常盤木学園高校の公式facebookより

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 一昔前は、学校の“制服”は支配の象徴と捉えられることがあり、生徒会などが中心となって廃止を決議したケースもあった。ところが、近年は女子高生が制服を着て楽しそうに踊る動画をTikTokにUPする例も増えた。“制服ディズニー”に象徴されるように、高校生の今だけ着られる服として制服が支持されている。特に「セーラー服を着てみたい」と憧れを抱く高校生は少なくないようだ。

【写真】あの“広瀬すず”も着用で話題…杜の都・仙台の「常盤木学園高校」が誇る人気のセーラー服

 時代の変化の中でも、頑なに制服を変えずに伝統にこだわってきた学校のなかには、制服が学校の象徴となっているケースがみられる。宮城県仙台市の常盤木学園高校は、女子サッカーの強豪校として知られる一方で、東北地方でも貴重なセーラー服を制服にする学校としても有名である。在校生のなかでも制服の人気は高いという。

常盤木学園高校の公式facebookより

 近年、経済状況が芳しくないなかで、廉価な制服にモデルチェンジをする例が相次いでいる。特に、バブル期にデザインされた華美な制服を、無難で当たり障りのないデザインに変えてしまう例が、公立、私立を問わず多い。また、“量販店の服を着てもいい”と決断した学校まであるほどだ。制服を取り巻く状況は、時代とともに大きく変化しているといえる。

 全国的にたびたび起こった制服のモデルチェンジブームに流されず、常盤木学園が制服を変えなかった要因はどこにあるのか。教頭の植木規裕氏に話を聞いた。【取材・文=宮原多可志】

制服は生き字引的な存在

――常盤木学園は仙台に住んでいる人であれば、セーラー服の学校として知名度が高いと思いますし、学校側も、生徒のみなさんも、制服に強い愛着を持っている印象を受けます。

植木:おっしゃるとおりだと思います。どの段階から、制服がシンボルになったのかは定かではありませんが、昭和初期の1928年に設立された当初から基本的なデザインは変えていません。また、当校のセーラー服は一般的には1〜3本の白いストライプが“4本線”である点が、全国的に珍しい。まさに、当校の歴史の生き字引のような存在だと思います。

――制服のデザインが理由で入学を希望する生徒はいるのでしょうか。

植木:入学後に新入生アンケートを行っているのですが、入学の動機に挙げる方はたくさんいます。複数回答ですが、毎年3割くらいは制服を挙げる方がいますね。

――常盤木学園は、広瀬すず氏が主演した映画「ラストレター」や、SKE48の「1!2!3!4!ヨロシク!」のPVへの協力など、制服の活用をかなり先駆けて行っている印象を受けます。これはどういった経緯で実現したのでしょうか。

植木:SKE48さんの時は先方からオファーがあり、お引き受けした形になります。また、「せんだい・宮城フィルムコミッション」に登録しているので、映画に制服や校舎を使いたいといったオファーがあれば、内容を精査のうえ、ロケに協力させていただいています。

――フィルムコミッションには仙台の有名な名所や他校も登録しているなか、選ばれるというのは凄いことですよね。

植木:当校は大きな校舎が2つあって、それぞれ建設の時期が離れているため、一つの敷地内で昔の校舎、最新の校舎の雰囲気を選べるので、映画関係者に好まれやすいということがあるかもしれません。とはいえ、やはり制服が当校の知名度アップに果たしている面は、大きいと思います。

モデルチェンジしなかったのは大きなメリット

――制服のモデルチェンジブームはたびたび起きています。1980〜90年代には、いわゆる伝統校でも、セーラー服がブレザーに変わったりした例が少なくありません。常盤木学園のなかでは、変えるという話は出なかったのでしょうか。

植木:当時、私はまだ教員として務めていないので、聞いた話になりますが、“変える必要性がなかった”から変えなかったと聞いています。つまり、変えてほしいという声が、周囲から挙がらなかったのです。

 当時は既に宮城県内でも知名度があり、支持されている制服だったのは間違いありません。そして、人気のあるなしという枠を超えて、学校のアイコンとしての役割を果たしていた部分もあったようです。なので、そのままになったというのが本当のところだと思います。

――その時代に制服を変更した学校が、最近になってまたデザインを変えてしまった例もあります。そう考えると、流行に流されなかった常盤木学園の選択は正しかったように思います。

植木:そうですね。変えなかったのは大きなポイントですし、そのおかげで当校が存続できている面もあると思うんですよ。当校には普通科のほか、東北では珍しい音楽科があります。音楽科のみ男子の入学を認めていますが、それでも10名ほど。事実上の女子高として認知されています。

 ところが、ご存じのように、女子高の経営はどこも厳しい。公立、私立を問わず、共学化するケースが全国的にも相次いでいます。ところが、ありがたいことに本校は入学希望者が減っていないんですよ。

――それは凄いですね。

植木:もちろん、制服だけがすべてとは言いませんし、複合的な要因はあるでしょう。しかし、セーラー服が女子高としての知名度を高め、入学したいと思わせる要因になっている部分はあるのではないでしょうか。

守るべき点は守り、とり入れるべき点は取り入れる

――制服を今後、モデルチェンジするようなことはありますか。

植木:今のところ、予定はありません。そのかわり、時代に合わせて制服の周辺アイテムは充実させています。カーディガンやポロシャツ、ジャケットなどを導入していますし、スカートの代わりに着用できるスラックスも14〜15年前に導入しました。いろいろな着こなしができるようにしていますね。

――女子生徒の制服といえばスカートというイメージでしたが、近年はスラックスやズボンを選べる例が増えています。常盤木学園は14〜15年前ということで、かなり早い事例ですね。

植木:スラックス(注:当時はパンタロンと呼んでいた)は、生徒のほうから要望があったので実現させたものです。当時の校長に話をしたところ、「セーラー服は海軍の制服を取り入れたもので、パンツスタイルがあってもおかしくない」と言われ、導入しました(笑)。

 スラックスを選んでいる生徒は決して多くはないですが、それでも多い学年で4〜5名、平均して2〜3名ほどです。宮城県内の中学生はスラックスを穿いている女子生徒が増えているので、かつてよりも抵抗感はないのかもしれませんね。

――守るべき点は守り、取り入れるべきものは取り入れている。

植木:当校の創立者がもともと銀行を経営していた資産家でして、女性の活躍を旗印に作った学校です。“自由と芸術”を校訓にしているように、女性の自由の拡大を当初から掲げているので、先進的な考えも根付いているのだと思います。当校にとって、制服は“創立の精神を具現化したもの”だと考えています。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部