因縁再び(左から元横綱・白鵬翔氏、元横綱・照ノ富士の伊勢ヶ濱親方/時事通信フォト)

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 2月に酒席で、弟子の伯乃富士に暴力を振るったことが発覚した元横綱・照ノ富士の伊勢ヶ濱親方。4月9日に開かれた日本相撲協会の臨時理事会を開催では、二階級降格(委員待遇年寄から年寄)と報酬減額(10%を3か月)の処分が決まった。

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 協会は処分について「座ったまま拳や平手で合計2回顔面を殴打したにとどまり、その態様や程度が極めて悪質とまではいい難い」「伯乃富士にも、同席した女性に対して不適切行為に及んだという落ち度があり、本件暴力を正当化する理由にはならないものの、これを諫める、という相応の動機があった」「伊勢ヶ濱には、暴力の常習性はなく、本件は単発的なもの」などとしているが、相撲担当記者が言う。

「常習性がないことや自主申告したことで情状酌量されているが、大甘処分という批判は根強くある。素手で殴っただけなのか、常習性がないのか、証言に口裏合わせがないのかといった検証が十分だったかを疑問視する声もあるし、そもそも酒癖が悪い伯乃富士を泥酔するまで飲ませた師匠の責任もあるでしょう。

 普通、部屋のタニマチとの会食で力士が酒は飲むのは形だけ。弟子の教育ができていないと批判の声もある」

 伊勢ヶ濱部屋には、一昨年の4月に弟子の暴力問題が発覚したことで「当面の間、閉鎖」となった旧宮城野部屋の力士、つまり当時の師匠だった元横綱・白鵬翔氏の弟子たちも所属し、伯乃富士はその1人。白鵬氏は、部屋の再興が見通せないことから昨年5月に相撲協会を退職した。今回の騒動を受け、旧宮城野部屋関係者たちが期待したのが部屋の「再興」だという。

「今回の伊勢ヶ濱親方の暴力行為の一因として、宮城野部屋の吸収があると見られていた。現在、関取7人を含む力士32人が所属する伊勢ヶ濱部屋は、45ある相撲部屋のなかで最大勢力となっている。旧宮城野部屋の力士たちとの人間関係の複雑さや師匠の監視の目が届かないといった問題が生じているとの指摘もあった。

 暴力問題を受けて伊勢ヶ濱親方が師匠を交代させられて部屋付き親方となり、代理師匠の伊勢ヶ濱部屋が誕生した場合、宮城野部屋の再興が叶うとする見方があった」

 実際、今回の不祥事が部屋運営に及ぼす影響は小さくないと見られている。伊勢ヶ濱一門関係者はこう言う。

「部屋運営の運営に欠かせない後援会との関係も心配されています。伊勢ヶ濱部屋は両国に新部屋建設を予定しており、資金面だけでなく各業界への幅広いパイプも不可欠。今回の暴力問題の現場で一緒に飲んでいたのは新部屋建設のスポンサーのひとりとされるが、トラブルによって部屋の後援会はバラバラの状態で機能を失っているとも聞く。

 実際、伊勢ヶ濱部屋の公式後援会のXは2月末で更新停止し、3月場所中は何の投稿もなく、処分後の動きもない。5月場所後の打ち上げパーティは部屋の仕切りで都内のホテルで開催されることが決まっているが、後援会機能が必要となるのは地方場所。7月には名古屋場所がある。そこに支障がでないかが懸念されています」

「再結成できる構えはある」

 その一方で、旧宮城野部屋後援会の関係者はいつでも後方支援ができる状態だという。旧宮城野部屋地方後援会幹部のひとりが言う。

「部屋の閉鎖後、各地の後援会は消滅しました。他の部屋の後援会に移った者もいるが、再興となればすぐに再結成できる構えはある。旧宮城野部屋所属の炎鵬が5月場所で再十両となり、年寄襲名の資格を得られため、準備に入った後援会もあると聞く。期待は高まっていました」

 ただ、そうした機運のなかで発表された処分は二階級降格と減給だけで、弟子の指導については部屋付き親方4名と伊勢ヶ濱親方が協力して集団指導体制を取るというかたちになった。若手親方が言う。

「稽古場のみならず、生活全般においても5人の親方が協力して指導・監督を行なう合議制となったが、部屋の師匠は照ノ富士のままとなった。先代(元横綱・旭富士、現・宮城野親方)の手も離れている状況では、現実問題として元横綱の照ノ富士にモノが言える人はいない。

 伯乃富士の不適切行為が問題だったのは間違いないが、協会がそこをフォーカスする発表をしたことで、伯乃富士の監視を強化しないといけない流れができた。師匠交代がなかった以上、一時は期待が高まった旧宮城野部屋の再興が消滅したと言っても過言ではないでしょう」

※週刊ポスト2026年5月8・15日号