浮気発覚は悠樹さんの“寝言”がきっかけだった――

写真拡大

【前後編の後編/前編を読む】「けじめは大事」と言われ、結婚まで肉体関係ナシを貫いたのに…“純粋な妻”と暮らす41歳夫が落ちた「エリート新入社員」の魔力

 宮園悠樹さん(41歳・仮名=以下同)は、30歳のときに妻の真未さんと結婚し、2人の息子にも恵まれた。3歳年下の真未さんは、悠樹さんいわく“純粋でか弱い”妻。だが、悠樹さんの職場に新入社員として麻香さんがやって来たことで、一家の平穏は揺らぎ始める。当時27歳だった麻香さんは、海外経験が豊富で、大学院を出て就職したキャリアの持ち主。エリートでありながら「麻雀が好き」という意外な一面もあり、悠樹さんの心は次第に惹かれていった。

 ***

【写真を見る】「夫が19歳女子大生と外泊報道」で離婚した女優、離婚の際「僕の財産は全部捧げる」と財産贈与した歌手など【「熟年離婚」した芸能人11人】

 異動してからも彼女との交流は続いた。勤務先では有志によるサークル活動が盛んで、悠樹さんは新入社員のころ、自ら写真部を立ち上げた。10名前後で活動は続いており、麻香さんも仲間入りした。

浮気発覚は悠樹さんの“寝言”がきっかけだった――

「どんなカメラでもいいしスマホでもいい。3ヶ月に1回くらい、みんなで写真を持ち寄って批評会をするんです。たまにプロのカメラマンを招いて講師を務めてもらったりもした。有志だけでどこかへ行って撮影会をすることもありました。桜の季節なら花見を兼ねて撮影会と称して宴会をしたこともあります」

 麻香さんが写真部に入ってきてから、悠樹さんの気持ちが微妙に変わっていった。それまでは、あくまで「優秀ながらかわいい後輩」だったのが、女性として意識するようになったのだ。特にきっかけがあったわけではないのだが、あるとき有志数名で撮影会に出かけたとき、麻香さんが「ボーナスで買っちゃいました」というミラーレスのカメラを持って来た。

「まだ使い方がよくわからないと言っていたんですが、そのときちょうどプロに来てもらっていた。彼女は機関銃のように質問を浴びせて技術を習得、たった半日で、すばらしい写真を撮ったんです。背景をうっすらぼかし、桜の花びらが青空にくっきり映えるような写真。プロも絶賛していましたけど、彼女、ありがとうと微笑みながらも『でもつまらない写真だと思う。きれいなだけ』って。その言葉に心を射貫かれました。誰が見ても、その時期しか撮れない美しい写真ですよ。コンテストに出したら素人としては優勝するであろうという画像だった。でも一刀両断、つまらないと言い切った。すごいでしょ。その彼女のメンタリティに惚れてしまいました」

 自分なら褒められて大喜びして、本当にコンテストに出してしまうだろうと悠樹さんは言った。だが彼女はあくまでも冷静だった。自分の目を曇らせず、理想を見つめているのだと悠樹さんは感じた。

「僕がじっと彼女を見ているのがわかったんでしょう、目が合いました。その瞬間、彼女の目が妙に色っぽく光った。僕にはそう見えたんです。何も言わなくても、彼女とは何かが通じ合っている。そう思いました」

イチかバチかで…

 その日、みんなで遅いランチをとって別れた。彼はすっと彼女の横に立って歩き始めた。同じことを考えていたらいいんだけどとつぶやくと、彼女は唇だけで笑った。彼を見る目が潤んでいた。

「ここが勝負。彼女の麻雀じゃないけど、イチかバチかでした。冷たくフラれたら、それはそのときのこと。僕の人生でいちばんの大勝負だったかもしれない」

 タクシーを止めると彼女が乗り込んだ。そのままホテルへとなだれ込む。思ったとおりの女性だった。彼は攻められて守勢に回った。だが適度なところで彼が攻め始めると、彼女が受け止める。体と言葉で激しいラリーをし、疲れ果てて体を離す。だが、またどちらからともなく肌を合わせた。

