすることでシミュレーションのような机上論が十全に機能する『モデルベース開発』と、この3つのメソッドを柱としていた。
【画像】多くのものを背負って登場!3代目となる新型『マツダCX-5』 全122枚
それを世に打って出たのが『スカイアクティブテクノロジー』であり、『魂動デザイン』と共に市販車へ初めて反映されたのが2012年にデビューした初代『マツダCX-5』だ。

5月21日に日本でも発売開始された3代目となる新型『マツダCX-5』。 平井大介
その後、2017年には2代目へとバトンタッチ。マツダの看板車種として市場で存在感を示してきた。グローバル累計は500万台以上、国内累計は40万台以上販売と、直近でも日本のみならず、他のリージョンでも販売構成の1/4、つまりマツダ車の4台に1台はCX-5という状況が続いている。
日本国内ではCX-60、CX-80が販売されているFR系、いわゆる『ラージプラットフォーム』へのバトンタッチやブランドの上位シフトが停滞していることは明らかである以上、そんなCX-5に退かれてもらっては方々が困るわけで、3代目はそういう事情も背負いながら開発された。
ゆえに一番に大事になるのは、前述のマツダにとって膨大な既納客が、お世辞抜きに完成度の高い2代目を前にしても尚どんな不満を抱いているか、その徹底的なネガ潰しにあったといっても過言ではない。
Cセグメント級SUVのど真ん中
その数値的な成果は車格にみられる。全長は前型比で実に115mm長くなり4690mmと、現行のトヨタRAV4とホンダCR-Vの間に割って入る。これによって、世界的視点でみても日本車の牙城ともいえるCセグメント級SUVのど真ん中に収まった。
一方でホイールベースも115mm伸びて2815mmと、ライバルに比べれば俄然長い。つまり伸長分はそのまま後席居住性や荷室容量の拡大に結びついている。実際、後席に座ると個人的にはクラスベストだと思っていたCR-Vも凌駕するほどの広々とした空間が広がっていた。

全長は前型比+115mmの4690mm、ホイールベースも+115mmの2815mmとなった。 平井大介
荷室も長さや高さ、開口部形状などが改善されており、積める量だけでなく積みやすさも改善されている。折り畳んだベビーカーが縦積みでも収まるようになったというマツダ側の説明からは、ユーザークリニックによる徹底した不満の洗い出しがうかがえた。
恐らくライバルと互角以上の車室空間を得ることになっただろう新しいCX-5だが、失ったものもある。それは初代からの売れ筋でもあった2.2L直列4気筒ディーゼルユニットだ。
最終的には200ps/450Nmのハイアウトプットを実現、先代でも長きに渡って好調を維持した販売を支える原動力となっていた。新型はガソリンのみになるという噂が早くから巡ったこともあり、それが先代の駆け込み需要に繋がったという話も嘘ではないはずだ。
ディーゼルは居場所を追われるばかり
ディーゼルがラインナップから落ちた背景には、間違いなくユーロ7の影響があるだろう。タイヤやブレーキのダストさえ管理しなければならない制限下となるならば、ディーゼルは居場所を追われるばかりである。
それこそ元々は欧州の勝ち筋だったというのに、政治のイニシアチブが環境派に傾けば一気に我を通すことにもなるわけで、幾ばくかのエミッションと引き換えて得られる強力なCO2削減のソリューションは今や風前の灯だ。その欧州市場で古くから少なからぬ票田を持つマツダが、そこに軸足を置いていたことは責めようがない。

パワーユニットは2.5L直4気筒+モーターのマイルドハイブリッド。ディーゼルは用意されない。 平井大介
というわけで、新型CX-5の主力ユニットとなるのは、2.5L直列4気筒のガソリンユニットに6.5ps/60.5Nmのモーターを付与したマイルドハイブリッド(MHEV)となる。
システムは12Vで構成されており駆動力に大きな貢献は望めない、文字どおりのマイルドだが、マツダとしてはディーゼルに代替する高効率ユニットは来年にこのCX-5への搭載を控える『スカイアクティブZ』を充てており、そちらには高電圧、高出力のモーター駆動アシストが採用される可能性もありそうだ。
整合性が見いだせないタッチパネル
操作系のインターフェース及びインフォテインメントは中国や欧州向けのBEVとなる『EZ-6』で初採用された、中央の大型ディスプレイを軸とするものに改められた。法規対応もあるだろうが、デフロスターなど視界に直結するものがハザードスイッチの周りに置いてあることは評価できる。
でも、他のファンクションも出来れば表にしっかりと残して欲しかった。

