FBS福岡放送

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2016年の熊本地震の前震から4月14日で10年です。JR博多駅前広場では、地震で被災した九州新幹線「つばめ」が展示されています。被災した車両が九州各地を旅する姿は、見る人に前へと進む勇気を与えていました。

牽引車に引っ張られ、線路ではなく道路を走る九州新幹線「つばめ」。

■照屋芳樹記者
「今、つばめが博多駅に到着しました。」

九州新幹線の全線開業15周年を記念したイベント「つばめの大冒険」です。

陸路と海路、およそ870キロにわたる旅の目的は、これまでの感謝を伝えるとともに、10年前の震災の記憶を継承するためでもありました。

博多と鹿児島中央間を結ぶ九州新幹線。800系新幹線「つばめ」は、全線開業前の2004年3月、熊本の新八代と鹿児島中央間の部分開業時にデビューしました。

JR九州にとって初めての新幹線で、2011年の全線開業以降は、福岡と鹿児島をつないできました。

しかし、2016年4月、最大震度7の揺れに2度も見舞われた熊本地震が発生しました。

前震と呼ばれる1度目の地震で、回送運転中の「つばめ」も被災し、脱線しました。安全走行の生命線である車軸が損傷し、新幹線としてもう走ることはできなくなりました。

新幹線の運転士として2年目を迎えていた枝元正哉さんは、被災した車両に乗務していました。

■当時、被災車両を運転・枝元正哉さん(40)
「下から突き上げるものすごい衝撃。天井に頭がぶつかるくらい1回浮き上がって、激しい揺れも感じて、非常ブレーキを取り扱いました。最初、何が起こったか分からなくて、巨大な丸太を踏んづけたようなイメージでしたね。」

恐怖で全身震えながら、暗闇の中、状況確認を行ったといいます。

■枝元さん
「(余震で)揺れる中で足回りを見ないといけないので、なかなかの経験というか、相当怖かったですね。その時は無我夢中で、相当がむしゃらにやりましたが、今思えばよく行動できたなと思います。」

運行できなくなった「つばめ」は、6両のうち3両は解体され廃車に、残る3両は熊本市の総合車両所で保管されていました。

■JR九州社員
「九州新幹線15周年プロジェクトというところで。」

ことしは全線開業から15年、そして熊本地震から10年の節目の年です。

JR九州は、これまでの感謝を伝えるために、被災した「つばめ」を復興の象徴として、沿線各地を回る「つばめの大冒険」を企画しました。

JR九州は、およそ半年かけて1号車を修繕。“現役”だった頃の姿を取り戻しました。

■枝元さん
「最後に自分が運転したので、相棒じゃないけれど、そうした気持ちはあります。ボロボロの状態からきれいになった車両が博多に来るということで、ぜひ新しくなったU005編成 (つばめ)に会いに来てほしいと思います。」

しかし、運行ができなくなった「つばめ」は、線路を使って動かすことはできません。

そこで選んだのが、陸路と海路での移動です。

3月29日未明に熊本総合車両所を出発した「つばめ」は、海の旅のスタート地点、熊本港に運ばれます。

夜が明けると、2台のクレーン車につるされ宙へと浮かびます。

全国各地から見送りに訪れたおよそ1000人の前で「つばめ」は船に載せられました。

■訪れた人
「当たり前のことができなかった時期が、地震の時はつらかったのですが、毎日忙しくて振り返る機会もないので、きょうは子どもと一緒に地震のことを振り返るいい機会になるかなと。」

■アナウンス
「つばめの大冒険、出港合図です。」

■JR九州・古宮洋二社長
「出港!」

■照屋記者
「出港の時を迎えました。つばめが今、海へと旅立ちました。」

熊本港から旅だった「つばめ」は、その日のうちに福岡県大牟田市の三池港へ。その後、新幹線沿線にある港などを経由し、航海6日目には、桜島を望む鹿児島港に入りました。

そして、4月6日の夜9時ごろ。

■照屋記者
「暗闇の中、うっすら白い車体が見えます。九州新幹線つばめが博多港へと近づいてきました。」

「つばめ」は、9日間にわたる航海を終え、博多港に到着しました。

残すは博多駅までの陸路、およそ4キロです。

2日後の4月8日、午前2時ごろ。

■荒木大輔カメラマン
「新幹線つばめが、博多駅に向けて出発しました。」

台車に載せられた「つばめ」は、交差点を大きな弧を描いて曲がり、通称“大博通り”にやってきます。

時速20キロ程度で、未明の博多の街を進みます。そして。

■照屋記者
「つばめが今、博多駅へと到着しました。およそ10日間にわたった、つばめの大冒険。ついに幕を下ろします。」

10日、博多駅前広場では、つばめの大冒険を締めくくるイベントが開かれました。

ライトアップされた車両の片側の側面には、満開の桜のペイント。公募で選ばれたおよそ200人が、思い思いの花を描きました。

■訪れた人
「海や陸、いろいろな場所を回ってきて、いろいろな人にありがとうを伝えているんだなと思いました。」
「復興している途中だと思うのですが、諦めなければ、つばめみたいにまだまだ走れるんだなと本当に感じました。」
「こうやって形が残っているというのは、なんとか後世に残してほしいものではあります。」

およそ870キロを11日かけて旅した「つばめの大冒険」。

15年分の「ありがとう」が、10年前に刻まれた記憶とともに満開の桜を咲かせています。

※FBS福岡放送めんたいワイド2026年4月13日午後5時すぎ放送