「私たち、似てるねと彼女がつぶやきました。僕もそう思っていた。僕はあなたほどの知性はないけどと言ったら、『人は知性じゃないの。感性と知恵と工夫、それを組み立てる地道な努力』と彼女。すごいこと言うなあと思っていると、『仕事を一緒にしているとき思ってた。あなたには感性も知恵も工夫する力もある。人の気持ちを察する力がすごい。いい先輩だと思った』って」

溺れたわけではない…「敬意と信頼です」

 麻香さんに溺れたというのとは違うと彼はいう。彼女から発せられる言葉に心が豊かになったり、明日への活力がわいてきたりするのだと。恋愛感情だけで道ならぬ恋は続かないと。

「敬意と信頼ですかねえ。もちろん僕は、妻の真未に対しても敬意を抱いていましたよ。子どもふたりを育てていくのは大変なことだし、妻は僕が遅くなっても文句も言わない。僕もまめに連絡を入れていたし、早く帰れるときは子どもたちのめんどうを見ていました。自分の子ですから当然だと思っていたし」

 妻と麻香さんを比べたりはしなかった。ただ、麻香さんの存在に、その人生に巻き込まれたかった。一緒に歩くというのとも微妙に違う。

「麻香は独身だったけど、僕に家庭があることを知っていながら、まったく言及してこなかった。次に会う約束すらせず、その日は別々の電車に乗って別れました」

職場で会うと…

 だが悠樹さんの心の中では、麻香さんの存在がどんどん大きくなっていく。このまま関係を続けたらいけないとわかっていながら、自制はできなかった。

「僕の部署と研究所は仕事でも関係があるので、数日後、研究所に行ったんです。あの日から、彼女は連絡してこなかった。僕も控えていた。でも研究所で顔を見たら、膝からくずおれてしまったんですよ、みんなの前で。彼女に『どうしたんですか、先輩』と笑われて、『いや、ちょっと膝かっくんしちゃって』と言ったら周りが笑っていました。でも彼女の上司にあたる僕の同期が、『おまえ、血圧大丈夫か』と言いだして。計測したら確かに血圧と心拍数が上がっていた。まあ、でも倒れるほどのことはないなと彼が言ったので、いつもならエレベーターを使うんだけど、階段登ってきたからと必死で言い訳をしました」

 そんな彼を彼女はじっと見つめていた。その日の夜、彼は残業と偽って、ひとり暮らしの彼女の部屋に行った。彼女が「部屋に来て」とメッセージを送ってきたからだ。

「この関係の行く末とか、そんなことは何も話さなかった。ふたりとも情熱の発露だけを求めていたんだと思います。そして、そういう関係が続いていくんだと言葉にしなくてもわかりました」

 頻繁に会う必要はない。甘い言葉のやりとりもいらない。だけどふたりはいつでもつながっている。会わなくても相手の気持ちがわかる。そんな思いでいっぱいだった。それを一般的には「恋」といい、こういうケースでは「不倫」というのだが、悠樹さんは「とんでもなく高尚な関係」だと思っていた節がある。どんなに本人たちの意識が高くても、世間からみたら「ありふれた恋」なのだ。もちろん、それでいいのだけれど。

「アサカって誰?」

 泥沼にはならない自信があった。仕事は以前よりずっとうまくいっていたし、家庭も良好だった。週末には家族でよく出かけたし、週末の夕食は悠樹さんが腕によりをかけた。

「だけどそんなときふっと、麻香にも食べさせたいな、何をしているんだろうなと気持ちが動くんです。負い目というわけではないけど、僕に家族がいて彼女はひとり暮らしというのが引っかかった。もちろん、彼女はひとりが好きなタイプだと自分で言っていましたけど、どうしても気にはなっていましたね」

