トラウマ体験は、決して他人事ではない! その特徴や引き起こす症状について正しく理解しよう
PTSD(心的外傷後ストレス症)は、事件や事故、災害などのつらい体験がトラウマとなって、いつまでも恐怖や不安が続き、生活に支障が出てしまう心の病気です。近年は暴力や性被害、重度の事故など、個々の事例からPTSDになることも多く、誰もがトラウマの問題と無縁でいられなくなっています。
こうしたトラウマによって引き起こされるさまざまな変化(トラウマ反応)や対処法、家族や周囲の人ができるサポート法を紹介した書籍『新版 PTSDとトラウマのすべてがわかる本』より、一部を抜粋紹介します。
突然の不幸や悪意ある行為がトラウマとなる
規模の大小によらず、自分や身近な人に突然起きた事故や災害、悪意のある犯罪や暴力など、心に傷を残すような体験をトラウマ体験といいます。
■トラウマ体験の特徴
トラウマ体験には、いくつかの特徴があります。いずれも無力感や強い不安・恐怖を伴う体験です。
・予測できない
自然災害や交通事故のように、突然ふりかかってくる災難。急激なショックで心的ダメージが大きい。
・自分の力では制御できない
圧倒されて、なすすべもない状況。苦しむ人を助けることができない場合も無力感が生じる。
・身の危険を感じる暴力
強盗や傷害事件などの命に関わるような暴力、性暴力をふるわれる。
・強い恐怖を感じる
事件や事故を目撃する、家族が犯罪に巻きこまれるなど、強い恐怖を感じる出来事。
・大切な人やものを失う
家族や友人の死、家屋の倒壊など。喪失感におそわれ、気力がなくなってしまう。
・自分のせいで起きた事故
自分がまねいた失敗によって事故を起こし、自分や周囲を傷つける。
トラウマ体験は決して他人事ではない
多くの人は、戦争や災害、凶悪犯罪など、ニュースになるような出来事と自分は無縁だと思っています。しかし、そのような出来事にあう可能性は誰にでもあります。
恐怖や危険の感じ方には個人差がありますが、一般的には被害が大きいほどショックも大きくなります。
■トラウマ体験となる出来事はさまざま
トラウマ体験は、事故や災害、暴力や犯罪などさまざまです。また、これらの出来事による身近な人との死別がトラウマになることもあります。
トラウマはさまざまな変化や症状を引き起こす
トラウマの影響は、さまざまな形で現れます。身体症状のような気づきやすい変化もありますが、否定的な考え方や、周囲への実感がわかなくなる解離のように、目立たない変化も生じます。こうした変化をすべて「トラウマ反応」と呼びます。
トラウマ反応のうち、身体面の変化は気づかれやすいですが、精神面や行動面の変化は見過ごされやすく、対応が遅れて、状態を悪化させてしまうことがあります。
被害を受けた本人も、周囲の人も、トラウマがどのような影響をおよぼすか、理解しておくことが必要です。
■心身両面、行動面に変化が起きる
トラウマ反応は、身体面、精神面、行動面に現れます。心身に負担がかかり、生活に影響をおよぼします。
・精神面の変化
体験の記憶がくり返しよみがえる。人生観が変わり、考え方が否定的になる。無力感、罪悪感などを抱きやすく、感情も不安定になる。
・身体面の変化
体験後も強い不安を感じ続け、その影響が身体症状として現れる。不眠、食欲不振、動悸 、体の痛み、原因不明の発熱、手足のふるえなど。
・行動面の変化
仕事や勉強に集中できない。電車やバスに安心して乗れなかったり、人づきあいをさけて引きこもったりする。飲酒量が増えることもある。
■代表的なトラウマ反応
トラウマ反応のうち、代表的なのがPTSDです。PTSDと同じ症状でも、現れ方や発症の時期によっては、複雑性PTSD やASDと診断されます。
・PTSD
再体験/回避/認知と気分の陰性の変化/過覚醒/解離
トラウマによる4つの中核症状がみられる。解離を伴うこともある。その一部だけが生じる「部分PTSD」もある。
・ASD
PTSDと同じ症状
急性ストレス症。症状はPTSDと同じだが、トラウマ体験の直後に発症する。その後PTSDに移行することもあれば、とくに治療を受けずに回復することもある。
・複雑性PTSD
再体験/回避/過覚醒/自己組織化の障害
長期間くり返されたトラウマ体験によって起こりやすい。自己組織化の障害(感情制御困難・否定的自己概念・対人関係障害)が深刻に現れる。
・ほかの心の病気
うつ病/不安症/依存症
ASD やPTSD を発症せず、そのほかの心の病気になる人もいるが、併発する場合も多い。トラウマはさまざまな病気の原因となる。
