専門家「常識では考えられないミス」と指摘…習近平政権が躍起になる「原発開発」の現場で起こっていること

写真拡大 (全4枚)

前編記事『原油価格は変わらず新たな火種が増えただけ…米・イラン交渉は進展も中国の不況はそのまま、習近平がハマった泥沼』で見てきたように、米とイランの恒久停戦に向けての協議が進んでいる。

イランの最大貿易国である中国も陰ながら尽力しているようだ。だが、いまだに終結の目途はたっていない。輸入原油の9割をイラン産が締める中国では、かねてから続く不況にさらなる追い打ちがかけられようとしていた。

PPI、3年半ぶりのプラスでも

気がかりなのは、中国でコスト・プッシュ型インフレが顕在化していることだ。

中国の3月の生産者物価指数(PPI)は前年比0.5%増と、3年半ぶりにプラスに転じた。だが、今回の上昇はエネルギー価格の高騰がもたらしたものであり、事態はむしろ悪化したと言わざるを得ない。

消費者物価(CPI)も前年比1.0%増と6か月連続のプラスだったが、イラン情勢の緊迫化に起因するガソリンなどの価格が高騰したことによるものだ。

中国政府は8日から国内の石油製品価格を6週連続で引き上げた。値上げ幅を圧縮しているものの、国民の懐をさらに圧迫するのは間違いないだろう。

中国本土よりも石油製品が高い香港では、原油高のせいでクリーニング業界の3割が廃業の危機に直面しているとの指摘が出ている。

専門家は「需要の増加ではなくコスト上昇によって引き起こされるインフレは企業の利益率を圧迫して経済成長を抑制するとともに、景気刺激策の余地を狭める可能性がある」と警告を発している。

習近平の出した命令

中国からの輸出品の価格が上昇するリスクも高まっている。

中国の太陽光パネル製造大手は4月以降、日本向け販売価格を一斉に引き上げることを決定した。最大で3割の値上げとなる見込みだ。銀などの原材料の価格上昇と、中国政府の支援策の廃止分を価格に転嫁することが理由だ。

今回の値上げにはエネルギー価格の上昇分は織り込まれていないため、今後、さらなる値上げの可能性も十分にあるだろう。

筆者が注目したのは、国営放送の中国中央テレビ(CCTV)が6日、「習近平国家主席が国家のエネルギー安全保障を守るため、新たなエネルギーシステムの計画と建設を加速するよう求めた」と報じたことだ。CCTVによれば、「発電分野、特に原子力発電の開発に注力せよ」と習氏が指示したという。

中国における原子力発電の建設は猛烈な勢いで進んでいる。

欧米諸国での停滞を尻目に、2025年に中国の原発の設備容量は世界一になった。2030年までに発電能力も世界一になると予測されている。

だが、急速な発展を遂げる陰で安全意識を問われる事態が浮き彫りになっている。

完全な能力不足

中国規制当局の報告書を調査した共同通信は5日、「原発建設に関する杜撰な工事や設備の欠陥などが2011年から24年にかけて少なくとも200件あった。世界初の次世代原発の設計にも問題が見つかり、当局は技術面での能力不足を指摘し、業界に安全対策強化を指示していた」と報じた。

この報告書を読んだ日本の原発専門家は「常識では考えられないミスであり、件数も多い。気付かずに運転したら深刻な事故を起こしかねない」と危惧している。

今や皇帝的存在となった習氏の「鶴の一声」で原発増設の動きが加速すれば、中国の原発の安全性はさらに危うくなってしまうのではないかとの不安が頭をよぎる。

日本にとって悩みの種となった隣国の今後の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。

著者のこちらの記事もあわせて読む『介護が必要な高齢者は約3500万人に…桁違いのスピードで高齢化が進む中国、このままでは“姥捨て山社会”到来の恐れ』。

【こちらも読む】介護が必要な高齢者は約3500万人に…桁違いのスピードで高齢化が進む中国、このままでは”姥捨て山社会”到来の恐れ