 昨年秋、彼は満41歳になった。男の大厄の年だ。誕生日の夜、寝室で妻が「アサカって誰?」といきなり問い詰めるような口調で言った。悠樹さんの脳内がコンピューターのように回った。

「アサカ? さあとごまかしたら『アサカが好きなんだって寝言言ってたわよ』って。なにそれと妻の顔を見たら、涙を流していた。『浮気してるんだよね』『どうして?』『私に不満があるなら言って』『どこの誰なの』と一気に詰められて、何も答えられなかった。わからないよ、アサカなんて知らないよと言ったら、ふざけるなと。彼女の住所を妻は知っていました。それ以上の言い訳はできなかった」

 さっきまで子どもたちと一緒に「パパ、おめでとう」とケーキを切ってくれた妻の顔が、今は般若のようにつり上がっていた。

妻が出て行き…麻香さんからまさかの“提案”

 彼はリビングのソファで眠った。朝起きると真未さんはいなかった。何がどうなっているのかわからず、彼はとりあえず子どもたちに朝食を食べさせ、学校へ送り出して会社へと急いだ。

「鬼のように真未に電話をかけたけど出ない。しかたがないので真未の実家にかけると、義母が出て『しばらくここにいるって聞かないのよ』って。何があったのとは言わなかったから、真未がどこまで話したのかはわからなかった。彼女が子どもを放置していられるとは思えなかったけど、ちょうどそのころ僕は仕事もものすごく忙しかったから、正直言って、どうしようとうろたえるしかなかった」

 たまたま昼休みに外へ出ると、麻香さんとばったり会った。家庭の話などめったにしなかったのに、つい彼女に愚痴めいたことを言ってしまった。すると彼女は意外なことを口にした。

「私が夕食、届けてあげようかって。あなたが朝、ご飯を炊いておけばいいじゃない。業者みたいなふりしておかずを家の前に置いておくわよって。何を言ってるんだと思ったけど、そのときは時間がなくて、じゃあと別れたんです」

その後も「配達」は続き…

 その日だけは残業を途中で切り上げ、家に電話をしてみると長男が「お弁当会社の人が、パパから注文を受けたと言って保冷箱に入ったお弁当を置いていったよ」と言う。食べていいかと聞かれたのでいいよと言った。焦って帰ってみると彼の分がテーブルの上にあった。

「あんな短時間でどうやって作ったのかわからないけど、変わった女性だなと改めて思いました。子どもたちがママはどうしたのと言うので、『ママはちょっと用事があって、おばあちゃんの家にいる。2、3日で帰ってくる』と言うしかなかった」

 翌日も、さらにその翌日も、玄関前の保冷箱にはおいしい弁当が入っていた。麻香さんの行動力と体力に驚くとともに、真未さんへの怒りのような感情がわき起こってきた。子どもたちも寂しがっているから早く帰ってきてほしい、オレが悪かったと義母に伝えた。それでも真未さんは連絡してこなかった。

 どうやら麻香さんは、早めにいったん家に戻ってお弁当を作り、悠樹さんの家の前に置いてから会社に戻って仕事をしていたようだ。彼女は何も言わなかったが、そうでもしなければ夕方、弁当を届けることは不可能だ。ということは、前日の夜に下ごしらえなどをするのだろう。麻香さんの体が心配だった。

5日目に起きていた修羅場

 5日目、遅めに帰宅すると妻がリビングにいた。子どもたちはと聞くと、もう寝たと。真未さんの母親もいた。

「これ見てと妻が手を差し出したんです。そこには髪の毛が何本もからみついていた。『あなたの彼女の髪よ』って。どうやら帰ってきた妻と、弁当を運んできた麻香が鉢合わせしたらしい。妻は彼女が業者ではなく、僕と関係のある女性だとすぐにわかったんでしょう。 彼女の髪をつかんで引っ張った。彼女は妻を突き飛ばすようにして逃げていったそうです。義母は『長い夫婦生活、そういうこともあるって真未には言ったんだけど、どうしても許せないって。でも離婚はしたくないというのよ。悠樹さん、どうする?』って。義母は僕を責めるような口調ではなかったけど、娘のことは心配していたでしょう。子どもたちの気持ちがね、とも言っていました。とにかくふたりで話し合って解決しますと頭を下げました。その日は義母に泊まってもらって」

