「特別対策本部」対象組織の組員逮捕で一網打尽…トクリュウ壊滅に向けた警視庁の本気度

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サバイバルナイフで恐喝

トップから後頭部にかけて、ロマンスグレーに染まった髪を後ろに流し、髭をたくわえた男は、背筋をピンと伸ばし、警察官に促されるまま、真っすぐ歩いていた──。

一見、企業の社長のようにも見える貫禄たっぷりのこの男。4月2日に警視庁戸塚署に恐喝未遂の疑いで逮捕され、3日、検察庁に送検された栗原正憲容疑者である。

「警視庁によると、栗原容疑者は、指定暴力団住吉会の中枢組織『幸平一家』傘下組織組員です。栗原容疑者は、別の組員と2人で、新宿区の路上で50代の男性にサバイバルナイフのような凶器を見せながら金銭を要求した疑いが持たれています。被害男性に向かって『先に渡していた300万円はどうなっているんだ』『そいつをさらえ。刺せ』などと脅し、金銭を要求した疑いが持たれています。男性は、近くのコンビニに逃げて店員に助けを求め、110番通報。栗原容疑者ら2人はその場から立ち去りましたが、1日に都内で発見され、逮捕されています」(全国紙社会部記者)

実は、この3日前の3月31日にも、『幸平一家』傘下組織組長の男ら組員5人が監禁、強盗傷害の疑いで逮捕されたことが警視庁から発表されている。組員らは、2月22日深夜から23日の朝にかけて東京・豊島区内のビルの一室に、当時、同じ組織の組員だった40代の男性を監禁し、暴行。身につけていたネックレスなど90万円相当を奪い、1ヵ月の重傷を負わせた疑いが持たれている。被害者は事件後、組織を脱退したという。

警視庁は今年1月、『幸平一家』が特殊詐欺や闇バイト強盗などを行うトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と関係があり、さまざまな犯罪に関わっているとして、特別対策本部を立ち上げた。4月1日付で、刑事部長指揮から副総監指揮に格上げしていた。

その前後の3日間で、「幸平一家」に関係する組員が逮捕された事案が2件も起きている。裏社会ジャーナリストの石原行雄氏に話を聞いた。

「トクリュウ犯罪に長けている組織」

「これまでだったら、あまりニュースにならない事件を警視庁はちゃんと広報しているなという印象です。警視庁は『住吉会』という広いくくりではなく、『幸平一家』をピンポイントで名指ししました。“徹底的にやるぞ”という意気込みを強く感じます。’23年1月に、トクリュウが関係した東京・狛江市で起きた強盗殺人事件がありましたが、以降、大きな社会問題になっています。そのトクリュウの拠点の一つと言われるのが新宿・歌舞伎町で、同年には、警視庁長官が歌舞伎町を見回るなど、重点的に捜査が行われてきました。歌舞伎町は『幸平一家』のシマの一つでもあり、旧関東連合系の人脈と太いパイプを持つことでも知られています。つまり、トクリュウ犯罪に長けている組織なのです。

特殊詐欺の大元締であったり、歌舞伎町スカウトによる人身売買などが彼らの太い収入源になっている。そこをまず叩くために『幸平一家』を名指しにしたうえで捜査し、関係者を逮捕するというのは非常に大きいことだと思います」

その後、組長が使用者責任で逮捕され、家宅捜索が入るという流れはこれまでもあったが、それが、トクリュウの大元締の組織にまでたどり着くことはなかった。しかし、今回のケースは大きく異なるという。

「過去、こういった事件の場合、敵対する組が警察にリークをして、代わりに潰してもらうといったケースもありました。しかし、今回はまったく違います。『幸平一家をやるぞ』ということを日本中にアピールして、着々と実行している。これは、他の組も対岸の火事ではない。『次は俺たちかも……』という危機感を強く持つようになったことは間違いありません。警察は、長年、闇バイト案件を放置していた引け目もあるでしょうから、いよいよ本気になったなという印象です」(前出・石原氏)

警視庁は、トクリュウを一網打尽にできるのだろうか。栗原容疑者ら2人は容疑を否認しているというが……。捜査の行方を待ちたい。