「地獄に突き落とされた感覚。こんな傷だらけになってしまって…」美容が好きだった20代女性 飲酒運転で二度と戻らなくなった顔と身体 念願の留学も白紙に… 被告の28歳女は酒に酔ったままハンドル握り… 危険運転致傷罪で起訴
いまだ根絶からはほど遠い、飲酒運転。死亡事故には社会の関心や報道が集まるが、生き残った被害者にも地獄が待ち受けているということは、どうしても見過ごされがちだ。
大阪府堺市で去年に発生した飲酒危険運転事件の被害者(20代女性)が、MBSの取材に応じた。酩酊状態でハンドルを握った被告は、被害者の夢や大切にしていたものを、ことごとく奪い去った。
“地獄に突き落とされたような感覚”
大阪府堺市に住む20代の女性・Aさん。自らが顔に負った傷を、病棟で初めて目にした時の感情を、いまでも覚えている。
「地獄に突き落とされたような感覚。すごくショックでした。今まで頑張ってきたことが何やったんやろうと…きれいになりたいと思って美容に力を入れてきたので。こんな傷だらけになってしまって…。きれいになるのかな…と、今も大きな不安と恐怖に押しつぶされています」
凄惨な事故が起きたのは、去年6月の夜のことだった。
飲酒運転の車に追突され…
木村穂乃香被告(28)が運転する普通乗用車が、堺市中区深井水池町の道路上で、Aさんが運転する自転車に接触。Aさんは転倒し、さらに木村被告の車の左前輪でひかれた。
Aさんは道路左端の自転車レーンを走行していたが、木村被告の車に突然、追突された。Aさんは、大きな衝撃を受けたことだけ覚えていて、それ以降の記憶がない。
皮膚がえぐられ… 涙にも血が混じっていた
意識を取り戻した時には、手足は器具で固定され、口にはチューブが挿入されていた。母親によると、Aさんが思わず流した涙には、血が混じっていたという。
奇跡的に内臓の損傷や骨折はなかったが、顔面に受けた傷が大きく、頬や口の中、耳などを数十針縫合する処置がなされた。また、腰から臀部にかけての皮膚が大きくえぐられ、太もも内側の皮膚を移植する手術も行われた。
病室でつけた日記
病床でAさんは、悲痛な心境や、何とか前を向こうと自らを奮い立たせる心境などをノートに記した。
Aさんが病室でつけていた日記
6月10日
「顔の傷は見れない、見たくない。腰の傷は痛すぎる」
「包帯が取れて初めて自分の手足の傷を見た時、悲しすぎた。記憶が無い間で、自分は何をされたのか、何が起きたのか。あまりにも残酷すぎて」
6月15日
「事故にあわなければこんな様にはなっていない。顔も手足の傷も。辛いし憎いし、怒りもこみあげて涙が出る。最近ふとした時に涙が出そうになるけどこらえる。前向きにいるしかない。先の楽しみな事も考えて乗り超えてやる。これから待っている事はきっと素晴らしいことばっかりやと思う。そうであってくれ」
二度と元に戻らなくなった自分の顔や身体
事故に遭うまで、Aさんは美容が大好きで、そのために定期的に韓国に旅行に行くほどだった。自分で貯めたお金を使って、歯列矯正まで行っていた。
大事にしてきた顔と身体は、事故で二度と戻らなくなった。
傷が残った自らの顔を直視できなかったAさんは、看護師に頼んで、病室の鏡を白い紙で覆ってもらうほどだった。退院してからも、自宅の鏡で自分の顔はほとんど見ていない。照明も暗めにして過ごしている。
留学の夢も絶たれる…
事故がなければ、今年1月からはフィリピンに語学留学し、その後はワーキングホリデー制度でカナダに滞在する予定だった。
無責任な飲酒運転は、Aさんからすべてを奪っていった。
Aさん
「周囲の人からは、“(事故がなければ、留学に)いま頃行っているね”と言われる。言われるたびに、“こんなことがなかったら行っているのにな”と思い、めっちゃしんどい気持ちになる。(留学は)私の目標でもあったので、すごく今の自分が嫌になることが多いです」
「(被告への)怒りや思いはずっと変わらない。変わるどころか増すばかり。同じ思いをしてもらわないと気がすまない…。体にも心にも、同じ痛みを味わってほしい。私は病院通いで、なかなか外に出られなくてこんな生活なのに、被告は“自由”。それが憎くて憎くてたまらないです」
勤務先のラウンジで多量の飲酒か 「危険運転」で起訴
Aさんに取り返しのつかない被害を与えた、木村穂乃香被告(28)。当初、ひき逃げと過失運転致傷の疑いで警察に逮捕されたが、その後「危険運転致傷」に罪名を変更する形で起訴された。
勤務先のラウンジで多量のお酒を飲み、酒に酔った状態でハンドルを握った疑いが強まったのだ。
「過失運転」より罪が重い「危険運転」で起訴された形だが、逆に“Aさんと接触したことを認識していなかった”として、ひき逃げの罪での起訴は見送られた。
裁判は長期化へ
去年9月に大阪地裁堺支部で開かれた初公判。罪状認否で木村被告は、「弁護士に任せていますので、弁護士と同じ意見です」と供述。弁護人は「公訴事実全体に対して認否を留保いたします」と述べ、争点整理を求めた。
このため初公判は、検察側の冒頭陳述も行わない形で終了。現在は期日間整理手続きが行われていて、第2回公判の期日はいまだに決まっていない。
木村被告は、現在は勾留されていない。
「私の未来まで支配されたくない」
裁判は長期化の様相を呈しているが、Aさんは被害者参加制度を使って、今後も公判に出廷し、判決言い渡しまで見届ける予定だ。
海外留学も、決してあきらめたわけではない。
Aさん
「いつになるかは分からないけど、留学はあきらめたくない。事故で私の人生のプランは壊されてしまった。けれど、目標にして頑張ってきたことを、ここでやめてしまったら、加害者に振り回されているみたいになるから…。私の未来まで支配されたくないです。自分の目標はつらぬきたい」

