楽天は“格安”、12球団監督の年俸はこうして決まる…出来高、日米待遇格差まで丸っと解説【小林至教授のマネーボールQ&A】#23
【小林至教授のマネーボールQ&A】#23
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【Q】プロ野球選手は成績や実績などに応じて年俸が決められます。では、監督の年俸はどんな基準で額が決まるのでしょうか?
【A】結論から言えば、決まった基準はありません。ある意味ではどんぶり勘定ですが、前任者との比較に加え、「他球団と比べて見劣りする額は出せない」という球団の見えも働く。だから厳密な算式はなくても、その時代ごとの相場はある。別表の通り、現在は7000万〜8000万円から1億円前後が相場でしょう。
それでも日本ハムと巨人は頭ひとつ抜け、逆に楽天は相場の半額近い。これは球団によって監督の位置づけが違うからです。巨人は今も「生え抜きのエースか4番」という不文律が色濃く、必然的に人気と知名度を兼ね備えたスターが候補になる。日本ハムは新庄監督の集客力、話題性、営業面での波及効果まで織り込んでいるのでしょう。一方、楽天は編成主導、フロント主導の色合いが比較的強く、監督の権限の置き方が年俸にも表れているように見えます。
監督の出来高は、常勝球団ならCSを主催できる2位以上、そうでない球団ならAクラス入りがひとつの目安になるケースが多い。さらにCS突破、日本一まで積み上がれば、総額で5000万円規模の上積みになっても不思議ではありません。契約延長の際には普通は年俸も上がる。ただし、結果を出せなかった監督が1年契約で続投する場合は別。往々にして「後任が見つからなかった」という意味合いを含むため、据え置きが多くなります。
メジャーの監督は日本ほど裁量がない
監督の立場は日米でかなり違います。日本ではなお、監督が預かる現場は「職人の世界」という感覚が強く、オーナーやフロントも踏み込みにくい。これに対してメジャーでは、近年ますます編成部門の権限が大きくなり、監督はその方針を現場で実装する役割が強い。メジャーでは監督は“hired to be fired”(クビになるために雇われる)ともいわれ、成績が落ちれば真っ先に責任を問われるのに、日本ほど大きな裁量は与えられていないのが通例です。
数字で見ても、その違いははっきりしています。メジャー監督の高額16人の平均年俸は、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督の810万ドル(約12億9000万円)を筆頭に、417万ドル(約6億6000万円)と推定されています。新任監督は100万ドル(約1億6000万円)前後が相場ですから、全30球団の実勢平均は200万ドル(約3億2000万円)台でしょう。今季のMLB選手の開幕時平均年俸は534万ドル(約8億5000万円)ですから、監督は選手平均をかなり下回る。NFLやNBAのヘッドコーチ市場は1000万ドル以上が相場ですから、MLB監督は北米では安い部類です。かつて私がソフトバンクの編成部にいた頃、王監督(現球団会長)も「試合をやるのは選手。監督ばかりが前面に出るのは少し違うよなあ」と、いわゆる「王ホークス」「原巨人」といった語られ方に違和感を口にしていました。もっとも、日本では監督がチームの顔であり、物語の主人公でもある。それが良くも悪くも、日本野球の文化なのだと思います。
(小林至/桜美林大学教授)
