上場企業の現預金をサナエノミクスの軍資金に? コーポレートガバナンス・コード改訂のウラに隠された高市政権の政治的思惑

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「事実上の強制」か

大企業が抱える計80兆円超の現預金を吐き出させ、サナエノミクスで掲げた戦略17分野への投資や大幅な賃上げに役立てたい――。高市早苗政権がそんな政治的な思惑から海外投資家らと“結託”して上場企業に圧力をかける仕掛けづくりに勤しんでいる。

そのための秘策が、上場企業の行動原則を定めた「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針、CGコード)」の5年ぶりの改訂だ。

取締役会が現預金を有効活用できているかを検証し、説明することを求める新たな規定を追加。市場で「多額の現預金は悪」とのムードを醸成し、企業の余剰資金を新規事業への投資や人件費増額の原資に振り向けさせることを狙う。

CGコードは法的拘束力を持たないが、「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守か、さもなければ説明を)」との原則の下、指針に従わない場合、企業は詳細な説明を迫られる。CGコードで示された原則を順守しているかどうかは、投資家が企業価値を判断する際の重要な材料となっており、「事実上の強制力を持つ」(経団連幹部)と受け止められている。

実際、2015年に導入されたCGコードに「経営の透明性・公正性を確保する」との目的から書き込まれた、社外取締役充実の推奨規定は企業統治のスタンダードとなった。取締役会に占める独立性を持つ社外取締役の割合を3分の1以上にすることを求めたものだが、今や東京証券取引所プライム市場上場企業の99%弱が採用する。

従わなければ投資家から「ガバナンス不全」と見做され、株価下落など手痛いしっぺ返しを受ける恐れがあるからだ。高市政権はこの投資家の圧力を駆って、企業に眠る巨額の現預金をサナエノミクス推進に活用しようと目論んでいる。

「高圧経済」の信奉者

「(CGコードを改訂し)内部留保の使い道を明示することで、(大企業が)従業員の給料アップや投資促進をしたことがオープンになった方がいい」

高市首相は24年9月の自民党総裁選でこう訴えたほか、著書では企業がため込んだ現預金に課税する案まで提唱。かねて企業の現預金の巨額さを問題視してきた。

与党筋によると、高市氏に知恵を授けたのが、リフレ派ブレーンの一人で日本成長戦略会議の有識者メンバーでもあるクレディ・アグリコル証券チーフエコノミストの会田卓司氏だという。

財政拡張と金融緩和で意図的に景気をふかす「高圧経済」を信奉する会田氏は、日本企業の経営姿勢にも矛先を向け「過去30年近く(大企業の)貯蓄率が大幅なプラスになっているのは、国内支出や賃金、投資を切り詰めている証拠だ」と糾弾する。

高市政権が掲げる官民連携の成長投資で企業活動を活発化させるには、「企業の貯蓄率をマイナス、投資超過にする必要がある。日本経済をコストカット型から投資成長型の明るい姿に変えていくべきだ」などと、企業に行動変容を迫ってきた。

総選挙での圧勝による「高市一強体制」が築かれた今こそ、持論を実現させる絶好の機会と捉えているのだろう。

続く後編記事『金融庁も一転して強硬姿勢に…高市政権が推進するコーポレートガバナンス・コード改訂に大企業経営者が感じる不安』では、コーポレートガバナンス・コードの改訂に戦々恐々する大企業側の困惑を描く。

【つづきを読む】金融庁も一転して強硬姿勢に…高市政権が推進するコーポレートガバナンス・コード改訂に大企業経営者が感じる不安