 翌日は土曜日で、子どもたちは母親から離れようとしなかった。義母は「ごめんね、おばあちゃんが病気になっちゃったから、ママが看病してくれていたのよ」と言い聞かせていた。

「こうやって話すと、なんかとんでもないことしちゃったなと思うんですが、あのときはあまり実感がなかった。麻香にすまないことをしたと思って『解決に向かっている。お弁当、ありがとう。お礼は改めて』というメッセージだけ送っておきました。彼女がしてくれたこととはいえ、ものすごく大変なことを何日もさせてしまったわけですから」

妻をこんなふうにしてしまったのは僕

 彼女と別れればすむわけじゃないのよと真未さんは言った。じゃあ、どうすればいいと言うと「どうして開き直るの」と怒られる。謝っても謝っても、「謝ってすむなら警察はいらないわよね」と言われる。謝らなければ、悪いと思ってないでしょうと怒鳴られる。

 そんな日々が何日も続いた。麻香さんからは連絡はない。だが彼には、麻香さんとの縁が切れるとは思えなかった。

「今年の正月、妻に年も改まったし、もう一度チャンスをくれないかと懇願しました。私は一生、許さないし、なかったことにはしないと言われました。理屈で考えよう、きみは離婚する気はないと言った。僕も離婚はしたくない。だけどもし、きみが僕ともう2度と普通に会話もしたくないというなら、それはむしろ子どもたちにとって悪影響がある。だったら別居するほうがいいのではないかと言ったんです。すると妻は『私と別居して、あの女と一緒に住むんでしょ。それはダメ』と。妻をこんなふうにしてしまったのは僕なんですよね。あんな純粋な人だったのに。いや、純粋だからこそ許せないのかもしれないけど」

それでも関係は続く…

 とにかく妻とは「うまく」やっていければいいと悠樹さんは気持ちの方向を転換した。仲よくやらなくてもいい。妻は渋々ながら「日常生活は普通に送る」と約束した。

「2月くらいだったか、ものすごく寒い日の残業帰りに、行ってもいいかなと麻香にメッセージを送ったんです。いいよ、と彼女から返事が来た。彼女、なにごともなかったのように迎えてくれました。おいしいコーヒーを入れてくれた。料理、うまいねと言ったら、彼女もさすがにあの件に触れないといけないと思ったのか、『私が差し出がましいことをしたから……』って。いや、すべて僕が悪い。申し訳ないと言うしかなかった。だけど不思議なことに、僕らには“別れる”という選択肢がないんですよ。ふたりともそんなことは思っていない。そしてそれが当然だと思ってる。そういう意味で僕と麻香はおかしいのかもしれないけど」

 どうにも説明しづらいが、それが本心だと悠樹さんは言った。会う頻度が減るかもしれないが、決して別れないふたりなのだと。そこまで思える相手と巡り会った悠樹さんと麻香さんが「幸せ」かどうかはわからない。もしかしたら、世間から見た「幸せ」は、ふたりの中では価値が高くないのかもしれない。

 あとは家庭の問題だが、このところ少しずつ真未さんの表情が柔らかくなってきたような気がすると悠樹さんは言う。家では心安まる時間がないけど、それもこれも自分が蒔いた種ですからねと、彼は眉間にしわを寄せながらため息をついた。

 ***

 ほころびを抱えたまま、妻との家庭生活を続けている悠樹さん。だが、もし麻香さんとの関係がいまも途切れていないことを知ったら、“純粋な妻” 真未さんはどんな行動に出るだろうか――。【記事前編】では、真未さん、麻香さん2人とのなれそめを紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部