新型のインターフェースは、中央の大型ディスプレイを軸とするものに改められた。 平井大介
もはや独立した物理スイッチを置くことは意匠のみならず、コスト配分的に贅沢でもあるという。そこにきての地理的情勢云々を鑑みれば、機能設定はますますタッチパネルに集約したくもなるだろうが、マツダが散々喧伝してきた0次安全をはじめとするクルマ作りのフィロソフィとそれとはやはり整合性が見いだせない。
高速域になると力不足ぶりが伝わってくる
先代の2Lガソリンを超える燃費性能を実現したという2.5Lのパワーユニットは、大きくなった車体を低回転域からググッとトルクで押し出しているという手応えがある。
タウンスピードでは60Nm級の小さなモーターも要所で健気に黒子に徹してくれているのだろう。エンジン側の回転感自体も軽やかで、中速域の加速などではよく出来たガソリン車の伸びやかさが味わえる。
しかし、さすがにパワーがものをいう高速域になると力不足ぶりが伝わってくるのも事実だ。例えば120km/hレンジでの加減速では、エンジンの唸りの割に速度が乗らないというもどかしさを感じるかもしれない。
ホイールベースが一気に伸びたことで気になるところといえば、先代の美点だった旋回姿勢からも運転実感を伝えてくるニュートラルなハンドリングだが、着座位置と後軸位置との関係からか、状況によっては前側の動きに対して後ろ側の動きに僅かな待ちが感じられる場面もなくはない。でもそれはSUVらしい大らかさとしてむしろ美点に捉えることも出来る類のものだ。
先代の弱点を徹底的に潰すことに留意
しかし、新型CX-5ではそのハンドリングで応答の漫然さを抑えることを強く意識しすぎたツケだろうか、『走る・曲がる・停まる』の三要素が繋がりにくくなったことの方が気になった。『反応の唐突さを極力廃した正確なインターフェースを手綱とする手の内感』がマツダのクルマらしさだとすれば、先代はその頂点的な位置づけにあったと思う。
ゆえに身内のラージプラットフォームにも劣らない商品力が維持できたし、ディーゼルだけではないチャームポイントとして、数多の強力なライバルに伍することも出来ていた。

スペースが拡大した後部座席。価格は330万円〜447万1500円、国内の月間販売計画台数2000台。
そういう感想をエンジニアにぶつけると、新型の狙いとしてはやはり先代の弱点を徹底的に潰すことに留意したという。その中で、マツダ車全般で指摘されてきた乗り心地の粗さの改善にも着手し、CX-5ではマツダの新しい動的質感の方向性にトライしているとのことだ。
ちなみに全国の販売店向けに行ったトレーニングでは、現場のセールスマンの感想は概ねポジティブながら、一部からは「なんからしくない」という反応もあったと正直に教えてくれた。手前味噌ではあるが、察するに恐らく感じられた『らしくなさ』は、自分の疑問符と重なるところがあるのではないかと思う。
変わる悩ましさ
変わらないことに対する期待ばかりに応えていては成長できない。一方で、自らのアイデンティティを守るために変わるわけにはいかないところもある。少ないモデルをスカイアクティブテクノロジーというワンボイスで束ねて強い個性を打ち出してきたマツダゆえ、変わる悩ましさも少なからずあるのだろう。
新しい『マツダCX-5』が果たして市場でどのように評価されるかは、四半世紀以上マツダ車に乗り続けている個人的にも楽しみではある。

新しい『マツダCX-5』は果たして市場でどのように評価されるか? マツダ
マツダCX-5のスペック
マツダCX-5 L(取材車)
ボディカラー:ネイビーブルーマイカ
エンジンタイプ:eスカイアクティブG 2.5
トランスミッションタイプ:スカイアクティブ・ドライブ(6EC-AT)
駆動方式:4WD
価格:430万6500円
オプション価格:22万3300円
合計価格:452万9800円

取材車は新色の『ネイビーブルーマイカ』(左)。以前の同系統色(右)よりも落ち着いた雰囲気だ。 平井大介
●装着メーカーオプション
シートカラー/インテリアコーディネーション(スポーツタン):4万4000円
パノラマサンルーフ:12万1000円
●ショップオプション
リフトゲートライト:3万3000円
トノカバー:2万5300円
型式:5AA-KMYSDP
全長×全幅×全高:4690×1860×1695mm
ホイールベース:2815mm
乗車定員:5名
車両重量:1770kg
エンジ型式:PY-VPH型
種類:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:2488cc
最高出力:178ps/6000-6200rpm
最大トルク:24.2kg-m(237Nm)/3800-4000rpm
燃料供給装置:筒内直接噴射(DI)
モーター型式:MK型
種類:交流同期電動機
最高出力:6.5ps/1000rpm
最大トルク:6.2kg-m(60.5kg-m)
動力用主電池
種類:リチウムイオン電池
個数:9個
容量:10Ah
最小回転半径:5.6m
燃料/タンク容量:無鉛レギュラーガソリン/58L
燃料消費率:14.2km/L(WLTCモード)
市街地モード:10.9km/L(WLTC-Lモード)
郊外モード:14.4km/L(WLTC-Mモード)
高速道路モード:16.2km/L(WLTC-Hモード)
タイヤ&ホイール:225/55R19 99V & 19×7インチアルミホイール(ブラックメタリック塗装)
